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価格 : 1,995 円
それまでの派閥連合体という自民党政権下の議会制民主主義が抱えた意志非決定のメカニズムが、小泉政権によって根本的に変えられたことを真摯に考察している。そして、それが単に小泉本人のキャラクター分析などではなく、自民党本部が呑まなければ何も動かなかったという「双頭の鷲」のシステムが(全会一致の総務会!)何も変えられない状態を生みだしていたことへの反省から、政権交替可能な二大政党制を目指した小選挙区制を生みだし、小選挙区制度に「総裁や党執行部が独裁的な権力を持つ」と最も反対した小泉が、実は橋本政権以降、着々と強化された首相の権力基盤を武器に、一気に医療制度や道路公団さらには郵政まで変えてみせたという、皮肉な流れを大河ドラマのように浮かび上がらせている。 著者によると小泉が郵政解散に打って出た背景には、三木首相や橋本首相が解散権を公使しなかったことへの歯がゆさだったとしている。小選挙区によって派閥が融解し始めた時期に首相となった小泉は、派閥の思惑など関係なく解散権は行使できたし、「衆院議員全員のクビを一瞬にして切ることができる衆院の解散権」(p.320)という内閣総理大臣しか持っていない権力の本質をとことん考え抜いた末のことだとしているが、もっと師である福田や岸の影響なども考え合わせるべきだとは思う。小泉首相は個人的な取材はあまり受け付けないためからなのか、そこらあたりの取材不足がやや残念。最も心配なのは、ポスト小泉よりも、官邸主導の基盤となる経済財政諮問会議をうまくまとめるポスト竹中の存在だとか、官邸を支えるスタッフの体制整備だ、なんていうあたりも新味はあった。
本書は、筆者が日経ネットで書き続けてきたコラムの集大成。 渇いた筆致で淡々とつづられるスタイルは、内容と相まって 個人的には好感。固有名詞も多いため、読みやすくないけれど、 読み応えがあります。 他の方の批判はわかるものの、小泉改革は 突然変異的に現れたものではなく、小選挙制導入、橋本内閣に おける行政改革などを経て築かれてきた素地と、小泉の個性の 相乗効果でできたものであるという点にこそ、筆者の主張が あるのでは。 政治に興味があるのなら、読んで損はない本です。
系統は中公新書の一冊である『首相支配』と 同一です。 が、この本とそれの違いは『首相支配』が 新聞や書籍等の公になった事象から、研究者である 著者が権力の変遷やシステムの変化を捉えたのに 対して、この本は内部の情報を知るジャーナリスト によって−裏側をも含めて−書かれたという点に 拠ります。 小泉首相がこれだけの権力を振るえるように なった原因を、細川連立内閣と野党であった 自民党による小選挙区比例代表並立制の導入や 橋本行革の実施等に見ている点も『首相支配』と 同じです。 しかし、一方は288pの新書、他方は406pの ハードカバーです。 その分だけ盛り込める情報はこちらの方が 多くなります。 政治家や官僚の生々しいやり取りは、こちらの 方が伝わってきます。 又、小泉首相を支え続けた竹中総務大臣の存在を 考えると「ポスト竹中」の存在こそ重要であるという 意見や、内閣と与党で権力が二分化していたものが やっと一本化されつつある(つまり責任の所在が 明確なった)と言う筆者の見解も傾聴に値すると 考えます。 巻末の解説にあるように、政党を選ぶ選挙= 小選挙区制だからこそ、有権者の資質が問われる のです。 その資質を問われる以上、最新の政治の仕組みを 知ることも、また責任ある有権者の姿勢だと 思います。 故に時間を割いてでも読むに値する一冊と 考える次第です。
常人には理解しがたい思考と行動をとる故、しばしば「変人」と称される小泉純一郎。「官邸主導」を読んで、小泉の思考回路が少しは―あくまで少しだが―判ったような気がした。この本の随所で、内閣総理大臣の権力の源が人事権と解散権にあることが強調されている。この両者を駆使すれば首相は大きな権力を発揮することができるはずなのだが、小泉以前の首相はその点が徹底していなかった、とうことが本書を読めばわかる。 総裁選において郵政民営化などのマニフェストで自民党議員に踏み絵を踏ませ、賛成するものにのみ役職を与える。小泉降ろしの動きが起こったら解散権を行使する。小泉は最初からこの方針を貫き、いささかもぶれる事が無かった。権力の維持、強化という面では全くの正攻法だ。小泉の「変人」たるゆえんは、この基本の貫き方が常人を遥かに超えて徹底していたということだ―本書では例えば、解散権の行使に躊躇した三木武夫と小泉を対比している。解散を想定して、自分に忠実な武部勤を自民党幹事長に据えるなど、小泉はきちんと計算して動いている。権力に関して小泉は冷徹なリアリストなのだろう。 本書は小泉の政策(郵政民営化や高速道路の民営化や靖国問題など)に対する評価は下していない。また本書を読んでも、なぜ小泉が―その気になれば首相の座に留まり続けることもできたろうに―あっさりと退陣してしまったのかは判らない(正に「変人」だ)。しかし、小泉純一郎という人間の権力に関する冷徹なリアリストぶりは、実に良く判る。
真っ赤な装丁とキャッチイなタイトルからはやや意外な重たい内容。小泉純一郎を分析するのに「ポピュリズム」とか「ワンフレーズポリティクス」といったお決まりのレッテルは一度も登場しない。これも予想外で、着眼点はよしあしは別にしてきわめて独創的だ。 小選挙区制の導入とマニフェスト選挙、それに経済財政諮問会議と言った政治や行政の仕組みの改革が過去10年かかって定着し、じわじわと派閥政治や官僚主導の政策決定の基盤を掘り崩してきたこと。それを小泉純一郎が持ち前の政治的勘で見事に使いこなし、官邸主導の新たなメカニズムを皆に見せ付けたこと。日本の政治を大きく俯瞰する有用な視点が得られる。 何より小泉本人に迫り、豊富な肉声で「ラマンチャの男」の本質を描ききっている。なぜ著者は日経紙上でもっとこの手のインサイド記事を書かないのか。本だけというのはズルイ。