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鏡【デジタル完全復元版】 [DVD]

鏡【デジタル完全復元版】 [DVD]

とても良い / 口コミ件数 : 11


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1.  とても良い amaterasuloverさん 書き込み日: 2008年04月01日

言葉で縛られた魂の解放。

よく論評として言われているように、タルコフスキーの自伝なので彼にしか分からないのかもしれませんし、分からないので映像的な美しさを伝えるしかないのかもしえません。母や父に対する思いや自分の子供に対する思いは本人にしかわからないと思いますが、、、僕は「言葉で縛られた魂の解放」をテーマにしているような気がします。冒頭の吃りの子供が催眠術で治り、「何でも喋れるようになる。」こと、それに続く「植物も感じたり記憶したり理解したりできるが、人はくだらないことを喋る。言葉なんかでは気持ちが表現できない。」その後の母の記憶の中での「活字の間違い。」を気にして印刷所に駆け込むシーン。たぶんこのようなシーンが意味することは、言葉からの魂の解放だと感じます。感じることが大切であると、、、。だから、彼は映像詩で表現しているのだろうと思います。この映画の核は、決して単なる彼の自伝や幼い頃の記憶を見せて、彼の自伝記憶を伝えたいのではないのだと思います。言いたいのは、「言葉」だけでは意味をなさず、情報量の多い「映像」でこそ、感じるものを創れるという彼のマニフェスト(宣言)なのではないでしょうか。簡単に言うと「キレイな夕焼け」と言葉で表現するのは全く意味をなさず、その夕焼けを見せて、色や風や温度やすべてを見る側に委ねるというようなことでしょうか。映画には、いろいろな評論で言われているように、無論、自伝的な隠喩も隠されており、キリスト教と共産主義そしてブルジョアとの狭間、中国の革命やヒットラーの死体や原爆を見せることで、生きるということが家族や人間関係だけではなく社会的な影響を多大に受けるということ、彼の共産主義からの亡命を仄めかすところや、自分は頑固だったことなど個人的性格を表現しているところもあります。しかし、僕はやはりなんといっても、「言葉」という皮肉にも人にしか備わっていない高度なコミニュケーション方法から、「伝えたいこと」=「その映画のコアアイデア」=「魂」を解放する、彼の宣言映画に見えてなりません。そのアイコンとして十字架というビジュアルも存在するのだと思います。十字架の意味することは、たぶん、「言葉にされた教義」ではなく、絶対的な神の存在を感じることや、祈ることを視覚化したのだと思います。
意味論はこれぐらいにして、、映像はとにかく美しい詩でした。学生の頃は眠くなりましたが、、現在は僕にとって、非常に目が冴えわたる映画です。たぶん映画館が暗かったから?(笑)



2.  とても良い カッタルコフスキーさん 書き込み日: 2005年05月24日

どうにかなるさと言いながら故郷に帰っていく想い

岩波ホールで上映されたのは70年代末だったと思いますが、それ以来ぴあで上映が告げられると必ず見に行っていた映画。たぶん映画館で10回以上見たでしょう。映像詩という言い方をされますが、現在の「私」を取り巻く現実が、夢や記憶や想像に影響を与えながら展開していくので、それを解きほぐしながら見ることができる映画だと思います。あまり「謎解き」のように見られることはタルコフスキーの本位ではないかもしれませんが。特にラスト、ベッドにふせっている「私」が、「どうにかなるさ」と言いながら死んだ雀を上に放り投げると、雀(想い)は故郷に帰っていき、同時にバッハのヨハネ受難曲が響いてくるシーン。今思い出しながらも目頭が熱くなります。「私」は、母や妻、子どもをめぐる人生の煩わしさや自分の病気に心身共にボロボロな状態なのでしょう。実際の人生では「どうにかなるさ」なんて、どうにもなりゃしないものです。でも、映画のなかでならそれが可能なのですね。そういう意味で、タルコフスキーってなんと幸せな人だったんだろうと思います。実は このDVDはまだ持っていませんが、今から注文します。星はDVDの評価ではなく、この映画に対する私の思いから星5つにしました。



