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暴走する資本主義

暴走する資本主義

良い / 口コミ件数 : 22


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1.  とても良い 柊さん 書き込み日: 2008年09月11日

大きな問題提起

米国の資本主義と民主主義の保たれていた均衡が経済のグローバル化により崩壊する。
経済の力が消費者と投資家の権力を増大させ、「超資本主義」が民主主義を蹂躙する。
超資本主義が優勢になればなるほど、格差の拡大、雇用の不安定、環境問題など
その負の部分が社会に蔓延するようになる。これらのプロセスが実によく描かれている。

超資本主義が勝利した米国の状況が今や日本やEUでも起こり始めている。
資本主義の負の実相をよく表していて、この問題提起に対して民主主義が資本主義との
折り合いをどのように付けていくのか、深く考えさせられる一冊だ。



2.  とても良い けるよさん 書き込み日: 2009年05月17日

いったい何が起きているのか。

この本では、昨今の世界的金融危機やグローバル化による格差の拡大などに関し、
現在の金融システムの中において、資本主義にいったい何が起きているのかを、
感情的な悪者探しに走ることなく、冷徹な視点で論理的かつ説得的に分析を
展開していってくれるため、頭の中が整理でき、問題の所在がよく理解できます。

著者の主張を一言で言ってしまえば、現在の状況は、超資本主義化により
民主的資本主義が衰退してしまった結果である、ということです。

それは、容赦ないリストラを断行する企業や、莫大な報酬を受け取るCEOなどが
昔に比べて貪欲になったからというわけではなく、様々な条件が重なった結果
なるべくしてなったということです。

そして、その担い手の最も重要な位置を占めるのが、投資家であり消費者である
我々であり、決して他者にばかり責任を押し付けていられる立場ではない
という厳しい事実をつきつけられます。
この本では、アメリカの状況について述べていますが、先進諸国のどこにでも
当てはまることであり、日本でも全く同様の現象が現れているのは明白です。

50年代のアメリカでは企業は寡占状態にあり、競争は意図的に抑えられ、高い
収益を得られる代わりに労働組合は強力で、賃金や福利厚生は高い水準で維持され
ていました。それが70代になり豊かさが広がると状況は一変し、企業の力が弱まり、
代わって、投資家や消費者が力を持つようになってきます。

この動きを促進したのは技術革新であり、特にコンテナを中心とする流通の革新と
通信の発展による情報革新が、社会と経済の様子を劇的に変えました。
競争を余儀なくされた企業は規制緩和を求め、政治にも圧力を掛けるようになっていき
ます。さらに、その後のインターネットによる金融取引の簡素化や、金融に関する規制
緩和、そして様々なタイプの金融商品の開発で金融市場は膨大に膨らみ、その後の金融
破綻へと突き進んで行くことになります。

消費者は少しでも安い商品を企業に求め、投資家は少しでも高い配当を企業に要求し、
応じられない企業は容赦なく他企業へと乗り換えられていき、企業は否応なく
厳しい競争へと駆り立てられ、その結果、容赦ないリストラを断行することになります。
皮肉なのは、リストラされる労働者の別の顔が、企業を競争に駆り立てる消費者でも
あるという二面性です。

地元の商店で買わず、郊外の大型ディスカウントショップで安く買うようなことを
しておきながら、企業にのみ倫理性を求める行為は公正でないと著者は言います。
さらに著者は、自分の行動が社会に与える影響を考慮する市民としての自覚を促し、
そして、激しい競争の中で企業に取り込まれた政治を、市民の手に取り戻す必要性を
説きます。この辺のところはアダム・スミスの、公平な市場ためには人々は
道徳的でなくてはならない、という言葉を思い出させます。

いかに企業が非情であっても、それはあくまで合法的行為であり、合理的に利潤最大化の
行動をしているに過ぎず、そのような企業の行動を変えるには法律を変えるしかなく、
そのためにはまず、企業を政治から引き離すことが必要であり、さらに、
企業を人格のある存在として扱わず、あくまでも人間が合意して社会的決定を
行っていく、真の民主主義の実現が必要であると、著者は訴えます。
この辺は、日本ではさしずめ官僚からの政治の奪回となるのかも知れません。

この本を読んで私が感じたのは、今ある状況はなるべくしてそうなっており、
その状況を変えたいと思ったら、なぜそうなっているのかを、目先の問題に囚われず、
広い視野で、かつ厳密に見ていくことの大切さです。
でないとただ文句を言うだけで、何が起きているのかわからないままに、自分の望む
方向とは違う方へと流されていってしまうのだと思います。
システムの変革と自分自身の変革は、どちらも欠かせない対の要素なのだと思います。

この本は私にとって、現在の経済状況から自身を見つめなおさせるような、意義深い
内容の本でした。



3.  とても良い orvietさん 書き込み日: 2009年04月10日

労働者を苦しめる消費者と投資家は結局自分自身

消費者と投資家がどんどん力を持ち始め、少しでもお得な取引を望む。そのため企業やそこで働く労働者にしわ寄せが行き大変になる。結局、その労働者自身が消費者、投資家だったりする。なんというジレンマ。恐るべしsupercapitalism。



4.  とても良い 21世紀のケインジアンさん 書き込み日: 2008年11月01日

経営ビジネスという観点から会社の方向性を決める立場の人にはぜひ読んでもらいたい本。

 アメリカ発の金融クラッシュが現実のものとなりつつある今日。
 なぜそうなったのか、本質的な問題にひとつの答えを出しているのが本書である。
 そのことを、クリントン政権での労働長官、そして、今や、オバマ候補の政策ブレーン
 というアメリカの政策に大きな影響力を持つ著者が述べていることの異議が大きいと思う。

 異常なまでの超資本主義国家を作り上げ、自ら破綻の道を歩んでいるかのように
 感じる現代のアメリカ。本書を読んで感じるのは、国家も組織もバランスを
 崩すと持続可能とは程遠いクラッシュに向かってしまうのだなという点である。
 経営ビジネスという観点から会社の方向性を決める立場の人にはぜひ読んでもらいたい本。



5.  とても良い kabukakuさん 書き込み日: 2008年07月28日

もやもやとしていた現実感覚が、急速に研ぎ澄まされ、そして構築されていく世界観

読書の目的:
 原著「Supercapitalism」の評判の良さをBlogや雑誌で見聞きして、読んでみたいと思っていたところ、書店で翻訳本を発見。勝間和代さんの推薦文が帯に載っていたこともあり、購入しました。原著の評判が良い理由を知りたかった。

読後感、感想:
 もやもやとしていた現実感覚が、急速に研ぎ澄まされ、そして構築されていく世界観。
 
 民主主義の代表である「市民」、「労働者」が、資本主義の代表である「消費者」、「投資家」にないがしろにされていく現実を表す。いずれの役割も"私たち"であることに変わりはないが、超資本主義に飲み込まれていく民主主義を支え、対処していくのも"私たち"である、という理解です。
 
 個人として体感していた"現実風な出来事"が、具体的な事例・分析により的確に表現、叙述されている。この本を読んでいる最中でさえ、民主主義の代表である「市民」、「労働者」たるよりも、「消費者」、「投資家」として『いかに現実に向き合うか、行動を選択するか』ということを考えていた。それほどまでに、"超資本主義"は私の身体の中の現実になっている。

 本書は、資本主義と民主主義のパラドックスを説き、資本主義の発展について触れ、"私たち"に備えられた二面性について語る。そして、民主主義とCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が立ち行かない現実を受け入れた上で、その処方箋を提言するに至る。
 
 しばらくしたら、もう一度読みたい。



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