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波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る

波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る

とても良い / 口コミ件数 : 16


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1.  とても良い 至高の豚さん 書き込み日: 2008年10月13日

元「マエストロ」からの反論

本書は2008年9月に刊行された「The Age of Turbulence」のペーパーバック版に新たに
書き下ろされたエピローグであり時期は2008年6月前と考えら以下のような内容です。

(1)サブプリム問題の発生
グりーンスパンはサブプライム問題を、投資銀行のリスクマネーの需要により生み出され
たものとしており、不動産バブルとサブプライムローンを証券化し供給した銀行側には、
特に言及していないところが特徴的です。

(2)影響の認識
また、銀行と証券が同時に厳しい打撃を受ける事態が80年ぶりに起きたと言っていますが、
同時に、アメリカ経済は日本のバブル崩壊時程深刻ではない、と当時はかなり甘い認識を
していた様子が窺えます。

(3)リスク管理について
そして、今回問題となったリスク管理については、景気循環モデルと金融を扱うモデルは、
「陶酔の時期」と「恐怖心の時期」の間で大きく変動する人間本来の反応という説明変数が
欠けており、リスクを十分捉える事ができていない。としており今後もバブルの発生、崩壊
がありうることを示唆する内容となっています。
これは、ソロスの投資家と市場は相互に影響し合うため、均衡水準で落ち着くことはない。
という考え方と表現こそ違いますが、本質的には非常に似た考え方だと思います。
そして、FRBでは民間のリスクを民間以上に把握することはできず、金融機関のリスクは、
民間のリスク管理の仕組みを改善するしかない、としています。

この本は元「マエストロ」からの反論のようです。非常に貴重な一冊だと思います。



2.  とても良い TKMTさん 書き込み日: 2008年10月19日

世界経済危機の諸相を理解するための濃密な手引書=エピローグ!

 60頁に満たない本書の後半には、「世界経済はとてつもなく複雑になり、ひとりの個人やひとつの集団では、どのように機能しているかを完全に理解することができなくなっている」(51頁)とある。むろん本書によって、すべての危機の諸相が考察されているわけではないが、それでも本書を精読する価値は十二分にある。そして繰り返し読むべき本だ。訳文もまことに周到という印象である。

 論じられているのは、アメリカ発のサブプライム問題だけではない。世界経済危機の根源的要因と今後の見通しが詳しく凝縮的に書かれている。「混迷」、「危機」、「幻滅」、「長期停滞」、「不確実性」の時代など、多くの呼称が多くの論者によって用いられているが、本書の主題はズバリ「波乱」の時代。著者は、信用収縮とその悪化をもたらした(証券化された)サブプライム・モーゲージ市場の混乱に対して、信頼しうる経済対策が講じられなかったことに危機の深化の主因を見出しているが(26頁)、それは単にアメリカ住宅市場の混乱という局所的問題にとどまらず、われわれの基本的な市場観とそれを支える経済理論の反省をも迫るものであるといえるだろう。

 たとえば著者は次のように主張している。「景気循環と金融を扱うモデルではいまだに、人間本来の反応を十分にとらえることができていない。陶酔感と恐怖心の間で大きく変動し、何世代にもわたって何度も繰り返し、過去の経験から学んでいることを示す事実はほとんどみられない」(37頁)。ソロスが指摘するごとく、新たな金融市場理論なるものが要請されているのではないか。現在の支配的な経済理論は経済物理学を基盤としているが、そうした体系では人間の衝動や情感といった諸要素を適切に組み込みえない。ケインズの名前が登場したのも示唆的だ。グローバル化した世界市場資本主義の動向は多くの人の関心事である。本書はそのための優れた指針を提供している。



3.  とても良い 唐沢 大さん 書き込み日: 2008年10月14日

30分で分かる100年に一回の危機

なんでいま世界経済がこんな大変なことになっているの?ってすごく気になるんだけど、いくら新聞とか雑誌とか読んでもはっきり分からなかったことがこの薄い一冊でよくわかった。グリーンスパンに言わせると、サブプライムはたまたま経済のひずみが吹き出たとところであって、これが究極の原因ではない。

