私たち一般人は、 建築と直接触れる機会はあくまで、建築物を見るとき。 あまり、作っている最中を目にする機会はほとんどありません。 安藤さんの建築とは、その計算し尽くされたモノの配置、 光と影、コンクリートの表情など、 美しさ、すばらしさを挙げればきりがありませんが、 それは、あくまで氷山の一角。 僕たちが目にしているものは、その安藤忠雄さんという人の建築の ほんの一部でしかない。 そんな言ってみればあたりまえのようなものを、 垣間見ることができる一冊ではないでしょうか。 もともと、建築が好きで、 建築関係の大学に行きたかった僕にとって、 安藤さんはもちろん尊敬する、雲の上の人であります。 そんなプロの建築家の建物達に憧れて、 彼らと同じ道を見てきました。 しかし、高校最終学年になり、 年が過ぎるにつれ、どんどん目に見えてくる現実はとてつもなく、 きたないものでした。 街には、画一的なマンションばかり立ち、 せっかく、新しいものを作るチャンスをもらった土地は、 ただの、金儲けの場所と使われてしまいました。 大会社が美しさを求める事はなく、 追求するものは、金ばかり。 利益が多ければいいのです。 人間は進化を続けてきたのに、芸術に対する欲求は、まるで退化してきたようです。 退化するというより、 人間は、並んだ金と芸術を見ると、 金のほうに走ってしまうという弱みを露呈したものです。 それは、資本主義が反対される理由の一つではないでしょうか。 そんな、経済の摩天楼の中で、 彼らは、小さいながら力強い光を放っていました。 見るからにわかる、赤字物件に挑戦する、安藤事務所や工務店。 それは、彼が、質素というテーマのもとに存在する芸術を信じていたからだと思います。 彼を突き進めたものは、金でなく、 芸術への探究心ではなかったのでしょうか。 それを支えてきた人間関係がこの本には描かれてます。 利害関係だけではなく、作る人それぞれの信頼関係。 まるで美に対する欲求だけにより、成り立っているモノづくり。 そして、彼らを、欲求という曖昧なものだけで働かせてしまう、 安藤忠雄さんの人間性。 その、人間関係こそが、 彼の建築の美を支えてる、氷山の下の部分のような気がします。 この本を読んだとき、 光の教会のように、暗くなりかけていた将来の夢に 純粋で、美しい、力強い光のクロスがさしたかのようでした。 |