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若者が成長の道程で皆味わう焦燥感がひしひしと伝わってくる |
前著「ペルセポリス」の最後で家族と別れ一人ウィーンへ渡ったイラン人少女マルジ。続編となる本作では、彼女はひと波乱もふた波乱も経験して大人への道のりを辿っていきます。
マルジは裕福で開明的な家庭に育ったとはいえ、東方のイスラーム社会からやってきた人間です。彼女の目に映る西洋社会は、親への尊敬の念に欠けた子供たちが麻薬とSEXにふける頽廃的な世界です。そこで彼女自身も薬におぼれ、あまつさえヤクの売人にまで成り果てます。
結果、疲弊しきった体を引きずって故国へと帰るのですが、そこでも彼女は反動的な宗教世界で閉塞感を募らせるばかり。削りすぎた鉛筆のように、何かの拍子に簡単にポキリと折れてしまうまで、自分の周囲に苛立ちをぶちまけ続けます。
ヨーロッパにもイランにも自分の確たる居場所を定めることができないというアイデンティティ・クライシス。そして世の中の清濁を併せ呑むには経験と知恵が決定的に足りないという年齢的ハンディ。この二つのせいでマルジの日々は大変痛々しいものになります。
確かにマルジの生きる世界は日本の読者の想像を超えた特異なものでしょう。しかし、若者が社会にイライラを募らせ、時に度を越した抵抗を試みるのは、洋の東西を問わないこと。そのことに立ちかえれば、この物語はどんな国の若者の心にも等しく訴えるものがあるはずです。前著がイランの抑圧政治に対する批判の書という性格が強かった一方で、本書は一人の人間の不器用だけれども確かな成長の記録として読めるのです。
無論、既に40代になってしまった私は、若者特有の稚拙さが裏にある彼女の焦燥感に必ずしも共感を覚えるものではありません。むしろ彼女を教え諭す祖母の言葉にこそ心が添います。
ですからその祖母にゆっくりとですが学んで成長していくマルジの姿には、心落ち着くものを感じることができた。そのことだけは確かです。
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