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岩波新書の「新哲学入門」を別にすれば、本書は廣松哲学の入門には良いのではないかと思う。本書冒頭の大森荘蔵と黒田亘との鼎談「脳・知覚・意識」と足立和浩・山本信との鼎談「存在と意味をめぐって」は、とくに、廣松哲学の相貌を良く捉えていて良いものだと思う。大森・黒田との鼎談では、廣松渉の認識論関係の薀蓄の深さ、思考の稠密さと展開の素晴らしさなどが良く出ている。山本・足立との鼎談は、大著「存在と意味」に就いてだが、この難物の哲学の背骨を良く著しているし、難解ながらに「存在と意味」を通読した時に思う疑問が、疑問として妥当であることが明らかになる。つまり、廣松哲学の弱いところも良く出ていると思う。本書は、マルクス主義や唯物史観、実践哲学に関わる論題も対談・鼎談形式で載っているが、個人的には、廣松渉は知識では豊かでも、あまり歴史、社会、といった分野は得意ではないのではないか、と思えた。マルクスやヘーゲルに透徹した理解を示したマルキストなので、私自身も長くそうは思っていなかったが、実際諸著作や言動を注意してみると、社会や歴史に関する哲学に関するセンスはあまり感心できなかった。無闇に緻密なだけで的を射当てていないと思う。逆にテキストクリティークや特に認識論系は感服するしかない。