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組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

良い / 口コミ件数 : 11


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1.  とても良い さん 書き込み日: 2001年01月11日

あらゆる組織人の必読本

 一般に、勤勉かつ優秀な人材を集め、最高の教育を施し、考え得るもっとも合理的な行動をとれば、どんな組織でもその分野で勝者となりうる。これが一見真理のように見えることを否定する人はいないだろう。しかし、現実は必ずしもそうではない。それは、恐らく組織人として生活した経験のある人ならば思い当たる例が身近にも存在しているはずである。

 では、なぜそうなるのか?  この問題に対し、最新の経営学理論を用い、かつて日本で屈指の「優秀を指向した組織」であったにもかかわらず無残な敗北を喫した日本陸軍を分析することで一つの妥当性のある解答を示したのが、菊沢氏の本書である。

 かつて日本陸軍がその幹部候補にきわめて充実した教育を行ったことはよく知られている。にもかかわらず、なぜ太平洋戦線で緒戦はともかく、あれだけの敗戦を重ねたのか?「補給軽視」「特定戦術に固執」今までの戦史書の常套文句である。しかし、もともと優秀な上に充実した教育を受けた参謀達がなぜ同じ失敗を繰り返さざるをえなかったのか?本書の斬新さは、これを経営学理論から説明したことにある。

 本書の斬新さはもう一つ、人間とは不合理性を必ず有した存在である、という前提に立っていることである。今までのこうした類書は、意思決定をする人間は、完全に合理的に行動しているという前提で、どのようにかつて振る舞い、また振舞うべきか、と論じてきた。本書では、それが時には組織を滅ぼすことがありうることを証明している。

 これら以外にも、新たな驚きが本書には満ちている。

 結局、組織とは何か。その中での戦略、意思決定はいかにあるべきか。伝統的な戦略本における解答では満足できない人は、本書により新たな考える視点を得る事ができるだろう。



2.  とても良い さん 書き込み日: 2001年01月08日

新年会をサボってでも読みたい一冊ですよ!

 21世紀の正月を読書で過ごすにはまたとない一冊だった。「組織の不条理」これは、中間管理職の一人として常々感じることだ。しかし、不条理に対して、20世紀までの私は個人的な憤懣の域を出たことがなかった。分析し、解決するツールを持たなかったためだ。20世紀は組織の不条理にやり場のない憤りを押し殺してきた中間管理職の方々、公務員、私企業は問わない。新年会を一つサボってでも読む価値がある。組織の不条理に対する憤りを、改革するエネルギーに還元できる可能性を本書から得ることができる。組織の不条理を分析し、克服する武器を提示してくれているからだ。本書は学究の世界の成果を現実の組織経営上の問題点へのアプローチへと見事に融合させている。では組織の不条理を克服するにはどうすればいいのか?その問いにも著者は明確な答えを用意している。これについては読んでからのお楽しみとしておくべきであろう。

 組織経営については様々な著作が出ている。その多くが、人間が完全合理的に行動できることを前提にして、分析、対策を論じている。読者にしてみれば、「それはそのとおりなんだけどね。でもね。」と言いたくなるものが多い。しかし、本書はそうした「あるべき論」とは一線を画している。その分析手法は、従来の研究に見られた、「人間が完全合理的に行動できる」という前提に立つものではなく、「人間は機会主義的であり、限定合理的である」という現実に立脚した分析である。そして嬉しいことに「完全合理的」、「限定合理的」、「機会主義」といった用語も本書では丁寧に解説されているので、私のような組織経営論には疎い者でも容易に理解できるように工夫されている。

 新制度派の組織分析手法を用いながら、「組織の不条理」の典型であるインパール作戦やガダルカナル戦を分析し、結果として非合理的でデタラメ極まりない作戦が、意思決定の各局面では、緻密なコスト計算に基づいた合理的なものであったことを指摘している。また、失敗例の分析に留まらず、組織の不条理を克服した例として硫黄島戦、沖縄戦をも分析している。「悲惨な戦闘でした」で片付けられがちなこれらの戦闘について、日本に在る司令部と、戦闘の現場に有る部隊間において、いかにして不条理が発生し、どのようにしてそれらが克服されていったのかを浮き彫りにすることに成功している。

