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『ワン・ナイト・アット・武道館』を上回るライブ・アルバム |
説明に入るまえに読んでくださる方に伝えたい。曲の感じや演奏の感じ等の説明を記載しているが、その部分に対してはあくまでも私個人が感じた事でり、聴く人によって個人差があるため、私の記載した曲の感じや演奏の感じ等の説明はあくまでも参考としてとらえてほしい。
スタジオ・アルバム『限りなき戦い』の発表過程ではマネージメントのせいでゴタゴタがあり、一旦完成した素晴らしい出来栄えのマスター・テープをアメリカ進出用のためにいじられてしまった。すなわち、あまりにも内容がハードすぎてアメリカでは受けないという理由からである。
ゲイリー・バーデンだけでは役不足のため、マネージメントの方でデレク・セント・ホルムズというヴォーカル兼ギタリストをMSGへ加入させた。そして、6人編成のMSGとなったため、一旦仕上がったマスター・テープに対してデレク・セント・ホルムズの演奏・ヴォーカルの追加を含むアメリカ向けのリ・レコーディング作業を行った。そのことにより、キーボードが目立ち、全体的にポップで丸みのあるサウンドと曲調となった。このためアメリカではかなり受けたそうだがメンバーは不満であり、特にマイケルは怒りがこみ上げたという。
上記のリ・レコーディングについて知らない方のために触れておこう。リ・レコーディングとは一旦仕上げたマスター・テープを手直しする作業である。一部の演奏を追加したり、メロディーを変えた演奏と差し替えたり、ミキシング自体を一部変更したりすることである。通常のレコーディング時にやる演奏の撮り直しとかオーバーダビングとかミキシング等とは意味が違う。すなわち、リ・レコーディングとは完成マスター・テープの元をいじらないで手直しする事なのである。
この6人編成のMSGが1983年10月に全英ツアーを行った。その中の1983年10月22日と23日に行ったロンドンのハマースミス・オデオン公演を収録したのが当ライブである『ロック・ウィル・ネバー・ダイ』である。マスター・テープを編集してLP1枚に9曲収録されて発売された。その後、CD化になって再発されたが内容や仕様に変化がなく、ただただ再発をこの先繰り返すばかりだった。変化があったとすれば、内容は同じでデジタル・リマスターの紙ジャケット仕様くらいだ。
演奏はかなりまとまっており、サウンドも重圧だ。メンバー全員のりにのっている感じであり、そのためなのか演奏する曲すべてがスタジオ・アルバムの感じよりカッコよく聴こえる。大幅なアレンジをしているわけではないのだが、メンバーの意気込みのために実に良く聴こえるのだ。曲によっては部分的にアレンジしているのもあるが、それがまた曲を素晴らしくしている。たとえば『ロック・ウイル・ネヴァー・ダイ』とか『メイク・ユー・マイン』なんかは実にスリリングな展開で鳥肌が立ちそうだ。もちろん他の曲もそうだ。観客の雰囲気もいい。マイケルのプレイも絶好調であり、バッキング時もソロ時も抜群である。アメリカ仕様のサウンドにした『限りなき戦い』のサウンドと違い、ここで聴くMSGはいつもの迫力あるMSGサウンドである。それも脂がのりまくり、パワー・アップしたMSGの演奏だ。 『ワン・ナイト・アット・武道館』と比較にならないほど見事なステージである。ただ、残念な事にゲイリー・バーデンの不調ヴォーカルが目立ってしまう。聴いた感じは声域がせまく、ハイ・トーンの声が出せなくてかすれたりブローしたりしている。このため、せっかくの良い演奏とサウンドがだいなしと言いたいところだが、理由があるため許す。他の方は許さないと思うが...。
ゲイリー・バーデンは非常にあがり症なのだ。だからレコーディング時はきれいに歌えるが、ライブでは観客の前にたつとあがってしまい、どうしようもなくなるというのだ。だけど、まぎらわせるために勢いにまかせて盛んに観客に向けて話している。歌っているときは我をわすれて歌うのだが、どうしてもあがり症がおそってくるらしい。それで、ステージのヴォーカルがまずくなるのである。別にゲイリーの肩を持つわけじゃないが事実なのだ。
