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環境リスク学―不安の海の羅針盤

環境リスク学―不安の海の羅針盤

とても良い / 口コミ件数 : 17


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1.  とても良い マキさん 書き込み日: 2004年10月13日

とにかく面白い」というレビューについついつられて読んでみた。

確かに面白い。
それだけでなく、こんな学者人生もあるのかと小説以上に引き込まれた。そのうち知らず知らずのうちに現在の環境問題の先端知識を受け渡されている事に気づかされた。

著者は23年間という万年助手の身分での冷や飯を、何事も無かったがごとく記述している。そんな事はあるまい。苦しかったに違いない。悔しくもあったろう。
そうした著者を見て育った東大都市工学科の後輩は、「あんまりこだわると冷や飯を食うことになるな」と考えたろうし、著者に同調した学生は学外でタフに活躍しているに違いない。

宇井、中西両氏が去ったあとの都市工学科はその存在感が無いに等しいくらいあまりにも薄い。著者の都市工学科時代の研究のダイナミズムが今は社会的にさっぱり聞えてこない。縮小再生産段階に入り込んだのだろうか。著書を読むとそんな感じを抱かせる。

ダイオキシン問題、環境ホルモン問題、そして今現在のホットなBSE問題、いずれの問題もファクトの追求がこれほど困難を伴うものとは考えも及ばなかった。 自分も含む大衆は感覚、情念で事を捕らえる。 ダイオキシンにせよ、環境ホルモンにせよ、少し沈静化したいまは書かれている事を素直に受け取れる。しかし、それぞれの問題がクレージーに吹き荒れた頃自分はどうだったっけな。もう忘れてしまったけど。

ともかく物事を冷静に判断するよすがとして、先達の類まれな経歴、研究を一読するのに不足は無い本だ。そこらあたりの若い学者先生から高校生まで一読おすすめ。5つ星。
読んでみて損したと思ったら、あなたの受信機壊れてない?



2.  とても良い nankichiさん 書き込み日: 2005年08月17日

科学的モノの見方を教えてくれる良書

自伝的側面もあるので、読み物として面白い。また、リスク論に対する考え方が安定していていろんな切り口で説明しているので、一冊読むことで理解がすんなりできる。

ただちょっと気になった点。

本書ではリスクを
1.科学的評価リスク
2.意志決定のためのリスク
3.国民が抱く不安としてのリスク
と分けている。

1と2については今までの著者の活動から浸透していく様子がわかるのだが、3の解明がなされていない。

BSEを事例にしているのだが、1-2の観点からするとアメリカに対する全頭調査は確かに不要であろう。しかし、3の観点からすると、これだけ偽表示が跋扈する現在の食肉産業でうまくまわっていくのか?という疑念が発生してしまう。
本来やるべきことをやっていない事例は、食品だけでなく自動車業界や原子力などで発生しているのは周知の事実。
このように科学的リスクが実態としては故意に曲げられうる可能性があり、それが国民が不安を抱くリスクの一つであることを考慮されていないのは残念だ。

なお、著者のサイトには書評のリンクがある。気になる方は是非チェックを。



3.  とても良い hamoさん 書き込み日: 2004年09月23日

とにかく面白い。

この著書を通読すれば、著者が環境リスク論に至る筋道、必然性がよくわかる。
同時に環境リスク論の考え方、概念が無理なく納得できる。
しかも著者の研究生活の来歴はドラマチックでもあり、読み物としても面白い。
これからの常識として多くの人たち(特に学生)に一読をすすめる。

著者のリスク論に対するする、どちらかといえば文系の人たちの抽象的な批判はファクトに基づく著者のリスク論には到底対抗できないだろう。

リスクなる耳慣れない字句も急速にあちらこちらで目にし、耳にするようになった。
今後、環境リスク学は確実に重要な位置をしめてくる。

最近のBSE問題にも触れられているが、リスク概念なしには正しい理解も、解決もありえない時代になった。



4.  とても良い kaz-pさん 書き込み日: 2004年10月08日

ライブ!

著者の、自ら「問題」と設定してきた問題に対して、
想像を絶する真摯さで取り組んできた経験が、
ライブ感あふれる語り口で述べられており、
まさに「最終講義」にふさわしい内容です。

ことほどさように自分の信念に正直に生きてきた過程には、
恐らく文字に表しきれないほどの覚悟が要ったものとの想像は、
難くありません。

著者の取り組んできた問題の性質上、
本書で述べられている意見そのものが永遠不滅のものとは
思われませんが、その取り組んできた姿勢は、
おそらく永遠不滅のものとして語られ、継承されていくべき、
との思いを持ちました。

あらゆる分野の研究と、環境問題に取り組むことを
志す全ての人にお勧めです。



5.  とても良い カスタマー8さん 書き込み日: 2006年11月10日

数字と現場に立つ環境論

一般に、環境問題を語る際には主に(1)「(事実に基づいた)数字(統計)」により語る(2)「現場(の人と物)」に関する知識により語る(3)「形容詞」に基づいて語る、という3つのタイプがあると思います。

そして、現在日本で流通している環境問題に対する語りの多くは実は本質的に「形容詞」に基づいているのではないかと私は思っています。例えば、本屋においてある「環境本」には「優しい」「美しい」「恐ろしい」「危機」等の形容詞が踊り、さらに「事態とは関係ない数値」「極端な事例の一般化」「日常感覚の拡大解釈」などの禁じ手が形容動詞的に使われ「比類なく恐ろしい環境危機からかけがえのない美しい地球を守るために地球に優しく」なることがしばしば推奨されていたりします。

「比類なく恐ろしい環境危機からかけがえのない美しい地球を守るために地球に優しく」と唱えることは気分が良く、正義と言えますし、形容詞や形容動詞は論破されることがないですから、身も安全です。

しかし(例えば)「美しい国」と唱えれば自動的に美しい国が達成されるわけではなく、その達成を実効的な形で追い求めるためにはその「形容詞が意味するところの内実」を「数字」や「現場」に落とし込んでいかなければなりません。

そして、本書(の前半)は、中西準子が「数字」と「現場」に立脚し環境問題に対して切り込んできた人生の一代記なのです。

中西準子は「地球に優しく」などとは決して言いません。「形容詞」ではなく「現場」と「数字」の威力をもって圧倒的不利な状況を次々にひっくり返していきます。その姿は、女性が圧倒的マイノリティであった医学と政治の世界において「現場」と「統計」を武器に切り込んでいったナイチンゲールを彷彿とさせます(ちなみにナイチンゲールも(看護に「感傷的イメージ」を一切持ち込まない)徹底したリアリストかつ一流の統計学者だったのです)。

本書の後半は「数字」に基づいたリスク学の考え方が理解できるお勧めの内容です。「耳に心地よい形容詞」は存在しないため、嫌悪感を感じる読者もいるかもしれませんが、少なくともリスクを数値的に定量化することの功罪について自分なり思考を巡らせてみる良いきっかけになるのではないかと思います。



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