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美しい夏 キリシマ [DVD]

美しい夏 キリシマ [DVD]

良い / 口コミ件数 : 12


価格 : 3,380 円





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1.  とても良い かなり悪いオヤジさん 書き込み日: 2007年05月15日

キリシマが隠した戦争のトラウマ

本作品は、故・黒木和雄監督青年期の実体験が元になって作られている。(DVDには黒木監督と本作品をテーマにしたドキュメンタリー番組が収録されている)

この映画の登場人物たちはみな戦争のトラウマに悩まされている。空爆の直撃を受けた友人を見捨てたことに悩み続ける主人公日高康夫、康夫の祖父・重徳(原田芳雄)もまたロシア革命の白軍を見捨てて帰還した過去を持っている。戦死した夫の仏前で、米軍本土侵攻を食い止めるべく派遣された兵卒の一人(香川照之)と情事を繰り返すイネ(石田えり)や、自分を幽霊と語る戦地で片足を失って帰還した秀行(寺島進)もまた、戦争のトラウマに悩む重症患者だ。

米軍の侵攻を受けた沖縄(本土にとってのトラウマ)の惨状が美しいキリシマによって隠されているように、登場人物を苦しめる残酷な戦禍のシーンは、本作品の中で直接描かれることはない。自分をキリストになぞる主人公や、入水自殺を図るイネなどの会話や行動から、観客はトラウマの原因を推察するしかないが、その悲しみの深さはスクリーンから痛いほど伝わってくる。

ラジオから玉音放送が流れる中、秀行が帰還してから晴れ続けていたキリシマに久々の雨が降る。それは、戦地で玉砕を続ける兵士たちを慮って張り詰めていたカラカラの空気に、人間らしい<湿り気>をもたらしたのかもしれない。ラスト米兵が空に向けて放った銃声によって、宮崎えびの市空爆から半世紀以上を経てようやく映画化できるほどに回復した黒木監督のトラウマがほんの少しでも癒されればと、観客はただ祈ることしかできないのである。



2.  とても良い ネコババさん 書き込み日: 2005年02月04日

キリシマが美しいだけに戦争の悲惨さが伝わってきます

この映画を見て誰もが感じるのは戦争の悲惨さ、残酷さでしょう。監督の実体験にもとづいてはいても物語はフィクションとのことですが、監督は広島に原爆が落とされてから敗戦までの一週間のキリシマに住む人々の生活を淡々とディテールに最重点をおきながら描いています。「神は細部に宿る」という言葉を監督もメイキングで語っていますが、だからこそ、リアリティが伝わってきます。すでに戦後60年、あれだけのリアリティを出すのは並大抵ではなかったのではないかと思います。監督自身の14歳での悲惨な体験、そんな経験をしたら生涯心に大きな傷となるのは当然でしょう。ことさらに反戦を叫ばなくとも、一つ一つのエピソードが心に響きます。映画のなかで何度も映し出される田園風景のかなたに見えるキリシマは本当に美しい。美しいだけに、余計、戦争が人々にもたらす悲しみが際立ちます。残念ながら私はこの映画を映画館で観れなかったのですが、03年度のキネ旬一位の評価に納得しました。監督が60年代に制作した「龍馬暗殺」「祭りの準備」も名作ですが、「テロとの戦い」という空気が支配的な時代にきな臭いものを感じる監督の直感とこの映画は、時機を得たものと感じ、黒木監督、75才にして健在と思いました。



