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公務員試験志望者や専門家たちだけに読まれるのはもったいない1冊 |
本書を先日法学や政治学の本と一緒に安価で購入したが、読んでいくと、法が外殻を規定し、政治がそのあり方を定めた制度・システムとしての行政組織がどう動くのか、非常に具体的・現実的に教えてくれる効果的な1冊だった。
構成は全20章。本編は400ページ強。一章分に20ページ前後の分量が配分されている。図表も用いられ、各章の末尾には関連の実例を主に取り上げたコラムがある。巻末には10ページにわたる参考文献が収録されている。
内容は、まず最初の4章で本書全体がカヴァーする事柄、行政学自体の問題領域とそれの歴史的形成過程を概説する。第5章と第6章は国家内の中央地方関係についての概説と日本での実際例、第7章では議院内閣制と省庁制を押さえた後、第8章では日本の公務員制の構成原理、第9章から第13章までが官僚制の組み立てと働き、この5章に渉る部分がこの著作のひとつめのハイライトのように読める。ふたつめのハイライトはその後に続く第14章から第18章までの政策形成・政策立案・政策実施・政策評価という一連の行政機関の活動を追った部分で、第19章は行政管理と行政改革、第20章は行政統制と行政責任、という、それまで本書全体で取り上げられていた諸事項を、現在の行政の実情に対する理解と対応策へとつなげる論点で本編が締めくくられている。
読み終えてみると、なんと言っても行政組織が何のためにあり、その組織はどんな仕組みを内蔵していて、個々の政策・施策・事業・業務をどんな理屈の下で、どんな手続きで行い、事後評価しているかということが、あくまで具体的に、構造や諸過程の一つ一つの機能・手続きごとに説明が加えられ、その上で相互に関連付けられている書き分け方が非常に判りやすかった。官僚、とか官僚制、とか一つの言葉を発語したり相互に取り交わすと何か官僚について判ったように思えるが、本書を読んでいると、自分は中央省庁で官僚といわれる人々が何をしていたのか、実際には何もわかっていなかったんだということを思い知らされた。この本を読んで官僚について全てがわかったとは言わないが、彼らの発言や行動の裏側にある彼ら独自の合理性については類推しやすくなったと思うし、予想される対応をある程度推定できるヒントもここにはあるようだ。ただ官僚を感情的に非難したり、からかったり、侮蔑するだけでは何の解決にならないのは確かで、最も有効なのは彼らについて深く理解し、その上で具体的な批判を加えることに違いない。それは、単なる悪口にはとどまらない指摘になるはずで、そこから改善案も考えられるだろうし、そのヒントもこの本に含まれている。政策立案の過程についても交渉の三つの型、原案の流れとその修正過程、官房系統の統制など、彼らの日常業務と組織内・各組織間の要素の力の及ぼし合い方がとても生き生きと描かれている。
また、行政組織が採用している官僚制は企業組織や他の社会団体も採用している広義の官僚制のうちでも最高度に洗練されているので、ここでの知見は企業組織の経営管理について考える際、組織の機能の仕方として一つの極点を示す参照点になると思う。
制度・システムは、その中に含まれる人や集団に一定の位置を与える。制度・システムについて知ることは、それぞれの人や集団がそれぞれどんな位置に据えられているのか、また人・集団をを一定の位置に配分しているのが誰で、彼らはどんな考え方に基づいて配置を行い、どんな風に強制力を行使しているかを知ることで、その知見から自分が生きているのはどんな世界で、自分はどんな存在で、どんな風に生きていて、この後どんな風にして生きていくことが出来るかについての判断の基準を得ることが出来る。行政はたしかにどこの国でも存在し、その内部に生きる人々の生き方を根本的に規定している。この著作はそんな行政についての理解を大幅に助けてくれる1冊。公務員試験志望者や内部関係者にのみ知られるには余りにももったいない内容です。 |
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