とても良い / 口コミ件数 : 3件
価格 : 2,100 円
従軍女性たちが戦地で、何を見、何を感じていたか。本書では、若すぎた彼女たちがまだ戦争というものをうまく実感できずに、今までの幸せだった日常をつい持ち込んでしまう、という場面に何度も出会う。 名狙撃兵のサーシャは、赤いマフラーがお気に入りだった。雪の上でマフラーは目立ちすぎ、敵の狙撃兵との一騎打ちで殺されてしまう。また地下活動家のマリアは、降下部隊の襲撃にあった時、ハイヒールを手に持って裸足で逃げた。とてもきれいなハイヒールだったから、惜しかったと語る。通信兵のニーナは初めての戦いの時、近くで何が起こっているのか見たくて装甲壁から頭を出していて、将校から突き飛ばされる。「殺されるぞ」と言われて、私を殺す?まだ来たばかりなのに!と思ったいう。 暴力に関わりなく生きてきた人間が、突然巨大な暴力のただ中に投げ込まれてしまったときの、とまどいや驚きやおびえが、自分の言葉で綴られ、なによりも説得力を持つ。是非、多くの方に読んで頂きたい一冊。
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが最初に書き、検閲、改稿を重ねた「ソヴィエト女性軍人の戦争体験集」 短い物では2行ほどの物から、長い物では数ページに渡るインタビューをまとめた物。 対象は多岐に渡り、将校、下士官、兵、パルチザン、軍属。 職種は歩兵、砲兵、高射砲兵、戦車兵、航空搭乗員、狙撃兵、整備兵、通信兵、軍医、看護婦、工兵など。 本書の特徴として戦争の推移についてほとんど書かれていないと言うことが挙げられる。 例え書かれていても「ベルリンに入った」とか「ヴォロネジでくい止めた」とかわずかな物だけ。 それでも本書の価値が落ちることは全くない。 ここに書かれているのは個人の物語。 感情と記憶の物語。 だがジグソーパズルのピースが集まって模様が浮かび上がってくるように、読み進めると見えてくる物がある。 また個人の物語故にいくつも自分の胸に深く響く物がある。 国家として歴史に記された部分と個人として持っていた部分の差違を見ることができる。 自分の例でを言えば、 戦争中は男として扱われ、月経が止まり、「もう女に戻れないかと思った」という事を話した独身女性。 男性下着しか支給されず、死ぬよりもその後その下着を見られるのが嫌だったと言う人の話がどうにも重く残った。 右翼とか左翼とか、歴史が好きとか嫌いとか、そういった物にかかわらずぜひ読んで欲しい本。
ソ連では第二次世界大戦時に女性が兵士として従軍していたという事実を私はこの本を読むまで知らなかった。本書を読むと、当時戦地に赴いたソ連女性の多くは必ずしもそのことを厭ったわけではなく、自らそうしたいと願っていた節がある。これは意外だったが、国家による洗脳だと思い到れば納得できた。本書に収められた逸話のなかには、話すのも憚られるほど悲惨な物語がある。自分がその立場にあったらどうしただろうと読みながら考えることしきりだった。人間は極限状態におかれるとほとんど何でもやってしまう。そして戦争はそういう極限状態をたやすくつくり出してしまうのだ。再び戦争が起きないようにするために、このような本を絶やしてはならないと強く感じた。