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資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

良い / 口コミ件数 : 20


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1.  とても良い 21世紀のケインジアンさん 書き込み日: 2008年10月12日

金融恐慌に対する各国中央銀行、政府の対応の見通しを教えてくれる貴重な1冊

本書は世にあまたいる経済学者、エコノミストの中でも、私が高く評価している著者が、これまでの世界の中央銀行、財政当局の動きを深く・鋭く分析し、金融危機やそれに伴う今後の見通しや危機を回避するために必要とされる政策までを示唆する貴重な一冊。

まず、今回の金融危機の発端となったサブプライム問題については渾身の解説がなされている。

本書の第2部で展開される、数年前の中央銀行幹部等による会議録の披露部分は非常に驚かされるとともに、とても重要な部分である。なぜなら、彼らは、その時、既にやがてサブプライム危機が起こるであろうことを共通の認識としているからである。

著者は、1929年に端を発した世界大恐慌そしてそれが日本に波及した昭和恐慌についても素晴らしい分析を行っており、現在の状況においても、サブプライムやCDSがどうなるかと言った、一種、皮相的な分析だけではなく、この問題が恐慌に結びつくのか、そして、それが資本主義の構造にどのような影響をもたらすのかといった、深い問題に対しても思いをめぐらせている。

今、世界同時恐慌の淵に立っている我々に、著者からこの時期に本書が出されたことの意義は
非常に大きいものである。現在の状況から今後の資本主義の行方まで考えるために一人でも、
多くの人に本書を読んでいただきたい。

なお、著者とアプローチ方法は異なるものの著者と資本主義に対する問題意識を共有していると思われるラビ・バトラ著「2010年資本主義大爆裂!近未来10の予測」、藤原直哉著「2009年世界大恐慌」、船井幸雄著「2009年資本主義大崩壊」も読んでいただければ、読者の理解はさらに深まることと思う。これらの本についてもレビューを書かせていただいたので、ご一読いただければ幸いである。



2.  とても良い グラムドリングさん 書き込み日: 2009年01月27日

この人の本を読むと経済学が面白く感じる

 「経済論戦は甦る」ではもやもやしていた頭の中がだいぶ整理された感がありましたが、本書でもかなり今回のサブプライムローンに関わる論点や構造、またどんな経済理論がこの状況を説明しようとしているかなど、大変勉強になりました。竹森氏は難しい経済論文をわかりやすく説明する天才と今回も感じました。そして改めて経済学は面白いなあというのを強く感じた次第です。本書の後半に書かれていましたが、多くの人々が資産価格が「ファンダメンタルズ」を大きく超えるバブルの存在は認めるが、逆のパターンは暗黙的に認めないという議論、なるほどと思います。また安易に「ファンダメンタルズを超えた・・・」と議論している人は確かにまゆつばで、じゃあファンダメンタルズを超えたとなんであなたは判断したの?と聞いてみたい気もします。
 また市場自由主義を信奉する人々は今回のサブプライム危機をきっかけに規制の機運が高まっていますから、心底落胆しているんでしょうけれども、かのチャーチル元英国首相が「民主主義はこれまで試された他の制度を除けば最悪の政府の形態である」という意味深の言葉を述べていますが、まさに「市場自由主義も他の制度(共産主義など)を除けば最悪の経済制度である」という謙虚な気持ちで今後改善していかなければならないという意識が必要だと思います。



3.  とても良い zin496さん 書き込み日: 2009年02月18日

買って損はない!

日本を代表する経済学者竹森俊平氏の最新作!
国際経済の専門家が書いた本である。日本人が書いた、世界金融危機の解説本では現在、最高の本だろう。

多少の経済の予備知識が必要となるが、サブプライムの不確実性を複数の目覚ましに例えているところは、さすが大学で教鞭をとっている教える専門家だと感じさせ、わかりやすい。
もちろん、わかりやすく事実だけをなぞっているだけでなく、経済学者という見地から今回の金融危機の対処方法を提示している。

日本人で経済に世界金融危機に興味のある方なら必読の一冊!



