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自己決定権は幻想である (新書y)

自己決定権は幻想である (新書y)

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1.  とても良い じんじんさん 書き込み日: 2005年08月26日

システムのからくり

個人のためにシステムやルールがあるべきなのに、システムのために個人が存在する形になっている。システムのために個人が存在する仕組みを意図して作っている(もっと怖いのは、作り手側は自分達の意図を「正義」「善意」「民意」に基づいていると信じこんでいる場合)にもかかわらず、個人のためにシステムが存在しているかのように見せかけようとしている。そう見せかけるための道具立ての一つが「自己決定権」なんだと著者は言っている。
私は「9.11後のアメリカの為政者の動き」、「アフガン攻撃」、「イラク戦争」の中にこのからくりを見た。この場合は「民主主義」「テロとの戦い」等の言葉が見せかけの道具として使われた。初めて思ったのはシステム側が用意する、マスをのせようとする論理の土台、文脈の中で対抗するのは無駄なのではと。例えば従来型の「反戦運動」とかも含め。個人個人が理窟抜きで「戦いたくない。嫌だ。殺すのは嫌だ。死ぬのは怖い」て叫べばいいだけではないかと。



2.  とても良い rientさん 書き込み日: 2004年08月08日

自己決定論者は単なるわがままである。

 「自己決定権」という言い回しが、自立した人間の責任ある選択行為として市民権を持ちつつあるようだ。自己決定権により、子供は産まない。安楽死を選択する、臓器のドナーとなる。また、売春も自己決定権により正当化されるかもしれない。誰にも迷惑はかけない範囲において、すべて自己決定し、誰にも文句は言わせない。

 しかし、著者は批判する。自己決定権論者は自己中心である。ひらたくいえば、わがままである。自己完結しており、他者との関係性を捨象している。人間はたった1人では生きられない。空間的にも時間的にも。関係性の中に愛が、思いやりが、やさしさが生まれる。関係性の中で生き、生かされている人間にとって「自己決定権は幻想である」と著者は訴える。

 抽象化された人間像、人間には自己決定権は理論的に存在するかもしれない。自分だけで自分の選択だけで一生、生きていけるかもしれない。しかし、われわれは具体的人間である。ごはんも家内に作ってもらっている(^o^)。支え合って生きている。抽象化した途端、血が通わなくなってしまう。著者は言う「清潔な抽象より、泥の臭いのする個別性を探る」と。

 著者の子供時代の出来事、人間関係が、現在の思想にどう影響しているかも書かれており、著者の思想形成が理解できる。
 良識、正気を基礎として、現代の正気を失った抽象化された皮相な言説に対し、本質的な批判をできる著者を、私は大いに信頼している。良識ある人々に一読をお勧めします。勇気を得られることでしょう。
 



3.  良い シードンさん 書き込み日: 2007年02月09日

死んだらどこへ行くのか?

 イラクで日本人が人質になった直後に発表された本なので、多くの人に注目されたが、中身は筆者の専門領域、特に臓器移植に関する話が中心である。
 多くのエピソードを紹介しながら話が進行するので、散漫な印象は免れないが、読みやすさを考えて意図的にとった書き方であろう。
 そのうちのひとつの印象的なエピソード――
 「人は死んだらどこへ行くのか」衰弱した盟友にそう問われたとき、作家の中井英夫は答えることができなかった。だが、やがて自分の番がやってきたとき、自分に寄り添って世話する人に向かって「わかった。人は死んだら、残された者の心の中に行くんだ」と言ったそうだ。
 ――この本を貫いているのは、「たましい」に関わるレベルを足場にして臓器移植や自己決定権というものを考えてみようという筆者の愚直な姿勢である。ある意味では常識的、ある意味では時代遅れ。ここのレヴューには「非論理的」という批判も散見されるがそもそも人の生き死にをどこまで論理的・科学的に割り切れるのか。そういう人間的な迷いを肯定し、自分をさらけ出しながら語る筆者の率直な姿勢に共感します。
 希望をもって生きるための一冊!



4.  良い garmyさん 書き込み日: 2004年07月27日

「批判からしか見えないもの」を見せる骨太な批判

最近よく言われる「自己責任」「自己決定権」という風潮に対する、筆者の骨太な批判。
自己決定をすることができてもそれは権利ではない、という点に関する説明は(やや話が逸れるところはあっても)うまくまとまっていると思う。
「自己責任論に対する批判」は稚拙なものが多いが、この本に関してはそのような心配はない。

ただ、3章後半以降では本人の語りになってしまい、メインテーマである「自己決定権は幻想である」テーマから離れてしまうため、人によっては退屈に感じるかも知れない。
これは、インタビューによる語り下ろしを元にした本であることも影響しているであろう。



5.  良い 涙さん 書き込み日: 2007年03月21日

当たり前が当たり前でない世の中へ

 書かれていることはごく当たり前のことである。しかし、著者も述べているように、当たり前のことを叫び続けなくてはいけない世の中なのだからしょうがない。私の死は私の近しい人すべてに影響を与える。こんな当たり前のことが自己決定権というもっともな言葉によって見えなくなってまう。私たちは関係性の中でしか生きていけないのに、この言葉は関係性を破壊してしまう。
 この本は自己決定権そのものを批判する箇所より、自己決定権によって引き起こされる弊害について述べている箇所の方が分量が多い気がする。その意味で純粋な自己決定批判にはなっていない。また、自らの行為が他者に影響を与えるとしても、なおその上で、自らの決定と他者の気持ちどちらを優先させるべきかについては述べられていない。この本の射程を超えているのだろうと思われる。
 総合して考えると、この本には一読の価値があるだろう。純粋な自己決定批判以外の箇所からも得ることが多い。個人的には自己決定権はあらゆることを他人事にしてしまう(本人がよければいいんだから、遺伝子操作、クローンも…)という箇所と、具体的な場面においてはもっともな事でも、抽象化してしまうと問題が生じるという箇所が勉強になった。



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