<サブプライム・モーゲージが原因になっていなければ、他の金融商品か市場で問題が発生し、原因になったのは間違いない。世界的にリスクが割安に振れすぎていたことが基本的な問題である。>(p. 10)
<われわれが使うモデルは、リスク・モデル、経済モデルともにたしかに複雑になり高度になってきたが、世界経済の現実を左右する重要な変数のすべてをとらえるには、まだまだ単純すぎるのだ。[…]リスク管理に最先端の統計モデルを使っていても、これほど惨めに失敗する理由の説明としてもっとも信頼できるのは、モデルを構築する際に基礎になっているデータが、陶酔の時期と恐怖心におそわれている時期の両方にわたっていることである。>(pp. 34-35)

ということのようだ。リスク管理モデルは確かに進化して、それが原因で世界の金融市場が大きく膨らんだんだけど、実際はそのモデルはたまたまうまく行っていただけで、完全なものではなかった。で、不完全さが露呈したときには金融市場はあまりに大きくなっていた。グリーンスパンは、この危機を100年に一回の危機と呼んでいる。

たまたま一緒に読んでいた竹森俊平『1997年ー世界を変えた金融危機』はグリーンスパンの功罪に言及しているので、この二冊だけでこの10年の世界の様子がよく分かる気がする。1997年と現在と起こっていること(流動性の危機)は同じである。規模が違いすぎるだけで。



4.  とても良い 桐ちゃんさん 書き込み日: 2008年10月11日

日本は反面教師?

いや〜、80歳を超えてるのに頭が切れること。
ちょうど米国証券会社大手リーマン・ブラザーズ破綻の5日前にアメリカで出版された書籍。
その後の米国の対応を予測しており、この本が米国の対応のマニュアルとなったのではないかとも思えます。
すごい!
同氏が本の中で日本について2箇所ほど触れられています。
「アメリカ経済は、当時の日本に近い状態には全くなっておらず、そうなるのを何としても食い止めなければならない。」(P20)
「積極的に評価損を計上し、資本増強に成功している点は、日本のバブルの崩壊後の状況とは好対照である。」(P31)
日本はあくまでも反面教師のようです。
いずれにしても今を読み解く書物として、お勧めです。



5.  とても良い 21世紀のケインジアンさん 書き込み日: 2008年10月11日

「100年に一度の金融危機だ。」というグリーンスパンの警告

本書は、最近の金融危機を受けて、グリーンスパンがベストセラー「波乱の時代」出版の後、緊急に書き下ろしたものである。

まず、サブプライムローンを端緒とした現在の金融危機の先行きについて述べているが、
この金融危機は実体経済に波及し、金融経済・実体経済が一体となった動乱の時代の
到来を彼は予告する。

FRB議長を退任しても、彼の長年の習慣となっている、様々な経済データ
の分析は欠かしていないようである。そして、そこから読み取れる必然的な
結果として彼は100年に一度の金融危機とその後の経済危機を強く示唆する。

FRB議長という役職から解放されたためか、FRB議長時代の反省も率直に述べているし、
これから起こり得る金融・経済の動乱についても、一個人としての意見を本音で
訴えていることは本書の大きな魅力である。

この本に述べられている内容を真正面に受け止め、これから起こり得る
金融・経済の大混乱を少しでも、小さくすることができるようにと、彼の
後任である世界大恐慌研究の権威者バーナンキ現FRB議長に期待するところ
大である。

なお、本書の理解をより深めるためには、ソロス著「ソロスは警告する」、副島隆彦著「恐慌前夜」、金子勝著「世界金融危機」、藤原直哉著「2009年世界大恐慌」、竹森俊平著「資本主義は嫌いですかーそれでもマネーは世界を動かす」、そしてグリーンスパンの失策を強く批判するラビ・バトラ著「2010年資本主義大爆裂 近未来10の予測」が参考になると思われる。

上記のいずれの本にもレビューを書かせていただいたので
ご一読いただければ幸いである。



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