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共和制末期のローマの風俗・文化の的確な描写+優れた脚本・撮影+俳優達の熱演 |
塩野七生氏のローマ人の物語シリーズの第5巻「ユリウス・カエサル ルビコン以後」に相当する時代が背景の超大作。共和制末期の兵士・元老院階級や庶民の風俗・文化の再現に惜しみなくコストをかけている。まだ皇帝たちの建築ラッシュの前のローマの街の様子、特に庶民の生活が、住居、信仰、スラム街、ギャング同士の争い等、よく描かれている。上流階級の家の作り等は塩野氏の本でも紹介されていたが、それも含めて、犠牲の血をあびる壮絶な儀式、頼りとする奴隷との信頼関係、結婚、オクタヴィアヌスが後に綱紀粛正を徹底せざるを得なかった風紀の乱れ(その彼自身の嗜好もほめられたものではないが)等、何れも百聞は一見に如かずだ。
ローマ人の生活を忠実に再現しつつ、軍団出身の男性2人の熱い友情及び周囲の人々を巻き込む波乱万丈な物語と女たちの争い(特にオクタヴィアヌスの母アティア対ブルータスの母セルウィリア)とにスポットをあてるために、大きな逸脱はないが史実を脚色している。明らかに史実と違う点もある。しかしそんなこともあったのではないかと思わせる、歴史との接点をしっかり保った脚本が素晴らしい。塩野氏の本ではアティアは全く触れられていなかったが、本作では重要人物でその造形が面白い。あと、アントニウス、クレオパトラ、オクタヴィアヌスと彼を支えるアグリッパ等若きローマの指導者は私が持っていたイメージ通りでしたね。オクタヴィアは貞淑な人と思っていたので、本作では意外に思う場面もある。俳優達はチネチッタ・スタジオを中心にした撮影のため2年間イタリアに滞在したという。エキストラもイタリア人。イタリア人スタッフのプロの仕事とイタリアでの撮影が映像に歴史の奥深さを与えている。
大規模な戦闘シーンがもっとあればとも思うが、今後古代ローマの映像作品の規範となる秀作であることは間違いない。 |
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