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世界経済危機の諸相を理解するための濃密な手引書=エピローグ! |
60頁に満たない本書の後半には、「世界経済はとてつもなく複雑になり、ひとりの個人やひとつの集団では、どのように機能しているかを完全に理解することができなくなっている」(51頁)とある。むろん本書によって、すべての危機の諸相が考察されているわけではないが、それでも本書を精読する価値は十二分にある。そして繰り返し読むべき本だ。訳文もまことに周到という印象である。
論じられているのは、アメリカ発のサブプライム問題だけではない。世界経済危機の根源的要因と今後の見通しが詳しく凝縮的に書かれている。「混迷」、「危機」、「幻滅」、「長期停滞」、「不確実性」の時代など、多くの呼称が多くの論者によって用いられているが、本書の主題はズバリ「波乱」の時代。著者は、信用収縮とその悪化をもたらした(証券化された)サブプライム・モーゲージ市場の混乱に対して、信頼しうる経済対策が講じられなかったことに危機の深化の主因を見出しているが(26頁)、それは単にアメリカ住宅市場の混乱という局所的問題にとどまらず、われわれの基本的な市場観とそれを支える経済理論の反省をも迫るものであるといえるだろう。
たとえば著者は次のように主張している。「景気循環と金融を扱うモデルではいまだに、人間本来の反応を十分にとらえることができていない。陶酔感と恐怖心の間で大きく変動し、何世代にもわたって何度も繰り返し、過去の経験から学んでいることを示す事実はほとんどみられない」(37頁)。ソロスが指摘するごとく、新たな金融市場理論なるものが要請されているのではないか。現在の支配的な経済理論は経済物理学を基盤としているが、そうした体系では人間の衝動や情感といった諸要素を適切に組み込みえない。ケインズの名前が登場したのも示唆的だ。グローバル化した世界市場資本主義の動向は多くの人の関心事である。本書はそのための優れた指針を提供している。
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