普通 / 口コミ件数 : 1件
価格 : 4,935 円
このドキュメンタリーはフランスで制作されたもののようですが、原語音声+日本語字幕の設定は無く、クレー自身の言葉を表現する男声とナレーションを担当する女声による日本語吹替モードしかありません。 つまり、商業的あるいは芸術的な映像作品を意図したものではなく、クレーの人生と作品を一時間に要約した純粋な教養プログラムといえるでしょう。ドラマチックな展開や派手な演出効果など一切無く、時系列に沿って淡々と出来事や代表作、そのときのクレーの哲学が紹介されていきます。 その代わり、静かなピアノと効果音のみの音声無モードが選択でき、BGVとして映像とサウンドトラックのみを楽しむことが出来るようになっています。 また、ギャラリー(静止画)としてクレーの絵画150点がやはり時系列に収録されていますが、まるで実際の美術館に入って展示室を一望した後、一点一点を眺めていくように階層が構成されています。 ストイックな好感の持てる配慮ですが、欲を言えば、生まれ故郷であるスイスの首都ベルン郊外に2005年6月に建設されたパウル・クレー・センター(建築は巨匠レンゾ・ピアノ)を紹介するものであれば良かったと思います。 クレーは1879年に生まれ、早くから絵画のみならず音楽や文学にも才を示したようですが、若き日に画家の道を歩むことを決心しました。そうした背景があったからこそ、同一人物の作品とは思えないほどの作風の違いを後々展開することになったのだと理解できます。 若き日の食扶ちのためのデッサン、モノクロの濃淡だけの表現、チュニジア旅行で開花した水彩による色彩。カンディンスキーの影響から抽象に転じて、バウハウスでの教員生活を通じて追求された絵画理論の実践。 晩年はナチによって退廃芸術と見なされ不遇を囲いますが、このことが有名な天使のシリーズを生むきっかけになったようです。本作には「天使の沈黙」という副題が付いています。