3.  とても良い imagin_sayaさん 書き込み日: 2004年12月29日

 アンドレイ・タルコフスキー監督の自伝的映像詩である。映画は、作者である「私」による一人称形式で進行し「私」が胸に秘めている母への思いや、別れた妻や息子との間に織りなされる感情を意織下の過去と現実を交錯させながら浮かびあがらせていく……。
 このモノローグは、誰なのか初めて観たときにはわからなかったが、二度観たとき「私」であることがわかり、これで難解と言われる作品にかろうじてついていくことができた。タルコフスキー独特の巧みな演出は、木立を抜ける風のそよぎにも人間の心象を映し出して見せると言われてきた。この作品でも、「水」や「火」といった自然現象がこの監督独自の映像となって、美しい幻想的なイメージのなかに繊細かつ鮮明に語りあげている。意識下の過去と現実を巧みに交錯させて作者の深層心理を浮き彫りにしてゆく。
 私の夢に現われる母。それは、40数年前に私が生まれた祖父の家。うっそうと茂る立木に囲まれた家の中で、母はたらいに水を入れ髪を洗っている。鏡に映った、水にしたたる母の長い髪が揺れている。あれは1935年田舎の干し草置場で火事があった日のこと。その年から父は家からいなくなった。
 私は突然の母からの電話で夢から覚め、エリザヴェータが死んだことを知らされた。彼女は、母がセルポフカ印刷所で働いていた頃の同僚だった。
 両親と同様、私も妻ナタリアと別れた。妻は、私が自信過剰で人と折り合いが悪いと非難し、息子イグナートも渡さないと頑張っている。妻のもとにいるイグナートのことは、同じような境遇にあった自らの幼い日を思い出させる。赤毛の、唇がいつも乾いて荒れていた初恋の女の子のこと。同級生達と受けた軍事教練のこと。それは戦争と、そして戦後の苦難の時代でもあった。
 そして、哀れだった母のこと。大戦中、疎開先のユリヴェツにいた時、母に連れられて遠方の祖父の知人を訪ねて、宝石を売りに行ったのだ。
 母の負担になったかもしれない自分の少年の日々のことを思うと、私の胸は疾く。イグナートが同じ境遇をたどっているのかも知れないと思うと、さらに私を苦しめる……。
 私の母と別れたナタリアの顔が酷似しているとナタリアに言い続ける。そこで「鏡」が登場してくる。そこに映し出された顔をナタリアは見るシーン。(これは一人二役である)「鏡」は現実(当時)から過去へと行きつ戻りつつする橋渡しのように思える。
 また、知人を尋ねて宝石を売りに行ったとき、気をきかせて、婦人はニワトリを1羽つぶし持って行かせようとする。身重の婦人は母につぶすように命じるシーン。羽が舞い上がり、宙に浮いた母の姿。
 難解と言われる作品だが、次々に押し寄せてくるぞっとするほど美しい映像の数々に身を委ねながら、タルコフスキーの「映像の詩学」の深みに降りていくのは快楽だ。



4.  とても良い ayaxokamotoさん 書き込み日: 2008年04月11日

タルコフスキーの到達点

 この作品は、アンドレイ・タルコフスキーのもっとも自伝的かつ個人的な作品であると同時に、世界平和をも志向したダイナミックな視点をもっているところが魅力。一見、他人からすれば無秩序に並べられている主人公の過去、現在、未来そして夢の映像も主人公の心の中では脈々とつながって生起したイメージであろう。
 見終わってから、タルコフスキーは本気で世界中の人が平和や幸せになることを祈れば、それが訪れると信じていたのではないかと思った。タルコフスキーはしばしばお手軽に映像詩人と称されるけれど、本当は映像を使って世界で始めて祈祷をした人と位置づけるほうがふさわしいのではないかと思った。
 作品の根源にある感情は、絶望であると思う。ただ、この作品は絶望的な状況にありながら希望が訪れることを切望している、その望むという行為の力強さに感動させられる。
 最後に、私が感じたタルコフスキーの作家としての限界。タルコフスキーは物事を突き放して捉えることがあまり得意ではない。自分の内側にある感情を、自分のこととして表現することに長けていたと思う。それがゆえに、彼はコメディーが撮れなかった。決して、作品を貶める意図を持って、この段落を書いているわけではないけれど、映画という大きな世界の中でタルコフスキーがどこに住んでいるのか、漠然なりとも位置づける試みが必要だと思ったから。
 とても漠然として、あいまいなレビューになってしまったけれど、こればかりは見るしかない。



5.  とても良い fwiw6180さん 書き込み日: 2004年08月22日

心地よい映像美!!

自分が子供の頃のまだ母親が若かったときの記憶。この映画に何かすごく郷愁を憶えるのは、その記憶に共鳴するものがあるからなのだと思う。草原を吹く風や燃える小屋、いろいろと理屈をつけることもできるだろうが、理屈ぬきで映像に共感することがこの映画を楽しむにはいい。唯、映像をそのまま受け入れることが心地よい映画です。

このDVD、デジタルニューマスターということで綺麗です。(映画館で観たときには、もっと草原や林の緑とモノクロが鮮やかだった印象があるのですが、自分に中で多分に美化されていたようです)特典映像はタルコフスキーという観点のものはありません。映画に関係した人の映像を集めたといった感じです。今回、DVDで見直して特に印象に残ったのが母親・妻の2役?を演じた女優さんのなんとも言えない表情に強く惹かれたことです。タルコフスキーの心情を見事に表現しているのではないかと思いました。



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