話しを元に戻そう。当ライブは6人編成なのに5人編成のライブに聴こえる。すなわち、デレク・セント・ホルムズのギターの音が聴こえないのだ。ヘッドホンでボリュームをあげて聴くと微かに聴こえる。これはどうしたものか。リード・ヴォーカルをとるところははっきりと聴こえるのだが演奏がきこえない。いろいろ調べてみた結果、あることがわかった。全英ツアー終了後にデレク・セント・ホルムズはMSGを脱退していた。それからしばらくして次のスタジオ・アルバムの製作準備に入っているときに『ロック・ウィル・ネバー・ダイ』を発売した。今となっては存在しないメンバーだしマネージメントがむりやり加入させてきたという事からデレク・セント・ホルムズの演奏を下げたらしい。そしていつもの5人編成のMSGでいつもの演奏とサウンドをファンに聴かせたいという思考があったという。
収録曲のラスト『ドクター・ドクター』だが、なんとスコーピオンズのクラウス・マイネ(リード・ヴォーカル)とリドルフ・シェンカー(リード・ギターでありマイケルの兄)が飛び入り出演している。歌詞の1番をゲイリーが歌い、2番をクラウスが歌っている。実にクラウスの歌は上手い。曲の後半はどんどん盛り上がってゆき、ドラマティックにクライマックスを迎えてマイケルのギター・ソロで締めくくって曲が終わる。今までにないパターンというか聴いたことがない『ドクター・ドクター』の構成だ。非常に良い。
とにかく良いライブであり、完全収録版でないのが悔しいくらいだ。前回のライブ・アルバム『ワン・ナイト・アット・武道館』よりはるかに良い。たしかに『ワン・ナイト・アット・武道館』の内容は良いが、なんといっても各メンバーの演奏に対する音が各独立して聴こえ、また、各音源のバランスも悪くてバンドとしてのまとまりがないサウンドとなっている。まして全体の音が固い。原因はミキシングを担当したエンジニアのせいだろう。
そして、そう思い続けて何年経っただろうか。このライブが最新デジタル・リマスターによる新企画で発売されることになった。今まで9曲のみ収録されていなかったわけだが新たに6曲追加されて全15曲収録された仕様となった。
当コーナーで紹介しているCD『ロック・ウィル・ネヴァー・ダイ』は、上記で記載した15曲収録したもので2000年に再発された日本盤である。
以前ライブ・ビデオで『ライブ・アット・ハマースミス・オデオン』というものがあったらしい。今回の再発盤は『ライブ・アット・ハマースミス・オデオン』と同じ内容だという。収録曲から曲順やMCまでまったく同じらしい。では、今回の再発盤は先ほどの映像版マスター・テープからのものか、それとも本当マスター・テープを使用して『ライブ・アット・ハマースミス・オデオン』と同じようにしたものかはさだかではない。
追加になった6曲とは『クライ・フォー・ザ・ネーションズ』『ロック・ユー・トゥ・ザ・グラウンド』『飛翔コンチェルト』『レッド・スカイ』『ルッキング・フォー・ラヴ』『アーム・アンド・レディ』だ。どれもこれも涎が出てくる追加曲だ。このおかげで、当ライブはますます最高のライブ・アルバムとなった。しかし、気になったことがある。この6曲に関してはデレク・セント・ホルムズのギターの音がはっきりと聴こえるのだ。他の9曲は以前と変わらずデレク・セント・ホルムズのギターの音が小さいか聴こえない。不思議である。
だが、この追加された6曲の演奏や曲の感じも素晴らしい。それは当り前であって、当初収録された9曲と同じ日に収録されたハマースミス・オデオン公演のものだからだ。この素晴らしいステージを最初からアンコールまでどこもカットしないで収録した本物の完全盤が聴きたいものだ。
参考になったかどうか自信ありませんが、すごく長い説明を読んでいただき、誠にありがとうございます。
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