4.  とても良い KAZZTさん 書き込み日: 2008年10月26日

この本にはサブプライム後の秩序を考えるヒントが多い

 リスク管理と呼ばれていたものは、不確実性によって崩壊した。あくまでモデルに過ぎない経済学、モデル内のリスクは計算できても、現実の不確実性を内包して思考出来ている訳では無いのだ。特に過去のデーターが少ない新たな挑戦をする時には、はっきりと、そう言える。
 過剰な成長を要求しないことが、現在の世界経済の歪を直すことになる、時価会計は極めて強くバブルの発生と崩壊の要因になった、時価会計は止めるべきだ、これらの主張に僕も強く賛同できる。
 僕は守銭奴たちの暴走、それを煽る経済人たちに嫌気が差していた。けれど、今回の世界中の政府のすばやい対応に少し安心できた。これもラグー・ラジャン、ヒュン・ソン・シンという優れた研究の成果が存在していたからだろう。今回の問題は1930年の大恐慌よりはマシなものになるだろう。(まだ、終わってないし、まだ、正念場もあるかもね)
 人類は思考を振り子のように揺らしてしまったり、ちょっと忘れっぽいところもあるが、少しづつは進歩してるんだと思う。



5.  とても良い モワノンプリュさん 書き込み日: 2009年03月08日

読ませる。必読。ただし……

 08年9月8日刊行の本書の終わり近くで、著者はサブプライム危機の08年春までの展開を「流動性の危機」と性格づけた上で、08年後半以降には危機の「構造的」な側面が顕在化するだろうと予測している(p259)。9月15日のリーマン破綻から、まさに予測は現実化していくわけで、著者の慧眼を賞賛すべきなのかもしれない。
 しかし本書の柱をなすのは、あくまでも「流動性」の問題である。
 本書第2部は、05年8月の米国での某シンポジウムでグリーンスパン批判を展開したシカゴ大ラジャン教授の報告をめぐる応酬を辿る内容。その内のプリンストン大シン教授のコメントから、ロンドンのテムズ川に架けられた歩道橋の橋開きの式典で、橋が激しく振動して閉鎖された話が引用されている(p203)。そこでは何万人もの歩行者の歩行がどのような仕組みで同期してしまうかが語られており、これはもちろん、「金融システムに対する衝撃が内生的に拡大していくメカニズム」(p205)の比喩だ。
 上記の橋にはショック・アブソーバーが取り付けられたらしく、これは経済でいえば「あまりにも回転の速い市場取引に歯止めを掛けるための規制を設ける」(p209)ことに該当するという。また歩行者に歩行器の類を付けさせてバランスの崩れを防ぐ対策を採るなら、これは「金融機関のインセンティヴ構造に対する規制」(p210)にあたるとする。つまり「衝撃の拡大」を防ぐか、「衝撃」そのものを防ぐかという問題設定がなされているのだが、そもそも橋の設計ミスや手抜き工事があったのではないかという点は問題とされない。しかしサブプライム危機とは、実はそういう問題ではないのか?
 著者は第1部で、「住宅バブル」や「ITバブル」に関する連銀の施策を「金融資産市場における不均衡を解消し、デフレを回避するための『正当防衛』だった」(p104)として免罪しようとする議論を紹介している。いや、この第1部の冒頭でのジョン・ローについての寓話から読み取れるのは、根本的には貨幣そのものがバブルであるという立場であり、第3部での「ファンダメンタル」を「現実にそれを認識することはまず不可能」な「空虚な言葉」(p258)とする考え方に直結している。そしてこれは、かつて一世を風靡した「シニフィアンの戯れ云々」というポスモ思想との親縁性が濃厚ではないか。
 ただ本書には、著者のある種の譲歩も感じられるように思う。
 確かにこの著者は以前から「流動性」を中心テーマとして掲げていた。しかし、すでに上記のシンポジウムでラジャンの発表を聞いてから約2年後の07年10月に刊行した『1997年――世界を変えた金融危機』では、おそらく脱稿前後の8月にサブプライム危機が発生したことを受けて微妙な留保はあるものの、基本的にはグリーンスパンの施策を肯定していたのに対し、本書では、むしろグリーンスパン批判の議論を前面に押し出している。そして「それでもマネー(流動性)は世界を動かす」、というワケだ。
 「流動性」の重要性は分かった。で、しかし著者に危機の「構造的」側面を論じる準備はあるのだろうか?



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