とても良い / 口コミ件数 : 2件
価格 : 4,407 円
公開された年は1955年、昭和でいうと30年、終戦からわずか10年の時の作品である。この時代に懸命に生きる老若男女の人生を、酒場という一つの舞台に凝縮し描いている。予算的な制約もあったであろうが、舞台を一つのセットに限定し、様々な登場人物のエピソードに実際に歌やレコードなどの音楽を随所に挿入することで、全編が淀むことなく展開してゆく。終戦からまだ10年とあって、年配者の人生いずれにも戦争の爪あとが深く残されている一方、若者は未来に向かって生きている。貧しくも互いに助け合い懸命に生きている人々の姿が、心に沁みてゆく作品である。 黒澤作品でおなじみの加東大介や東野英治郎、多々良純などが登場する一方、映画デビュー間もない丹波哲郎や宇津井健の若かりし姿も見る事が出来る。声楽家を目指す青年とその師匠には、実際の音楽家のプロが演じているが、俳優の中に交じってまったく遜色は感じさせない。特筆すべきは、踊り子を演じる津島恵子の美しさ(前年公開された『七人の侍』では農民の娘を演じているが、そのギャップの大きさ!)、そして小杉勇演じる老年画家の味わい深さであろう。
・内田監督の前作「血槍富士」と同じく、多数の登場人物それぞれのドラマが同時進行する映画です。市井の人々の悩み、ささやかな幸せを描く佳作だと思います。 ・一番驚いたのは、画質の良さです。所々フィルム由来の汚れは見られますが、十分コントラストが高くて綺麗です。古い作品によく見られる画面のゆれも、ほとんどありません。HDテレシネのお陰でしょうが、こんなに高水準なマスターフィルムが新東宝に残っているとは思いませんでした。紀伊国屋から発売されている、他の新東宝DVDも楽しみです。 ・音質についてはイマイチです。人の声が聞こえにくく、音量を上げなくてはなりません。これは同時期の他社映画もそうなので、仕方ないのでしょう。 ・内田監督の1925年作品「少年美談 清き心」も収録されており、豪華なソフトだと思います。昭和元年!(チャップリンの「黄金狂時代」と同年)の微笑ましいドラマです。ただ画質はひどい(フィルムの状態が悪いのでしょう。80年以上前の作品なので仕方ない)です。見られるだけで感謝、です。 ・付属リーフレットも凄い!です。作品が作られるまでとその後のエピソードが満載で、他にも美術セットの考察など、素晴らしいの一言。全ての映画ソフトに同様の解説が付いたら…と無茶な妄想をしてしまいます。