とても良い / 口コミ件数 : 3件
価格 : 4,935 円
この映画に山本薩夫監督が軍隊に持った恨みをはらすような気迫を感じた。くしくも使った兵舎はかつて入隊した連隊があったところだという。出演者も軍隊の体験があって動作もさまになっている。 DVDには付録に山田洋次監督のコメントが付いている。監督はこの映画にエキストラとして出演している。裏話も聞けてなかなか興味津々の内容であることも付記しておく。
ストーリーは原作をかなり忠実にトレースしている。出演者たちは原作の雰囲気を全く壊していない。 野間宏の原作を読んでいても読んでいなくても、映画としてすばらしい作品になっている。 否、すごい映画である! 上級兵の下級兵に対するほとんどサディスティックな仕打ち。このような中で、 何とか人間性を失うまいと努力する者。兵営内の緊迫感。 そして、木村功の演じる復讐に燃え、昔の女に何とか会って本当に自分は裏切られたのかを 確かめることにとりつかれている主人公。木村功が兵営の中で怒りを爆発させるシーン。 本当にその怒りがこちらに伝わってきて、怒りを爆発させたときの爽快感を、見ている僕も感じた。 戦争の中で庶民は苦しんでいるのに、うまいことやったものがたくさんいるのだ。 そういう奴らに対する怒りとしてこの原作は書かれたはずなのに、結局この怒りはむくわれなかった。 そしてこの映画もその点では同じだったのだ。見終ってなんとも言えない無常感と、 いいようのない落ち込みを感じる。だが、いや、だからこそ見なくてはならないのだ。 繰り返すが、すごい映画である。木村功の無念さがこちらに伝わり、本当にくやしい。 木村功以外にも出てくる俳優はみなすばらしい。佐野浅男も下元勉もものすごいリアリティである。 例えばアメリカ映画の「地上より永遠に」も似たように上官や仲間にモンゴメリー・クリフトや フランク・シナトラはいじめ抜かれるが、むこうの映画は軍隊を全く否定していない。むしろ いじめた連中は最後に成敗されるし、立派な上官が出てきて、軍隊という組織の持つ不条理さは 解決されてしまう。比べてみればこの「真空地帯」のほうがはるかに上、というよりもレベルの違う 映画であることがわかるだろう。 白黒映画である。しかし昨今の格好良い日本製反戦映画(??)などと比べものにならぬリアリティを もったすばらしい映画である。
戦闘で殺すのも殺されるのも嫌だけど、軍隊の陰湿ないじめも願い下げです。 この映画を見てつくづく戦争はごめんだと思いました。 しかしどうしてこうなってしまうんでしょう。 食事をひっくり返してしまった安西の受ける暴力や、せみのマネをさせられる初年兵たちの姿は痛々しく辛くて正視できません。 いずれ死にゆく運命からくるストレスが暴力に向かわせるのか、「虚構」である「神国」を維持するためにはここまでしなければならなかったのか。無意味な暴力といじめの連続に「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」を思い出さざるを得ず、やはりわれわれ日本人は異常なのかもしれないとまで思ってしまいました。 個人主義が根付いていない、権力者へ阿る腰巾着が多すぎる、などなど慨嘆に堪えません。 木村功扮する木谷一等兵が正義の味方でも何でもなく、ただ単に花枝への恋心から行動するというのがいいですね。愛に夢中だと兵隊なんかやってられませんわ。