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パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)

パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)

とても良い / 口コミ件数 : 10


価格 : 735 円





クチコミReview一覧
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口コミ件数:10 1 2 次ページ
1.  とても良い ひくつさん 書き込み日: 2004年07月02日

イギリス人らしい

主人公はおじいさんで、話の展開も淡々としていて、とても好感が持てる物語でした。内容は苦労に継ぐ苦労で、普通の人だったら途中で投げ出しちゃうし、そうしても誰も責めないよと思うのですが、それを淡々とこなしていくのが、とってもイギリス人らしい。自慢もしないしね。電車の中で読みながら、何度も目頭が熱くなりました。年寄りモノがもっと読みたくなる。



2.  とても良い 水上救助員さん 書き込み日: 2002年04月02日

史上最弱のヒーロー

SF小説「渚にて」の作者としてしか知られていないネビル・シュートの傑作冒険小説。ナチスと戦うヒーローといえば、超人的な能力を持つインディ・ジョーンズのイメージだけど、この本の主人公は正反対。70歳過ぎで持病のリューマチで膝が言うことを聞かない老弁護士の英国人。戦火の広がる中で、お国の役に立ちたいと警察や防災のボランティアを申し出ても、役立たずの年寄りとかお荷物の年寄りと言われ全く相手にされず、そんな時に一人息子が戦死してしまい、失意の中でフランスの山奥に毛鉤釣りに出掛けたのが大冒険の始まり。同宿の英国人外交官の子供たちを本国まで連れて帰ると引き受けたのが災厄の始まりで、列車に乗ろうとした途端にナチスがパリを陥落させるわ、ホテルのメイドの姪っ子を連れて約束はさせられるわ、道端でフランス人や国籍不明の戦災孤児を拾うわでじい様と多国籍難民児童の珍道中が始まる。これがパイドパイパー(ハメルンの笛吹き)の由来。ナチスが占領した町では「ドブネズミのイギリス人を差し出せ。」とのチラシに追い立てられ、お尋ね者扱い。お気に入りのハリスツイードの背広は、まるで英国人であることを宣伝しているようなものと指摘されて、嫌々ながら超悪趣味なフランス風身なりに変装したり、徹底した命令厳守のナチスのおかげで衣食住を思わず助けてもらったりとコミカルなシーンも多いが、淡々とした語り口の中で、非戦闘員の犠牲の悲惨さがリアリティを持って浮き彫りにされ、テレビで見るアフガン難民の姿のテレビの裏側の実態への想像力を与えてくれる。役立たず年寄りと言われても、知恵と勇気と使命感(これが英国伝統の騎士道なのか?)を発揮すれば特殊部隊以上の成果を上げられるんだぞと言う、痛快で元気になる大冒険小説



3.  とても良い まつさん 書き込み日: 2007年04月24日

混沌とした世界を照らす灯台

静かな反戦小説だった。

そして、第二次世界大戦の最中に書かれた小説らしく、当時の各国の立場、各国民性が垣間見れる。
イギリス人の作家だけあって、もちろんイギリス大好きアメリカもねっ、と言うところなのだが、そこら辺の贔屓を差し引いても各国民の気質は的を得ている。

息子を戦争で亡くした老人がフランスからイギリスに帰る。
ドイツ軍が侵略して来る切羽詰った状態の中、断りきれず連れて行くことになった子供たちと共に。
ただ、それだけの小説だ。

それがまた読ませるんだが、説明するのは難しい。

戦争小説でもなく冒険小説でもない。

しいて言えばロードムービーならぬロードノベルだろうが、戦争の恐怖がじわりじわりと感じられ、人情の機微が胸に迫る。

小説そのものの幕切れが世界の終焉のようにも見える。そんな恐怖も感じさせる。

ただ決して暗くはない。
老人の信念や優しい心、死んだ息子の恋人ニコルの美しい心もちが、混沌とした世界を灯台の明かりのように照らしている。
そんな小説。



4.  とても良い zero0さん 書き込み日: 2004年01月25日

冒険小説の傑作 いくつになっても問題なのは誇りだ。

『渚にて』のネビル・シュートの1940年代の作品。殺人事件も不可思議な謎も一切登場しない。
主人公は70歳のイギリス人弁護士。彼が、第二次世界大戦下ドイツ軍のフランス侵攻の危機を逃れるため、南フランスの片田舎からロンドンへと移動するだけのお話だ。

謀略もアクションも秘密兵器も二重スパイもない、それでも極上の冒険小説だ。一本筋の通った骨のある老人が、くたびれきった体に鞭打ちながら、子供逹とロンドンを目指す。主人公の気概と、子供への思いを通すための意志が琴線に触れる。

行きがかり上の約束を守る事がやがて一緒に行動する子供逹への思いに代わり、思い通りに動かなくなった体を嘆きながら、自分にできる限りの行動を貫いて行く。

冒険小説に登場する男そのものだ。時に足手まといになり老人の行動を邪魔してしまう小憎たらしい子供逹を、それでも大きく受け止め守っていく。ナチスの親衛隊に連行されても、ずるい行動を選択する事無く自分に誇りを持てる方法で、子供逹を連れて行くための最前を尽くす。

爺さんの姿に、じんわりと熱くなる。70を過ぎて例え体のキレがなくなり非力な存在になったとしても、主人公のバスのようにあろうと思う。上質の冒険小説に触れた時の心の熱さは、どうしてこうも気持ちよいのだろう。誇り。勇気。意志。日々の澱をこそぎ落とし、生きていこうと改めて思う。
軽やかなユーモアも、心地良い。

地味なタイトル、見かけだけれど、超お奨めの一冊だ。



5.  とても良い ピエロさん 書き込み日: 2004年03月06日

第一級の冒険小説

引退した老弁護士と、まだ年端もいかぬ子供たち。1940年、ドイツの侵攻により世情不安となったフランスから、故郷のイギリスを目指しての脱出の旅を描いた冒険小説。

といっても、銃撃戦やカーチェイスなどのアクションがあるわけではなく、また、老人が長い年月の間に培った機知をもってドイツ軍に一泡ふかす、子供たちが大人顔負けの想像力と行動力とで奇想天外な作戦を展開、侵略者たちをやっつけるといった内容でもありません。難儀にあって、時にはなすすべもなく運命に身をまかせ、時には互いに励ましあってのイギリスへ向かっての旅路と、老弁護士の忍耐と子供たちのわがままにもなる無邪気さがこれでもかとばかりに書き込んであります。
ドンパチと派手さはないものの、じっくりと読ませてくれる第一級の冒険小説です。



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