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遊牧民から見た世界史―民族も国境もこえて (日経ビジネス人文庫)

遊牧民から見た世界史―民族も国境もこえて (日経ビジネス人文庫)

良い / 口コミ件数 : 11






クチコミReview一覧
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1.  とても良い ゴブリンEさん 書き込み日: 2006年02月22日

文庫になった名著

高名なクビライ・カーンの専門家、杉山正明氏の名著が文庫になって帰って来た。
西洋中心史観も中華思想も飛び越えた、杉山史観の面目躍如だ。
私がこの本を最初に手にしたのは8年程前だが、今でもその時の新鮮な驚きを忘れられない。今までの「世界史」に対する様々な鬱憤の数多くが、この著作で晴れてしまった。
ことにこの著作で大きく取り扱われているのは匈奴だが、匈奴がこんなに世界史上で大きな役割を果たしているとは、私は夢にも思わなかった。
この本に対する最大の不満は、著者が自覚して言及している通り、中近東についての記述不足だが、それについてまともに書けば、多分この二倍の分量になっていた事だろう。
世界史の全貌を自分で見渡した様な爽快な錯覚を覚えて仕舞うのが最大の難点だが、西洋中心史観や中華思想の様な悪い意味での古くて視野の狭い歴史観への未練を断ち切り、より客観的な世界史観で歴史を学ぼうとする者には、必携の一書である。


猶、著者の歴史観をより正確に知って置いた方が後々の為に良いので、講談社現代新書「モンゴル帝国の興亡」(上・下)も合わせて買う事を強く御勧めする。



2.  とても良い モチヅキさん 書き込み日: 2005年01月06日

ユーラシア世界史による近代の相対化

 1952年生まれのモンゴル帝国史研究者が1997年に刊行した著書の文庫本化。本書の特徴を列挙すると、第一に従来の西洋中心主義的「世界史」観を批判し、中央アジア「沙漠」(「砂漠」ではなく)の遊牧民(非定住者)に視点を据えたユーラシア世界史を提示することによって、「民族」や「国境」といった概念を相対化している。第二に、それゆえに記録を残す文明と残さない文明との違いを強調し、史料論に関する記述も多い。第三に、著者の専門であるモンゴル帝国について述べるための前提として、スキタイや匈奴などの「遊牧国家の原型」から話を始めている。高校世界史で習った懐かしい名前が幾つも並ぶ。第四に、モンゴル帝国による「ユーラシア大交易圏」の成立が重視される。第五に、しかし経済偏重の姿勢には著者は批判的であり、軍事力の意義についても直視するよう提言する。第六に、コラムや備忘録を始めとして、さまざまなエピソードが満載されており、読み物としても楽しい。第七に、「ごく素直な普段着のことばで」「細部にたちいることは、むしろなるべく避けて」書かれたために、どこまで学問的に信用してよいのか、いささか戸惑いを禁じえない。最後に、ややモンゴルを持ち上げすぎている感や、事件史偏重の感もあるが、概して説得的に感じられた。



3.  とても良い 田中 正裕さん 書き込み日: 2000年11月02日

世界史観が根本から変わる!

西欧中心主義の現代社会に対する挑戦状。 従来は資料の少なさや、偏見などから取り上げられることの少なかった中央アジアを中心としたユーラシアの遊牧民の視点から世界史を見た本である。限られた資料の中で、筆者は現代では埋もれてしまった遊牧民族を詳しく掘り下げる。 歴史好きにぜひ薦めたい一冊。歴史観がかわる一冊です。



4.  とても良い 弘田幸治さん 書き込み日: 2001年02月13日

もうひとつの世界史、もうひとつの未来

 アケメネス朝ペルシャとスキタイの戦い。ヘロドトス『歴史』で語られる挿話のようなこの戦いは、実はユーラシア文明史の真の幕開けだった? ペルシャ型文明とスキタイ型文明はその後ユーラシア各地で勃興し、戦いと和解を繰り広げる。そのなかから両者を混交・統一・昇華した究極の大文明が生まれようとしていた……。ユーラシアの極西から叙述された“世界史”とはまったく異なるもうひとつの世界史。発展史観から外れてみると見えてくるのはもうひとつの未来なのかも。



5.  良い 石岡岩石さん 書き込み日: 2005年11月18日

近代文明の再考を迫る遊牧民の歴史

もし、著者の説が正しければ世界史の理解を変えさせることになる。著者の説は、最近の発見を含む、多国に亙る文献や考古学遺跡等の学術的な根拠によるものだ。まだ推定の域を出ない部分も多いものの、この説はいつの日にかはきっとスケールの大きな歴史観となって人々の知性の核になるかもしれない。
 人類の文明は所謂四大文明発祥の地から始まり古代、中世から最終的には西欧のルネッサンスや大航海時代を経て今日の先進文明社会が形成されたというのが常識的理解であった。しかし、その歴史の重要な変化の時期になると北や東の野蛮な地帯からいつも出てくるめっぽう強い不思議な遊牧民たちの集団については深い説明を聞いたことが無かった。彼らは、紀元前千年ころから二千五百年間程に亙りスキタイ、フン、匈奴、鮮卑、エフタル、キタイ、ウイグル、突厥、等々、実に様々な名前で文明国と称する側の記録に残されている。そして最後の仕上げに登場するのはその野蛮さで西欧に有名な蒙古である。
 著者は、実は彼らは非文明人どころか、一続きのアフロユーラシア大陸という巨大で豊穣な乾燥草地において、強力な軍事力はもちろん、高い文明と経済力を持った国家群の連鎖であったという。中国の王朝史観や西洋文明偏重史観は今日の歴史観を誤らせているとも指摘している。



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