本・雑誌 甘粕大尉 (ちくま文庫)の口コミを検索

トップ本・雑誌その他甘粕大尉 (ちくま文庫)
を 商品名

甘粕大尉 (ちくま文庫)

甘粕大尉 (ちくま文庫)

とても良い / 口コミ件数 : 7


価格 : 882 円





クチコミReview一覧
評価の高い順 評価の低い順 書き込み日の新しい順
口コミ件数:7 1 2 次ページ
1.  とても良い pasonekoさん 書き込み日: 2005年04月10日

映画館の光と闇のように・・・

近代日本史の闇の部分を秘めたまま、太平洋戦争が終わると再び闇に戻った男の評伝である。他の角田房子氏の作品と同様、丹念なリサーチに裏付けられた評伝となっている。

多くの伝記作家とは違って創作や類推を極力排除したスタイルは、甘粕本人の人生の闇の部分に光を当てはしない。しかし、見えない部分があるからこそ逆に、甘粕像がくっきりとした輪郭を持って浮き上がってくるのだとは言えないだろうか?読了と同時に独特の読後感が残る佳作である。

前大戦前後に興味を持つすべての人に読んでいただきたい作品である。



2.  とても良い 楡岡さん 書き込み日: 2005年04月21日

読後に”ラスト・エンペラー”を見直してしまいました。

 大正12年、活動家大杉栄殺害の罪を受け除隊、その後満州で暗躍、満州で比類ない権力を振るうにいたる甘粕正彦。
 実に訳のわからない話であるが故に、その時期なにが起きていたのかは探求に値する。張作霖爆殺から満州国建国、太平洋戦争へとむかう時代精神と、関東軍、陸軍中央のありようが、甘粕正彦を焦点として描き出される。
 自己の栄達を目的とせずに行動する人間は強い。それは強烈な天皇崇拝を抱いていても同じだ。個人の信念がどれだけのものを呼び込んでくるのかという、個人のありかたについても考えさせられる材料を含んでいる。



3.  とても良い el mundoさん 書き込み日: 2007年04月24日

「天皇の赤子」が失意の先に見た夢は

本書で用いられている写真は、表紙にある甘粕の肖像一枚のみ。
その一枚が、甘粕の信念と苦悩と挫折を、何よりも象徴している。
それだけに、口絵はもちろん本文中にも写真の出てこないことが、
むしろ故意なのではとさえ思えてくる。

大杉栄暗殺事件の罪を自ら背負った甘粕。逃げるようにして
フランスに立ち、苦悩の日々を送る甘粕。全章の中で、フランス
での隠遁生活を扱った章が一番興味深かった。天皇に仕える者
として、罪をかぶるのは当然とは思いつつ、一人の人間として
やり切れない思いが残る甘粕の苦悩が、ありありと浮かんでくる。

以後、この事件に関して、甘粕は沈黙を保つ。

そんな甘粕が、生まれ変わる(re-born)ことを求め、新天地として
目指したのが満洲だった。五族協和の夢を掲げることは、日本人として
の甘粕の独善であったといえば、そうだろう。しかし、武断統治を志向
する関東軍とは別個の勢力が、甘粕を中心として存在したことは、記憶
するに値するだろう。甘粕には、甘粕の、満洲国にかけた夢があった。

本書で呈示される甘粕像は、どこまでも淋しく虚ろである。満洲で存分
暴れた<影の帝王>甘粕には、凄惨な暗殺事件の犯人というレッテルが、
いつまでも心のスティグマとして疼いていたのだと思える。

甘粕の生き方に共感し、賞賛したがる人には、充分満足いく作品となって
いる。甘粕を批判し、貶めたい人にも、甘粕の独善性にも触れられている
ゆえ、充分読み応えがある。その意味で、広く読まれるべき評伝として、
本書は稀有なまでに優れているのではなかろうか。ここには、甘粕ばりの、
本当の意味での「バランス」があると思う。



