とても良い / 口コミ件数 : 12件
価格 : 3,591 円
わずか35年前の日本の風景。大阪万博が開かれた1970年、世の中は繁栄に向けた浮かれたムードが広がる陰で、なお生きることに必死な人々もいた。繁栄のピークから衰退へ向かいつつある愛知万博開催の今年、ドキュメンタリータッチのこのドラマを改めて見直す意味は大きいはずだ。35年の間に、この国で何が変わり、何が変わらなかったのか、映画は的確にそれを映し出す。
山田洋次監督のこの「家族」は監督38歳の作。1970年、万博の年に制作された名作。地味だが、もっとも好きな作品のひとつで、切なく悲しい映画でもある。70年というと、日本が高度経済成長まっしぐらのころで、万博はその象徴だった。大半の人が輝かしい未来を信じていた。しかし、時代に取り残され、社会構造、産業構造の変化で、苦渋をなめた人たちも少なくなかった。炭坑閉鎖はそのひとつ。この映画は炭坑が閉鎖して、長崎の小さな島から酪農を夢見て北海道に向かう一家のロードムービーだ。乳飲み子を含めて子供3人、夫婦、そして、おじいちゃんの6人。北海道まで一週間近くかかる。長男(井川比呂志)は途中、福山市の製鉄所で働く次男(前田吟)のところに置いていこうとするが、ていよく断られる。しかし、弟は駅に見送った後、自分を責め、涙を拭う。その後ろ姿を捉えたシーンは忘れられない。次男の気持ちを思うと泣けた。大阪で新幹線に乗り換えするまでの間、万博会場まで行く。それも入り口まで。入り口からの見学。切ないシーンだ。東京に着く。旅の疲れか赤ちゃんが病気、それもかなり厳しい様子。病院に着いたときは手遅れ。金のことが気になり苛立つ夫、子供の死に打ちひしがれる妻、じっと耐える祖父。過酷な旅を終え、やっとの思いでようやく寒い北海道に着く。着いた途端、疲れからか祖父が眠るように死んでしまう。笠知衆演じる祖父はその時65歳。これは35年前の話だが、その後、バブル崩壊をへて今日にいたるが、日本は様変わり。「安全と水」はただといわれた国は大きく変わり、だれもが未来に大きな不安を抱きながらも口にしない国になってしまった。この国にまた希望が持てる日はくるのだろうか。そんな複雑な気持ちで久しぶりにDVDでこの映画を見たが、まぎれもなく、日本映画の傑作と思う。こんな時代だからこそ、より価値にある映画ではなかろうか。
15年以上前からもう一度観たいと思っていた山田映画。廉価なDVD化はとても嬉しい。過酷な旅の途中、大阪万博会場に立ち寄る「家族」。その後に待ち受ける試練−。映画で描かれるわずか35年前の日本の風景。繁栄に向かって浮かれるムードの陰で、なお生きることに必死だった人々の姿を、愛知万博が開かれている今年、改めて見つめる意味は大きい。ドキュメンタリー・タッチのこのドラマは、この国で何が変わり、何が変わらなかったのかを的確に映し出してくれるはずだ。
北海道に辿り着いた後、男泣きの夫(井川比佐志)に妻(倍賞千恵子)が声をかけるシーンには、涙がとまりませんでした。亭主関白に見えて実は気弱な夫、そんな夫を支えるしっかりものの妻、穏やかな、でも時に息子を叱咤する祖父(笠置衆さんが素晴らしいです)、幼い男の子とその妹(赤ちゃん)の家族が長崎の小島から北海道の開拓村まで日本縦断の旅をする。今風にいえば全編旅のロードムービーです。ドキュメンタリータッチで高度成長期1970年の変わり行く日本の風景、その時代の人々を描いた傑作です。現地の人々(素人)を多数出演させた山田監督の意図が見事に効果を上げています。悲惨な物語でもあるのですが、登場人物それぞれの気持ちが痛いほど伝わってきて、いつの間にか映画の中の人々と同じ気持ちになっている。旅の途中で出番は少ないながら出てくる前田吟扮する次男坊の気持ちなどなど抑制されてはいるが、でも丁寧に描かれているからでしょう。倍賞千恵子さん、この時代の日本女性をリアルに演じていて素晴らしいです。そして美しいです。この映画に描かれた日本が、現在の日本につながっているわけですが、この日本列島改造の時代に何か多くのものが失われた、そんな風にも思いました。でも前向きに希望を抱かせるラストの倍賞さんの笑顔が象徴するものは、いつまでも失ってはいけない普遍的なものに感じました。山田洋次監督が自作を語る20分程度の特典映像と予告篇が付いています。デジタルリマスター版です。
〜山田洋次監督の「家族」は監督のマスターピースの一つと考えています。それは最近の作品とは一味違った、力強さ、テーマ性をストレートに感じるからです。万博や東京の人出、高度成長期の日本の活気、その影つぶれていく時代遅れの産業、現代に通じるものがあり、あらためて新鮮に感じます。一番好きなシーンは弟のいる福山から離れるときです。涙なくしては〜〜見られません。自分の生きてきた時代なので、細かい事情やこころの裏まで読み取れ、山田監督の「心の叫び」が痛いくらいに響いてきました。〜