3.  とても良い おじいさんさん 書き込み日: 2006年02月05日

それでも庶民は生き残る。

 霧島が舞台。
 黒木和雄監督の反戦映画3部作の第二作目。
 今回は戦時中の庶民たちの日常生活が克明に描かれている。肺浸潤で自宅療養中の少年からみた当時の日本帝国の国民の姿。敗戦は間際だ!
 真っ青な空を、敵のグラマンが悠々と飛び威嚇している。
 庶民は戦死するかもしれない兵隊さんを大切に大切にあつかった。兵隊さんは、戦死の届けを持って行き、同僚の未亡人と肉体関係をもってしまった。それを健気に隠し続けている子どもたち。
 戦死した兄を待っているのか、沖縄の少女は屋根に上がり遠くを見続け屋根から降りてこない。
 「あんちゃんの仇を討ってください」と少女は叫ぶ。
 大地主の祖父は強い影響力をもっている。戦場で家族を失った者、傷痍軍人なった者、様々な人がおりなす敗戦前の日本社会のエピソード。
 そして皆は「アメリカ軍の上陸」を迎え撃つために、竹槍もち地上戦を戦う訓練をしている。
 辛辣なまなざしをかんじる。
 『TOMORROW 明日』(88)では、「日常の断絶」を描き、『父と暮らせば』(04)では「希望」を与えた。
 庶民は強いのだ。そうありたい。



4.  とても良い 草莽の志士さん 書き込み日: 2004年08月22日

戦下の日常性

 『美しい夏キリシマ』は戦争を描いた映画だが、劇中に誰一人として死ななかったし、まして戦闘シーンは無い。また追憶の情景やそこに生きる人々の営みは詩のように美しい。にも関わらずスクリーンの隅から隅に漂っているのである、死臭が。紛れもなく反戦映画として括りつけられた一遍だ。あくまでも日常性(デテール)の描写にカメラを向けながら、その向こう側にある破滅(戦争)を僕に「想像させる」事で恐怖と云う稲を植えてゆくのだ。日本人である僕には『プライベート・ライアン』に増して『ディア・ハンター』に増して『シンドラーのリスト』にも増して「戦争」なる物を、知らせてくれたのではないか。

 宮崎の中学校から航空機工場に動員された少年(15才)が3羽のカラス(戦闘機)の爆撃を受けた。次に顔を上げた時すぐ隣にさっきまで一緒に岩波文庫を読んでいた学友が尻もちをついていた。頭が真ん中から割れてザクロのような脳味噌が溢れ出そうとしていた。目は中空を見つめ虚ろ、こちらに両手を差し伸べている。立上がるや否や後ずさりするとそのまま逃げ出した少年。この少年が黒木監督であり、その後、心的外傷ストレス障害に陥った御自身の少年期の実体験を基に映画化がなされてある。そして相変わらず監督の使う演技者は溜息が出る程に素晴らしい。



5.  とても良い n-wonderさん 書き込み日: 2006年03月11日

心に響く反戦映画

 キネマ旬報ベストワン。地主に支配されている農村の中で、庶民がそれぞれの立場で生きている。そして戦争と言う極限状況の中で、人間の強さ、弱さ、もろさ、醜さ、美しさが実に丁寧に情感豊かに描かれている。
 戦争についていけない人間を描くことで、心に響く反戦映画になっている。康夫(柄本佑)が療養生活を送りながら、なつ(小田エリカ)に思いを寄せる。雨の中、素直になれなかった康夫の行動は、思春期の不安定さだけでは説明しきれない農村社会の階級社会の封建制を感じる。祖父(原田芳雄)と関係があったお手伝いさんのはる(中島ひろ子)が自分の気持ちとは全然別のところで嫁ぎ先を決められるが、戦地で足が不自由になってしまった秀行(寺島進)との出会いが、この先生活の苦労はあるだろうがきっと2人は幸せになってくれる、と希望の光を見せてくれる。貧しい小作人で戦争未亡人の石田えりとそこに入り浸る兵隊(香川照之)はハマリ役同士なのだが、香川照之のいやらしさ、狡さ、小心さの表現が見事なのに対して、石田えりの後半の女の強さを主張していく部分は多少のムリっぽさを感じさせた。終戦後、農地改革で階級社会は徐々になくなっていくが、ここは象徴的な場面にはならなかった。それよりもなつ(小田エリカ)の康夫(柄本佑)に対する平手打ちに新しい時代の到来を予感した。
 素晴らしい風景描写、終戦一週間に絞った時代設定、各俳優陣の見事な存在感などなど。名作です。



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