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「こうもり」のライブ映像は少なくないが、これは唯一の映画版。ただし、第3幕の間奏曲がカットされ、バレエが慣例どおり差し替えられているほかは全く舞台版に忠実に映像化されている。クライバー指揮の名舞台と同じオットー・シェンクの演出は、ほぼ同趣向だが十年以上前のものだけにやや熟成不足の部分も(特にバレエ場面)。ただし全員が廊下にまろび出て乾杯をかわす縦構図のエンディングなど、なかなか洒落ている。
ベームは序曲で指揮姿を見せるが、終始難しい表情で、重厚なドイツオペラ風の曲作り。クライバーの華麗さと比べると気の毒だが、テンポが遅いぶんウィーンフィルの美音が活かされ、悪くない味を見せる。歌手陣はべらぼうに豪華で、しかも指揮者とオケをふくめ全員をドイツ語圏で固めた「こうもり」のソフトは唯一だろう。白眉はヤノヴィッツのロザリンデ、そして世紀のテノール、ヴィットガッセンが最晩年に遊んでみせたオルロフスキー。視覚的にもホルムのアデーレが少し老けすぎかなと思わせる(ただし長年の当たり役だけあって一挙一動が実に決まっている)以外は皆ピッタリで、クメントのアルフレードが特に良い演技を見せる。この名作オペレッタを過不足ない音と絵で映像化したビデオとして、スタンダード的存在といえる。