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価格 : 2,520 円
この本は「正統的周辺参加論」を提起した、初めての本。日本語訳もすばらしい。職人がいかにして一人前になっていくかを参加観察し、まとめたもの。たとえば、リベリアの仕立て職人では、見習いはボタン付けから始めていく。そして次第に大事な仕事を任されていって、マイスターになる。そのあたりのことが実証的に書かれていて参考になる。教育学関係者必読の書。最後の佐伯胖の解説もすばらしい。これだけでも一読の価値がある。
状況論的な思考の下においては、人間の「学習」は単なる知識の獲得のために、教授者によって教え込まれるもの、あるいは、獲得されるものではなく、学習活動を取り巻く雑多な環境から様々な情報を享受しながら、環境に取り込まれていく、順応していく過程を「学習」と捉える。この知の獲得過程の概念は、昨今注目されているイーラーニングの理論的背景を考えるときにひじょうに便利な概念である。なぜなら、学習者はコンピュータを使って学習してはいるものの、実はコンピュータを通して画面の向こうに広がる広大な世界を見ているからである。このように考えるならば、コンピュータで学習するということは、コンピュータが提供する環境にどう適応するか、が考えられなければならず、その解を導くひとつの考え方のヒントが状況論であると考えられるからである。本書の記述は、一見難解のようではあるが、主張はシンプルで一貫しており、状況論を勉強するためのバイブルである。
知識がいかに実践的であるのかを考えるとき、学習者の社会との関わりを考える必要がある。実践的という以上,身につけた知識がどこにも生かされずに埋もれてしまうものではなく,実際の生活において実際にどのように生かされるのかを理解する必要があるからである。本書では徒弟制の学習の有効性の研究を例に,学習に参加することとの有効性について、リベリアのヴァイ族とゴラ族の仕立て屋の徒弟制をあげて述べている。レイヴはまた,アメリカのスーパーの肉屋の徒弟制を例に形式的な学習の問題点についても述べている。学習者自身がどのような知識が必要なのかを自ら考え学び取る能力を,私たち教師は育まなければならない。このことを,本書では示している。
「学習とは何か?」を問い直す一冊です。勉強することは当人に依存するものかと思っておりましたが、実践と勉強の場であるコミュニティ(=実践共同体)がかなり重要であることが理解できます。実践共同体では徒弟と親方の単純あ二元論ではなく、徒弟同士で強い相互作用、徒弟は成長する、親方は徒弟と交替しうる、経験がモノを言うなど、まさに複雑系な世界と言えます。 「学習」は自らの好奇心により能動的に知識を得ること、「教育」は構造化されたルールに従い学生を理解させることであり本質的に違うものという指摘が爽快です。 社会人になって日々勉強と思うことが多々ありますが、個と場について考え直すきっかけになる良書だと思いました。 ちなみに本書の副題にあります「正統的周辺参加」とは、ある目的を持った企業、組織、コミュニティなどに属していると認識しており(正統的)、誰が中心人物というわけでもなく新参者と古参者が渾然一体となり(周辺)、実践共同体を形作るという参加形態のことです。
訳者である佐伯胖(さえき ゆたか)先生の講演で「正統的周辺参加(LPP : Legitimate Peripheral Participation)を知りました。徒弟制度、研究室、OJTなどでの知識・経験の伝授の形が効果的に働くのかが、この本でおぼろげながら分かりました。個人的にはp.68の「学習に関して重要なことは,教授行為(instruction)の問題ではなく、学習の資源としての実践へのアクセスの問題である。」という文章が気に入っています。