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しとやかな獣 [DVD]

しとやかな獣 [DVD]

とても良い / 口コミ件数 : 11


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1.  とても良い kyotopopさん 書き込み日: 2005年12月15日

天才・川島雄三の最高傑作

 川島雄三監督。昭和37年の作品。若尾文子主演。

 団地の一室を写した画面とはおよそ似つかわしくない出囃子で幕を開ける。のっけから期待大。

女衒まがいの元海軍中佐の父親、面従腹背従順な妻、詐欺師の息子と作家の愛人の娘。この煮ても焼いても食えない家族のもとで起こる騒動を、彼らの住む団地のみを舞台に描く。

 狭っくるしい団地を、ベランダの格子から、茶箪笥の上から、覗き窓から、ひしめきを縫うようにカメラが入り込んでいく。その「のぞき」の視点が面白い。撮影した宗川信夫を川島が絶賛したというのもうなづける凝りに凝った、ヒッチ的な唐突さと周到さを持ったカメラワーク。 この舞台劇に適した脚本を、映画にしかできない手法で見せている。

 狭い団地では、隠し事もできない。例えば、息子とその不倫相手の三谷(若尾文子)とのいざこざを撮るときも、画面に隠れる姉や母が入り込んでくる。姉の不倫相手の作家が家にやってくるときも、画面には隠れる姉の姿が映し出される。

 そして、団地の一室がまるでひとつのアジールと化したかのように、若尾を中心にして、彼女を慕う男達が恥も外聞もなく醜態を繰り広げる。剥き出しの欲望がぶつかりあう。そのなかで、あくまで冷静に状況を分析し、主導権を渡さず、論破していく。近づく男を実は利用していて、自分は決して罪を被らないで財を成した若尾文子のピカレスクぶり、かっこよすぎです。

 徹頭徹尾、金をめぐる人間のグロテスクな争いを描いているのに、笑いを忘れない川島雄三のセンスはすごい。そして、新藤兼人が創造した登場人物達の節回しに聞き惚れる。セックスを連呼する息子に、「ものごとをむきだしにしてはいけません」と諭す母親の粋(実はこの人物が一番イッちゃってると思う)。言葉の隅々にまで気が配られている。

 ブラックユーモアの大傑作である。



2.  とても良い hide-bonさん 書き込み日: 2005年09月28日

その縦横無尽なカメラ・アングルを駆使しての、悪党どもの絡み合いを堪能しよう。

 巧い!上手過ぎる!!と、思わず感嘆してしまう、早逝で伝説の映画作家川島雄三の、とびきり奇妙で、ブラックな味わいの大傑作。団地の一世帯の限られた空間の中、縦横無尽なカメラ・アングルを駆使して、悪党どもの、人間臭く、濃厚なドラマが、スリリングに展開する。とにかく、たかだか3DKとおぼしきスペースでの、伊藤雄之助やら、若尾文子やら、高松英郎やら、山岡久乃やら、小沢昭一やら、ミヤコ蝶々やら、船越英二やらの右往左往、虚虚実実の絡み合いは、圧巻の一言だ。男たちを翻弄し、したたかに悪事を重ねる若尾文子もコワイが、貞淑そうに見える山岡久乃が、瞬時に見せる表情こそ、この映画のタイトル通り“しとやかな”獣振りを窺わせる。それにしても、川島雄三のリスペクトとして、「幕末太陽伝」や「雁の寺」のみならず、「洲崎パラダイス・赤信号」や「愛のお荷物」までもDVD化とは、角川エンタテイメントもやるじゃない!!



3.  とても良い 黒沢青矢さん 書き込み日: 2005年12月03日

川島雄三からの挑戦かも

観ている間にこんなにも興奮させる映画はそうそうない。役者、カメラ、脚本が一流であることはもちろんだが、なにより川島雄三の探究心が素晴らしい。今の日本から、こんな作品が生まれるとはちょっと思えない。映画人口がどんどん減っていた時代だ。戦後の復興と、映画界の危機と、新技術に対する情熱などが渦巻いた結果生まれた傑作なのだろう。駄作も大量にあった中で、何らかの点で優れた作品だけを何十年先にもこうして観られるわけだが、この映画が生まれた時代に立ち会いたかったとすら思う。
スコープ・サイズでのチマチマとした密室劇…凄い毒である。スクリーンという枠の中にさらに障子やら壁やらドアやらで枠を作って枠だらけにして、上から下から思いも掛けないアングルで覗き込み、人物を追う。特に玄関のドアののぞき窓を使った演出は素晴らしかった。
悪党しか出てこないというストーリーは観客を選ぶだろうが、一度はこんな嫌な思いをしても良いかも知れない。
神谷役の船越英二が出色の出来。最後、悪党達はひとりの善人(凡人)の死によってどうなるのだろうか。



4.  とても良い F.GREENさん 書き込み日: 2006年04月23日

金欲に潜む光と影。

物語は、ほぼ公団住宅の一室に限られ、煮ても焼いても食えない、曲者揃いの会話劇が繰り広げられる。伊藤雄之助、山岡久乃、小沢昭一、若尾文子などの怪演振りは見事で、可笑しくて、笑いが止らない。会話の命題は、兎に角、金、金、金である。金欲裏に常に貧乏への恐怖がある。ラストで山岡久乃の氷のような視線が我々の心を射抜く。



5.  とても良い r_kingさん 書き込み日: 2007年01月02日

本当の映画が好きな人に

執拗なリアリティやラストシーンに説明的で判りやすいものを望むタイプではないなら
この映画は見る価値にあふれている
川島雄三という監督の映像の結集とも云えるかもしれない

まず全体にドライでクールなブラックユーモアに満ちて居ることは
最初の数分で理解できる
団地の一室という限られた空間で
真っ当に働くことをしないで生活をし続けようとする家族を中心に
騙す者、騙される者が交錯し、シュールで洗練された映像が
見るほどに愛着の湧く怪優たちの快演技に運ばれて
まったく見るものを飽きさせない

昨今の海外の映画の手法を後追いする邦画に対して不満な若い世代や
映画好きではあるものの、この映画を見落としていた大人の方には
是非一度見ることをお勧めしたい

個人的には大映三部作のうちでは一番のお気に入りである



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