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粒子の粗い光が眩い、各国の町並みが美しい、なぜか忘れられない小品 |
吉田喜重監督といえば松竹ヌーベルバーグ。
個人的には、吉田喜重監督が一番好きで、作品の出来不出来の波が少ないように思います。よい意味で、どれを見ても一見して吉田印の緊張感は維持されています。
この作品は、BOXでは「性と政治の季節」と名づけられ、一連の名作群「エロス+虐殺」「煉獄エロイカ」「告白的女優論」に発展していく直前の時期のもの。
他が余りに傑作の名をほしいままにしている一方、この作品だけはスルーされている感じです。
製作される経緯は、某有名航空会社が旅行のアピールを目的に、世界各国を移動して回ることを条件に、吉田監督に依頼したのだそうです。
クルーも数名、俳優は2名という、極めて小編成で作られています。
脚本も、行った先々で吉田監督が即興で考えていたようです。
見てみると、作りこまれた完成度の高さは感じません。
ですが、いい意味で吉田監督の他の作品にはないリアルさというか、勢いみたいなものが感じられて気に入っています。
吉田監督といえば、グルグル回るカメラ、無機質な映像、熟語重視の台詞、美しい逆光が印象的です。
ですが、あのモノクロ映画で極められた映像的な特質を、カラーで再現できている作品があるかといえばちょっと思い出せません。
個人的には、この映画の光の粒子の粗さや、世界各国の町並みのとらえ方が唯一うまくいっているものではないかと感じています。
全然見当違いかもしれませんが、吉田監督の醒めた映像を見るたびに、コルビュジエの白の時代とアントニオーニ監督の愛の不毛の時期を思い出します。
この映画もアントニオーニ監督の映画のように男女が彷徨うんですが。
この作品、有名作品ではありませんが、なんとなく忘れられない小品です。
肩肘を張って「煉獄エロイカ」あたりを見た後に、少々肩の力を抜いて味わうといいかもしれません。
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