良い / 口コミ件数 : 82件
価格 : 3,237 円
人間の心理の複雑さを巧みに、そして、スリリングに描いていています。 本作で描きたかったのは、兄弟でも特に弟の心理。自分のことしか考えない男だから、他人との記憶が曖昧で、結果、他人もしくは自分を欺いてきた。そんな弟が、やっと素直に自分のことを振り返れるようになるまでの話なんだろうと思います。 それを描くため、ひとつの出来事の解釈が二転三転するトリッキーなサスペンスドラマ様式をとったのでしょう。これが、黒澤明監督の「羅生門」を思い起こさせ、裁判シーンの出来のよさもあって、見ごたえ十分です。 はたして実際は何が起こっていたのか? 曖昧な記憶が感情を揺さぶり、その感情が引き金となった出来事でまた揺さぶられる。観客はそんな彼らの心情を読み取るうちに、自然と揺さぶられていくという構図ですね。 オダギリ・ジョーのある種ナルシスティックな演技も自然にドラマに溶け込んでいる。終盤、兄弟二人が向き合う面会室のシーンは本当に凄いです。 それにも増して凄いのは香川照之。いい人を演じ続けてこなければいけなかった長男の苦悩、その仮面の下で抑圧されていた嫉妬、劣等感といったドロドロとした感情をさらけ出す生々しさ。 それにしても、「蛇イチゴ」もそうだったけど、本作もラストシーンまでの、すべてのシークエンスが長いプロローグのようでした。
寂れた地方の山村の、これまた寂れたガソスタの店長をしている兄と、都会に出て成功したカメラマンの弟。 ほとんどすべての重荷を背負い込まされてもなお、弟の成功を手放しで喜んでくれる人のいい兄と、その人のよさに心を痛める弟。 気まずいながらもそれまでは安定していた兄弟の関係が、一人の女の死をきっかけにゆれはじめて・・・。 取り残された地方と都会という対比もさることながら、家を守っていくことに人生を犠牲にした兄を演じる香川照之がすばらしい。 「人はいいんだけど何から何までうまくいかなかった人」を演じさせたら、彼の右に出るものはいないのではないだろうか。 男兄弟の家庭で育った者ならおそらく誰もが、身に詰まる思いをする作品。 不思議なのは、これほどまでに繊細な兄弟愛をなぜ女の監督が描ききることができたのかということ。
この映画を観ていて、いったい何度鳥肌が立っことか。すごすぎる。 主演のオダギリ・ジョーも、香川さんも真木さんも。そして、脇を 固める全ての俳優さんたち、みんながすごかった。検察官役のキム 兄の演技も素晴らしかった。 そして、西川美和監督による脚本の上手さ。前作の『蛇イチゴ』を 凌駕するミステリアスでサスペンスフルな空気感。そして、随所に 散りばめられた滑稽とも言える笑い、メタファーの数々が作品全体 をとてつもないほど奥行きのある世界へと仕上げています。 そして、観た人それぞれの解釈が求められる衝撃のラスト。 こんなにも鳥肌を誘発され、涙を流した映画は久しぶりでした。 西川美和監督、次回作を心から待っています。
ゆれながら展開する心理描写が実にスリリングでした。田舎町の旧家でしょうか。二人兄弟の運命は決まっています。兄は跡を継ぎ、弟は都会に出る。兄は旧家のしきたりに生き、弟は奔放に育つ。家を出て都会暮らしに慣れた弟は、因習に縛られた生活を見下ろし、家に残ったものたちはその視線に気づきながらも今を生きています。そこに事件が起こります。兄弟と弟と理由ありで兄と一緒に働く女性がハイキングに行き女性が死亡します。兄が自分が殺したと証言したことで状況が一変。事件は裁判に持ち込まれます。兄は積年の鬱憤を晴らすかのように変わってゆく。一つの事件を巡って兄と弟、二人を取り囲む人達のこころがゆれます。このゆれる心理こそがこの作品の主題なのでしょう。見応えのある映画でした。兄弟役のオダギリ・ジョーさん、香川照之さんは表情の動き、目の動きで微妙な感情を演じています。素晴らしい作品です。
西川監督の繊細な感性と妥協を許さない演出が、オダギリジョーや香川照之の真に迫った演技を引き出したまぎれもない傑作。 兄と弟、故郷と都会、欲望と嫉妬、嘘と真実、愛と憎しみ…。さまざまな葛藤が見る者を引き付けて離さない。その感覚は見終わっても続く。この兄弟に救いの日はやってくるのか。これからどうなっていくのか…。 密度の濃い作品なので、言葉や表情だけでなく全てのものに意味があるように感じられる。 印象的だったのは、オダギリや香川を背中から撮影したシーン。その背中から伝わる彼らの思い。哀愁。彼らの人生。男は人の背中など見ない。女性監督ならではの視点だと思った。俺は一体どんな背中をしているのだろう。 見終わってから20時間たったけれど、まだ吊り橋の上にいるようだ。まだラストシーンが頭から離れない。まだゆれている。