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自閉症裁判―レッサーパンダ帽男の「罪と罰」

自閉症裁判―レッサーパンダ帽男の「罪と罰」

とても良い / 口コミ件数 : 16


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1.  とても良い 林幸司さん 書き込み日: 2005年03月05日

ふたりの女性へのレクイエム

異常者による通り魔事件という印象しかなかったが,冒頭から驚かされた。男は高等養護学校を出た障害者であったが,ほとんどの新聞はこれを黙殺して中卒とした。障害者の人権を謳うマスメディアとしては,凶悪犯が養護学校卒では犯罪報道しにくかったのである。本書はマスメディアがタブー視した障害を真正面から捉え,自閉症裁判のリーディングケースとなった裁判過程を丹念に追う。前半,男の障害を巡って精神遅滞か自閉症かを争う二人の医師の攻防は,それぞれの知識と経験を総動員して双方に説得力があり実にスリリングだ。鑑定医と治療者という立場の違いもあろうが,ふたりとも立場を越えて真摯に真実に迫ろうとしている。翻って裁判長とのやり取りからは,裁判所はつまるところ責任能力にしか関心はなく,落としどころを捕まえてほっとしている様がありありと浮かぶ。自閉症という診断名に全てを託して「減刑を,情状酌量を」と訴えるのが著者の狙いなら,ひとりの支持も得られないだろう。本書が投げかけているのは,「人としての罪と罰を求めればこそ,障害への理解が不可欠となるのであり,それなくして責任も贖罪も十全足るものとはならないのではないか。ほんとうの意味での再犯の防止とはならないのではないか」という問いである。自閉症に関して凡百の医師以上の研鑚を積み,3年に渡って努力の限りを尽くした弁護が判決に影響を与えられず,弁護士をして「自閉症にこだわりすぎた。もっと事実関係で争うべきだった」と述懐させるくだりはあまりにも哀しい。事実の大枠は争いようのないものであるから,弁護方針は正しく意義のあるものであった。判決にも新聞にも黙殺された裁判過程を丹念に追い,双方の当事者への困難な取材を重ねて,障害の理解による真の贖罪と再犯防止を世に問うた本著作の意義は大きい。被害者O.M.さんへの,男に無心され続けて他界した妹への鎮魂の書でもある。



2.  とても良い ずみとしさん 書き込み日: 2005年08月31日

妹が印象的

養護学校の事務員をしていた知人に聞いた話です。
病気で長期入院をしている子供は養護学校に転校扱いになるのだけど、卒業を前にすると「養護学校卒業」となるのを嫌って、書類上は元の学校に学籍を戻すそうです。

障害問題について理想と(心の中にモヤモヤある)現実のわだかまりがこの本の中にあらわれています。
こーいう現実は一つずつ掘り返して光を当てていくべきですね。

と、加害者に寄り添う視点なのだけど、いきなり家族の命を絶たれた家族の心情にも配慮されています。

が、一番鮮烈なのは加害者の妹の生き様です。
家族の犠牲になっている不幸な境遇も、晩年の生きること楽しむことへの貪欲さも、どちらも印象的です。

読みやすい本ではないと思いますが、多くの人に読んでほしいですね。



3.  とても良い 琥珀さん 書き込み日: 2006年07月18日

これからの社会に必要なことが投げかけられている

2001年4月,浅草で女子大生が刺殺された.その10日後に逮捕された男は,事件当時にレッサーパンダ帽をかぶっており,その異様さから,事件発生当初マスコミに大きく取り上げられた.
著者の佐藤氏は,養護学校教諭の経歴を持つフリージャーナリストで,精神面・知的面でのハンディキャップに関係する書籍等を多く著している.
本書では,自閉症について理解し,正しい理解に基づく警察の取調べ,裁判の進め方,さらには法と制度の整備などについて問いかけている.だが,自閉症だからといって「刑を軽くせよ」などということでは決してない.
また,著者は被害者の家族,加害者の家族に寄り添う気持ちも強く持っている.それは単に「どちらの味方か」という問題でもない.
少年犯罪を含めて,大小様々な事件が日々起こっている.そのうちの何割かは,自閉症などの精神的なハンディキャップを持つ人やその境界にある人によるものではないかと思う.ハンディキャップがあるからといって犯した罪が許されるわけではない.また,裁判制度が変わったからといって犯罪が劇的に減るというものでもないだろう.しかし,精神的・知的な面でのハンディキャップを持つ人々への社会的な理解と,そういった人々をフォローする制度の充実が必要だと考える.
本書には,今後の日本社会に必要なことが多く記されている.



4.  とても良い Lunaさん 書き込み日: 2007年09月25日

本物のジャーナリスト

 著者は、被害者・加害者双方の家族や関係者に対し、4年という歳月を費やして、あくまでも真摯に、そして粘り強く取材を続けた。
この本は、その「誠意の記録」である。本来、あるべきジャーナリストの姿を見たようで、まさに心洗われる想いがした。

 悲惨でセンセーショナルな事件を扱った内容から、軽い好奇心で手に取る読者も多いだろうが、決して軽く読み流せる類の本ではない。再犯防止の為の、司法・医療・福祉とは・・・・? 誰もが、改めて考えさせられることだろう。
経験に裏付けされた専門知識も、とても勉強になった。
 



5.  とても良い N.Kさん 書き込み日: 2007年03月05日

加害者側から見た障害者裁判の実態

本書で取り上げられている「浅草女子短大生(レッサーパンダ帽)殺人事件」は当時大きな話題になったので、当然自分もマスコミを通じて知っていました。このような事件が起きると弁護側は「責任能力」の有無を持ち出すのが常であり、またかという感じで、それ以上深く考えることはありませんでした。
本書は、受身の姿勢では見えてこないこの事件の本質を解き明かすことで、社会に埋もれるさまざまな障害者問題を浮かび上がらせています。
著者は加害者側に立つという難しい立場にありながら、遺族感情との矛盾からも背を向けず、罪をどうにかして償って欲しいという気持ちから「責任能力」を問いただしました。
なぜ著者が遺族感情との矛盾に苦しみながらもこの裁判を闘ったのかということを、本書を読んで理解して欲しいと思います。
また、加害者の家族についても詳しく書かれていますが、この恵まれた国でこんな不幸が存在するのかというほどのもので、大きなショックを受けました。
そして、罪のない一人の女性が殺されたこの事件のおかげで、希望の欠片もなかった加害者の妹が幸せな最期を送ることができたのはなんとも皮肉であります。

著者の気持ちがこもったおもい本です。



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