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未完の「国鉄改革」―巨大組織の崩壊と再生

未完の「国鉄改革」―巨大組織の崩壊と再生

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1.  とても良い さつまいものニョッキさん 書き込み日: 2003年03月02日

怜悧な改革者

本書は、国鉄改革三人組と言われ、1980年代最大の政治的課題であった国鉄改革の、掛け値なしに真ん中にいた一人である、JR東海の葛西氏の、国鉄入社以来の自伝的ノンフィクションである。

官僚的な古い企業の人事に通じた人ならすぐに分かると思うが、葛西氏自身は、経理畑(監督官庁=大蔵省・運輸省(当時)との折衝に当たる重要セクション)と人事畑(政治的に強力な労組と向かい合う重要セクション。これらのセクションは、たとえば都銀(笑)でもエリートコースとされていますね。)を歴任した国鉄の本流、エリート中のエリートと言える経歴を歩んでおり、国鉄の墜落と復活を目の当たりに出来る立場にいた人物である。

本書は、著者入社以来、どのようなメカニズムで、どのように国鉄が利害関係者に食いつぶされ、どのように組織的堕落が進んだかを詳述する。この場合の利害関係者とは、労組、内部官僚組織、政治家などなど。そんなマクロの話のみならず、労働組合とのミクロなせめぎ合いや財務省との折衝、国鉄改革時における政治家とのコンタクトなど、豊富な逸話が本書の読み応えと迫力をいや増す。そのマクロを見通す怜悧な視点と、ミクロな事態にも全力を尽くす能吏、そして情熱あふれる改革者としての著者の闘いが、凡人たる私などには余りあるほどに語られている。

国鉄改革がどのようなメカニズムで進んだのか、その中でどのような矛盾が生じたのか。国鉄改革三人組の中でも、マクロとミクロを論理的に語れる理論肌の著者だからこそ書ける、類稀なノンフィクションだと思う。自分の会社は大企業病に侵されているのではないか、と思う人にとって、会社の外からのマクロ的な視点と、個別事例におけるミクロな視点の両方を与えてくれる、実に優れた本である。若干、著者の政治的な思惑も含まれている本ではあるが、大組織における改革者たらんとする人の必読の書であると思う。



2.  とても良い 港の匿名さん 書き込み日: 2002年10月04日

大企業病との戦いという視点でも有用

日本最大級の企業を蝕む、安定志向、日和見主義は、民間を含む他の多くの大企業に通じるものと思う。一歩一歩確実に組織を崩壊に導く経営陣、労組、社員の真に迫る描写は、他人事とは思えず、常に自分の会社を思い浮かべながら読み進めた。国鉄という特殊な企業ならではの、政治家・官僚・労組等との複雑な関係も興味深いが、やはり改革に望む少数派が大企業病に侵された組織と戦う姿は感動的であると共に、読む人に勇気と希望を与えてくれることと思う。経済学の理論もベースにした視点で、現在の道路公団の民営化などのヒントもたくさん与えてくれる。



3.  とても良い さん 書き込み日: 2001年02月25日

国鉄民営化に興味ある人にはぜひお勧めです

国鉄改革の本といえば、ジャーナリストや経済学者などの書いた本がほとんどでしたが、現JR東海社長で、改革派3人組の1人が書いた本だけに内容のリアリティと迫力は抜群です。ここまではっきり書いていいのかと思うほど率直に書かれています。表現はやや硬いのですが、面白くて一気に読んでいます。ぜひ大勢の方に読んで欲しい1冊です。



4.  とても良い いっちぃさん 書き込み日: 2008年09月12日

国鉄経営悪化の構造的な要因から、なぜ分割民営化に行き着くのかが理解できます

国鉄の経営悪化を引き起こした構造的な要因の考察を軸に、国鉄の経営中枢にいた筆者の実務経験を交えて分割民営化に至る軌跡を辿る。

国鉄は1949年、国による直接経営から独立採算制の公共企業体へ改組し発足。独立採算制の意図するところは、全ての収入を利用者からの運賃収入で賄うという前提だった。一方で、鉄道網の整備・近代化という国民経済および地域経済のための長期のインフラ投資も求められており、こうした国家的なインフラ投資も含めて全て運賃収入に依拠するのは無理があった。鉄道インフラ整備のために国が出資するのが筋であるが、実際には財政投融資という形で長期的に安定した資金を貸し付けることになり、後々の借金経営の大きな原因になったと考えられる。独立採算制とは言え、運賃と設備投資を含めた事業計画が国会の議決により決定されていたため常に政争の具となり、運賃は抑えられつつ借金による設備投資を余儀なくされたのである。

早くも1964年に初めて赤字となり、その2年後には累積赤字に転落、独立採算性の崩壊が顕在化し始める。運賃値上げ、税金投入、合理化、賃金抑制、設備投資の抑制、赤字ローカル線の廃止など、国鉄および政府関係者には課題は明確になりつつあったが、本質的な課題のディスクローズを避け問題を先送りする方向に進んだ。以後20年にわたって問題先送りが繰り返され、借金が雪だるま式に増えていった。

本書から読み取れるのは、分割民営化による抜本改革の突破口になったのは労務問題―なかでも職場規律の是正という具体的に目に見えて分かりやすい問題であったようだ。70年代後半、経営改善のために運賃値上げを承認させ、税金による補助も膨れ上がる一方、ストライキを繰り返し職場規律が乱れた国鉄に対し国民の不満が高まるのを、政治的に看過できなくなったのだろう。80年代に入り第二臨調が発足したのを受けて、筆者ら国鉄内の改革グループが分割民営化の素案を描き、関係する政治家や臨調、さらに臨調答申を受けて発足した国鉄再建監理委員会のキーパーソン達に働きかけていく様は読みごたえあった。



5.  良い s.naruoさん 書き込み日: 2006年09月28日

無責任な当事者の発言かも?

筆者は、明らかに国鉄改革の当事者である。
その当事者自ら“未完”と言ってしまうのは、合点がいかない。
できることは全てやったととの思い込みが背景にあり、未完の国鉄改革に対する
責任感が感じられないのが残念。
厳しい見方だが、国鉄改革の当事者として、もっと責任ある対処もできるのではという気がする。
JR東、西、東海と分断されていることによる不便を強いられているのは、我々国民なのである。
そのことを、どのように感じておられるのだろうか?



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