良い / 口コミ件数 : 3件
価格 : 3,564 円
原作は石野径一郎の作品(講談社文庫)。知名度は高く、沖縄戦の惨状を訴えた点では評価に値する。ただし、当時まだことの詳細を知る術が少なく、原作・映画ともフィクションに振りすぎた傾向がないとは言い切れない。むろん今井監督が悪いのでなく、当時日本が置かれていた状況が問題だったと思う。映像的には白黒の味わい深い感じが何ともいえない。個人的には、1982年に今井監督が同じ脚本でリメイクした同名映画より、こちらの作品の方が引き込まれたような感じだ。
この映画は千葉県のロケで作られたという。なかなか気に入らなくて東映は気を揉んだそうだ。山本薩夫監督や関川秀雄監督の応援も断わり、封切り寸前まで編集していたと言われている。 次第に沖縄戦の実相が明らかになるのにつれて、こんなものではなかったであろうが、この映画だけでも十分悲惨さは伝わる。やさしい軍医がいざとなると軍律を民間に強いるシーンもある。 女学生役や兵士役は新劇の当時の若手がたくさん起用されている。渡辺美佐子や小田切みきなどはまだわかる方だが、クレジットでこんな人も出ていたのかという驚きもある。兵士役で四方正夫の名前があるが、後の安井昌二である。小田切と結婚したのは周知のこと。「安井昌二」はこの映画の2年後の田中絹代監督の「月は上りぬ」の役名を芸名にしたようである。
沖縄戦は本土防衛のための捨て石だった。日本兵は住民を守るのではなく、最後は自国民にも銃口を向けた。その部分はこの映画でも終盤に描かれるが、それでも真実からはほど遠いほど描写は甘い。甘すぎる。先日、NHKで放映された「沖縄戦60年後の真実」を描いたドキュメンタリーでは、米軍から食料をもらったというだけで、米軍のスパイ呼ばわりをされ、ほとんどの村民が山地に敗走していた日本兵に虐殺されたある村落のことが取り上げられていた。その日本兵たちに父親を目の前ではり付けにされ銃剣で抉られて殺された当時少年だった長男とその母親は、その後何十年も経って精神を病み、その長男の妹は放り投げられた手榴弾の炸裂した破片を浴びて全身傷だらけで生き残ったものの、学校時代その傷のためにずっとイジメを受けた。戦後、すぐには明らかにされない真実が、逆に何十年も経って明らかにされることはたくさんある。今、この話を描くのだったら、こんなきれい事では済まされない。