とても良い / 口コミ件数 : 6件
価格 : 1,880 円
戦争の悲惨さを愛と笑いで包み込んだ作品というよりも、戦争そのものがそもそも人間のよくある小競り合いにすぎず、家族や恋人の愛やサッカーの試合、ましてや動物の世界にとっては、戦争なんておよそ重大な問題にはなり得ないと笑い飛ばしたような、痛快な作品にみえる。 それにしてもロバがいい。失恋したロバの前に、誰もが立ち止まる。ロバの深い絶望が、交通を遮断し、対立を堰き止め、絶望を希望に昇華させる。
ボスニア紛争を背景に繰り広げられるヒューマンドラマ。 いや、アニマルドラマ? 紛争・戦争が背景に扱われる映画はどうも身構えてしまう。 緊迫感を感じずにはいられなくなってしまうけれど、 ダニス・タノヴィッチ監督の映画「ノー・マンズ・ランド」と同じく、 その点においてはこの映画も相当にゆるい。 シリアスかと思いきや、むしろシニカル&コミカル。 始まってしまった「誰かの戦争」よりも、 やっぱりサッカーや恋愛や家族のほうが大事。 でも現実からは逃れられない。 そのあたりのバランス感覚が実に絶妙だった。 また、素晴らしく美しい風景と、 圧倒的な存在感のある音楽、 個性的かつ魅力的な動物たちがぐんぐんとその世界に引き込んでくれる。 最後まで観ないと良さが分かりにくい映画かもしれない。 それほどに、ラストシーンにはグッとくるものがあった。
エミール・クストリツァ監督独特の不思議な世界観の中で、人々は常に暴力と過剰な感情表現で画面を満たす。独特のカメラの上下運動は奇妙であるが説得力がある。見える、見えない。現実の世界を覆うのっぺりとしたカバーを無邪気にはがしまくり、人間の生の喜びを抉り出したような作品。失恋し絶望したロバは一生懸命だけれど滑稽だ。というかすべてが滑稽だ。この滑稽さの前には戦争さえもかなわない。
クストリッツァの最高傑作は『アンダーグラウンド』かと思料するが、本作品は泣かせる。 といっても今はやりの「お涙頂戴」とはやはり一線を画すると言うべきか。 ここでは、毎度のスラップスティック張りのドンチャン音楽はむしろ控えめ(これでも)と言ってよく、珍しく特殊撮影なんかも使っていてファンタジー風。ちょっとサービス精神がありすぎると思わせるほどに「ラブ&ファンタジー」が濃いんじゃないか?クストリッツァにしては。と思わせておいて、しかし、この作品で一番思い出したのがアンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』であった。 題材の類似もあるにせよ、歴史と人間の織り成す慟哭の極みと言えそうなアンゲロプロスの大傑作と本作では、テイストは全然違うが、視線・スタンスは似通ったものがあると思われるのだ。旧ユーゴの成り立ちやNATOの空爆、民族浄化といった問題については、高木徹の『戦争広告代理店』や『オシムの言葉』が売れた木村元彦『悪者見参・ユーゴスラビアサッカー戦記』といった文庫や、最近のジジェクによる挑発的な新書『人権と国家』にも触れられている。とはいえ、アフリカや中東情勢、さらにアフガニスタン情勢などとともに一般ニッポン人の最も意識が薄いところでもあろう。 当方も然りであって、えらそうなことは言えないが、上記の本やクストリツァの映像などでまず興味を持つことも肝要かと思うしだいである。この作品でも、主人公の息子は有望なサッカー選手として登場するが・・・・。 映画として最高レヴェルであることは請合う。
登場人物がみんな悲惨な状況下なのに本当に楽しそうである。 監督自身が悲惨な状況というのを実際に体験し知っているからこそ、悲惨な状況下で音楽を心から楽しみ、楽しいときは心から笑い、好きになったら恋に落ちてしまうのが、生きていくうえで最も大切なことなんだと言っているような気がする。 戦争が起きていない日本でも、戦争が起きてないなりに生きていくのは結構しんどいものである。そんな中でこんな生き方が出来たらいいなと思ってしまう。 あとサバーハの笑顔が良すぎる。あの笑顔を見ると色んな余計な考えや悩みが吹き飛んでしまいそうな気がする。ほんとカワイイ。