 組織経営論としても、戦史分析としても非常に斬新的であり、読者に解り易いように気配りが随所に施されている。研究され尽くしたかに見えるこの分野を、著者は再度、組織経営論の手法を駆使して歴史からの教訓を掘り起こすことに成功している。

 さらに、戦史分析のみならず、実は日本の企業は今でも大東亜戦争で日本が陥った経営失敗の二の轍を踏みつづけていることも指摘している。分析手法一つで、大東亜戦争時の日本の経営からここまで明確に教訓を抽出し、現在の日本企業の経営分析にもそれらは対応できることを本書は証明している。



3.  とても良い モトさん 書き込み日: 2009年01月10日

批判的な態度。

日本軍はなぜ、ガダルカナルにおいて無謀ともいえる百兵突撃を繰り返したのか、203高地の
失敗から何も学ばなかったのか?この疑問に対して本書では新制度派経済学のアプローチより、
解明を試みる。失敗の原因を人間の非合理性にみるのでなく、限定合理的な人間の特質にある
とするのは従来にない面白い解釈であると思う。

人間は常に誤りを犯すものであり、組織内部に絶えず非効率と不正が発生する可能性を認め、
それを防ぐためには絶えず批判的な態度を持つべきであり、誤りから学ぶことが大切。

日本人は仕事上において、他の国の人々より、より上司の言うことを鵜呑みにしやすい体質を
持ち、また、場の空気を感じすぎて云いたい事を遠慮しがちな国民性があると言えるのではな
いでしょうか? 



4.  とても良い 六等星さん 書き込み日: 2004年07月17日

華やかさは無くても、地に足の着いた良書

人間は限定合理的であり、その限定合理的な人間の集団であるいかなる組織も、限定合理的である。そして条件さえそろえば、組織は合理的に非効率な手段を選び、やがて破綻していく。題材は大東亜戦争で敗退した日本軍であるが、今日のどんな組織にも当てはまる、鋭い指摘である。

本書では、人間と組織の限定合理性を認め、常に批判を受け入れる「開かれた組織」を構築することを、その解決策として主張している。セオリーとしての組織論は理解できても、実際の組織が不条理に陥らない方法を見出すことのできる組織経営者は少数派であろう。多くの経営者が、このメカニズムを研究し、具現化することを切に望む。華やかさは無いが、地に足の着いた良書である。



5.  とても良い omrさん 書き込み日: 2004年10月20日

組織の経済学的分析

防大教授による日本軍の組織論というと、「失敗の本質」が思い浮かびますが、軍隊というのは「組織の特徴が極端にでる」(あとがきより)存在で組織論の格好の研究対象のようです。なお、「失敗の本質」から二十年、両書を読むとこの間の組織論の進展が分かります(著者も「失敗の本質」を意識。)著者の主張は「組織の不条理も個々の行動主体から見れば経済学的に合理的であり、経済学の視点から説明がつく」というもの。そのため、分析のツール(制度派経済学)が説明されますが(第一章)、組織経済学の成り立ちを整理する上で、ここだけでも読む価値はあります。

感想を三点。?身の回りの分析が現実的になりました。確かに経験的にどんなひどい(不条理な)と思われる組織も、何らかの経済的インセンティブをもって行動された結果、と見とれるような気がします。?組織を見る眼が暖かくなりました。不条理な組織でも個々の成員の責任や倫理観だけを問うても意味がなく、事の本質は組織の制度設計。結局、身の回りを見ても個々に限定的ではあるにせよ、合理性を持った人達でした。?穏健的(民主的)リーダーシップは、経済学的にも正当化されることが分かったことが嬉しかった、というのもありました。限定的合理性の集まりの組織では、極力個々のインセンティブの働く方向や情報を同じにすることが成功のひとつの要素、専制的ではこの働きが弱くなります。

非常にお薦め。読みやすく、「組織の経済学」の厚さにたじろぎを覚える人には、まずこちらを。



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