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『ムハマド・ユヌス自伝-貧困なき世界を目指す銀行家-』と合わせ読みたい |
サッチャー政権による経済効率を優先した政策が英国において何をもたらしたのか、ルポライターとしてのフィールドワークの経験を動員し、実際の場面を綴ったもの一冊。理論やマクロでは割り切れない、現実の様が迫ってくる。 感じるのは、先進国における経済政策がその国に貧富の差を生じたとして、貧富の差の存在そのものを論拠として、政策の是非を論じることは極めて難しいものだということ。 即ち、フォークランド紛争当時のサッチャー政権は、失業率が10%を超えていた(単純比較では現在のわが国の2倍以上)。政権による公的セクター縮小等もあり、その後失業率は20%台近くまで上昇したが、他方、失業者の増加が新規創業をもたらし、2000年には5%を下回る水準にある。これら新規創業に支えられ、英国の中小企業セクターはひとつの成功モデルとされている。 また、英国自体の経済力なくして、英国国民への経済福祉も成立しないし、加えて、世界的に見れば先進国であり富める国の一国民であることも疑いようがない。 このように考えると、確かに貧富は事実としてあるのだが、問題はその問題自体をどのような枠組みのなかで捉えるのかということに収斂されるように思えてくる。古今東西すべての国民が豊かさを感じ得た国は存在せず、故に問題を一意にSpecificにし難い。「最大多数の最大幸福」を旨とする資本・自由主義経済の母胎たる英国の本書事象を通じて、単に経済・社会・政治の範囲に、探索すべき回答の在り処を留めるべきではないものと思われるのだ。 以前ベストセラーとなった「もしも世界が100人の村だったら」ではないが、比較対象をどの範囲で捉えるかによって問題の本質が変わる事象であると同時に、人間の認知が及ぶ範囲とはやはり近くの他人に留まり易いものだということなのだろう。 |
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