4.  とても良い blackstarさん 書き込み日: 2008年09月02日

複雑で魅力的な人物

 「満州」というと個人的には石原 莞爾に惹かれるのだが、石原と対立した「満州の夜を支配する男」甘粕もまた充分魅力的な男だということがわかった。
  角田氏は当時の関係者に丹念に取材し、一般にイメージする「主義者」大杉栄の幼い甥まで惨殺した「残虐な憲兵」というイメージを払拭する。(大杉栄の妻伊藤野枝の話は瀬戸内寂聴氏の「美は乱調にあり」が抜群に面白いので参照されたい)
 
 恐らく軍上層部の命に従って罪をかぶったことであらわされるように骨の髄まで軍人で、天皇を頂点とする日本に命を捧げた男は、大杉一家虐殺事件を機に闇の世界に足を踏み入れる。
 後半生は傀儡国家満州国の実力者として辣腕を振い、満映では経営者としても指導力を発揮。一方「趣味は国際的謀略」と称される裏の部分については謎が多くあまり記述されてはいない。

 甘粕の魅力は一方で現実主義・合理主義で時には冷たい面もありながら、満州人や中国人も庇護し(あくまで主=日本、従=満州という範囲の中でだが)、北京の街路樹を伐採しようとした軍に対し「戦後日本が野蛮な国と誹(そし)られる」と主張しそれを忌避するなど、広い視野に立っていたことだろう。

 角田氏の筆致はあくまで冷静で事実を追っているが、文庫版の最後にある中国人留学生虐殺事件(これは甘粕とは関係ないが)についてはかなり感情を込めて書いている。朝鮮人虐殺については有名でも、これは今では大部分の日本人が知らないことだろう。



5.  とても良い sasabonさん 書き込み日: 2008年12月07日

オリジナルと文庫の違い

満洲の歴史を知る上で、甘粕正彦を避けては全く語れませんし、表面の史実だけでなく、日中戦争の裏面史を知る上でも、彼の闇の行動を知ることによって旧日本軍の狙いが見えてきます。それだけ重要な人物ですし、闇の部分が多いが故に神格化され、恐れ崇め奉られたのだと理解しています。

近代史の知られざる一面に対して多くの関心を払ってきた角田房子の渾身の著作です。特に「満洲国のボス」ではなく、「忠君愛国の士」であり、天皇への凄まじいばかりの畏敬の念を抱いた日本人の典型として甘粕の姿は実に新鮮に映りました。本書に書かれているように「天皇と一体である国家に身命を捧げる」という目標を生きがいとした甘粕はある種のストイズムを感じさせるものでした。

ただ、惜しむらくは、この文庫には写真が1枚しかありませんが、1975年刊行のオリジナルには、9ページに渡って17点の写真が掲載されていました。特に大正12年10月8日の軍法会議の写真や、自決した彼の入棺直前の写真など非常に興味を覚える写真まではずされているのは大変惜しいと感じました。
本書が、当時の資料をおいながら丹念に人間像を浮かび上がらせようと努力した労作であるだけに、その内容の理解を大いに助けるであろう写真の存在は大きく、それがないのは画龍点睛を欠くと思われます。

とはいえ、執筆から30数年経った今でも、甘粕を語る上で本書の存在は外せないもので、この労作を読むことで、知られざる日本近代史の奥底を理解できるように感じました。



1 2 次ページ

文学・評論
思想・社会・ノンフィクション
人文・思想
社会・政治
ノンフィクション
歴史・地理
ビジネス・経済・キャリア
投資・金融・会社経営
科学・テクノロジー
医学・薬学
コンピュータ・インターネット
アート・建築・デザイン
実用・スポーツ・ホビー
資格・検定
暮らし・健康・子育て
旅行ガイド
語学・辞事典・年鑑
教育・学参・受験
こども
漫画・アニメ・BL
タレント写真集
ゲーム攻略本
エンターテイメント
新書・文庫
雑誌
楽譜・スコア・音楽書
古書
カレンダー
ポスター