私は本書を読んで、その改善プロセスも興味深かったが、それ以上にその改善プロセスを生み出していく過程・アプローチに大変興味をもったので、それについて述べる。 1.コーチング手法によるアプローチ 本ストーリーは、所長が偶然に再会した恩師に改善の方法やポイントのアドバイスを求めるが、恩師はアドバイスや回答は示さず、逆に質問をして所長に答えを探させるという謎解きの手法で展開していく。これは小説的には推理小説のように謎解きで読者の興味を誘う手法であろうが、私には単純にそうは思えなかった。 より高い成果は、人から教えられ与えられたものでは得られず、自ら悩み考え出したもので得られると考える。すなわち、上司は部下に対して解決策等のアドバイスや回答を一方的に示すのではなく、部下に質問することで部下を悩ませ考えさせ、そして対策案を引き出し実行させる。部下は自分の発案であるから、やる気が出て、自発的に実効ある行動をとり、より高い成果に繋がっていく。これは、「答えは相手の中にあり、上司はそれをうまく引き出し、自発的な行動を促す」というまさしくコーチングの手法である。 2.組織を超えての検討チーム 本書で改善を中心になって進めるのは、所長・製造担当・経理担当・資材担当・データ処理担当といった、時には敵対しかねない立場の異なった5人である。しかし、彼らが目標達成に向けて侃侃諤諤議論して成功へと邁進していく。このことは本来あたりまえのことだが、現実にはうまく機能していないのが実情であろう。すなわち、それぞれの立場を背負っての検討チームではなく、立場を超えて自由に論議・発案できる、組織を超えた検討のできるチーム運営の実現が必要である。 3.家族(第3者)のサポート 忘れていけないのが仕事には直接無関係の家族(第3者)によるサポートである。所長の夫婦関係は最初はお互いの立場を理解しようとせず溝がふかまり離婚の危機となったが、お互いが関係修復に向けて努力した結果、お互いの立場を理解しあい、お互いの悩みを共有し、まずは夫の仕事の悩みに対しての会話が出来始めアドバイスができ解決に繋がった。仕事とは全く無関係の異なった観点からの見方・アドバイスではあるが、このようなことが出来る夫婦関係は理想的と言える。さらにキャンプでの隊列の進行速度やマッチ棒ゲームを生産工程にたとえて考察したり、子供との会話の中からもヒントを得るなどは、問題解決に真剣に取組んでいればどのようなものからでもヒントを得ることが出来るということを教えてくれている。 著者は本書の後記の中で次のように述べている。 ・本書は改善プロセスのスケジューリングソフトの宣伝ツールであったが、高価なスケジューリングソフトを導入した企業より、本書を読んだのみで改善を図った企業の方が大きな成果をあげたケースがあった。 ・また、本書を教科書として社員教育に取り入れた企業でもうまく改善ができず成果が出せなかったケースもあった。 この両者に共通しているのは、自ら取組んだものではなく他人から与えられたものへの取組みである。すなわち、当事者が自分のものとして認識せず、その気にならなかったから成果につながらなかったのではなかろうか。 |