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ストーリー・テリングの才能も感じさせるフィンチャーの演出に、「セブン」の呪縛から解き放たれた今後の傑作の出現を期待させる |
デビッド・フィンチャー自身も我々観客もそろそろ「セブン」の呪縛から開放されてもいいかなと、思わせるほど良い出来だった。
実際の未解決連続殺人事件を題材にしているが、原作者のグレイスミスが発言している通り「大統領の陰謀」のように事件を追いかける側の描写に力が注がれており、ロバート・ダウニーJr演じるベテラン記者のエイブリルはダスティン・ホフマンが演じたカール・バーンスタインを、ジェイク・ギレンホール演じる入社したばかりの漫画家グレイスミスはロバート・レッドフォード演じるボブ・ウッドワードのキャラクターを連想させる。
60年代後半から90年代までの徹底した時代考証は衣装や小道具を含め完璧で、「ダーティ・ハリー」が製作に入っていた頃がこの事件の真っ最中であったであろうことも興味深かった。フィンチャー監督のいつもの刺激的な演出は影を潜めているが、金門橋の俯瞰ショットやカップルが襲撃される真昼の湖畔の場面の乾いた描写などに才気を見せている。
主役のジェイク・ギレンホールとマーク・ラファロはもちろんのこと、途中退場が残念なほどの名演のロバート・ダウニーJr、「ER」とは別人のような格好よさのアンソニー・エドワーズ、「ボーン・アイデンティティ」のブライアン・コックス、「シン・レッド・ライン」以後渋い脇として活躍するイライアス・コーティーズ、「アメリカン・グラフィティ」が懐かしいキャンディ・クラークまで俳優陣の熱演も作品のボルテージを高めている。
ただしグレイスミスが原作者のためか、エイブリルが、ゾディアックの標的になって以降はアルコールと薬におぼれ途中退場してしまうと、映画の後半はグレイスミス一人が強靭な(あるいはマニアックな)意志で事件を追いかける姿を好意的に描き過ぎていて、さらに彼の家庭の描写などが入るのが蛇足に感じた(特にデートの場面)。それが映画を長く感じさせてしまう要因になっているのが欠点ではあり、もう少しタイトな構成にすれば完成度が上がったとは思うが、フィンチャー監督がストーリー・テリングの才能も持ち合わせているであろうことがまずは判り今後の作品が楽しみだ。もう「セブン」の再現を望む必要はないのでないか。
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