良い / 口コミ件数 : 3件
価格 : 1,680 円
フランス人研究家が見たティベットの文化・歴史がヴィジュアルに表現された好著です。今日では日本人も大勢訪れる地域ですから、翻訳はもう少し丁寧であって欲しかったものです。なおまた、固有名詞にはカタカナだけではなく、せめて索引にでもローマナイズされた綴りを併記しておいて欲しかったと思います。なにしろ、ティベット語は綴りと発音との間に乖離が著しいものですから。
日本人にとってチベットとは、、映画やテレビで断片的に流れる情報から漠然と「自然 の宝庫」であるとか、中国の占領下にあること、ダライラマ14世のことを知っている くらいだろうか。 本書は、そのようにあまり知られていないチベットの姿を、チベットに魅了されたフラ ンスの学者が簡潔に纏めたものである。 まず、チベットの環境などの地理的なことを説明される。チベットに魅力を感じるのに は、これだけでも充分すぎるほど広大で、実に美しい。 信仰に関しては、土着宗教から仏教、そしてチベット仏教の誕生といった流れが記載さ れる。土着宗教に関して言えば、「苦しみの世界と幸福の世界」など、他宗教とも共通 点が多い。 ダライ・ラマという存在がチベット人にとってどういう人物なのかが、ここで説明され る。 だが著者も憤りを感じているとおり、こうした文化は現在の支配者に穢されてしまって いる。この現状も、詳しく書かれている。 またチベットには数多くの侵略者や探検家達が訪れ、そして魅了されていった経緯も記 載される。なるほど記述されている限りでは、チベット人の人柄や、雄大な自然は魅力 溢れるものだ。 中国が侵略を開始してからは、自治区設立、観光客への解放を進める。 だが本書におけるチベット侵略後の記述で特に重要と思われるのは、貴重な文化の損 壊、そして人民の多大なる被害であろう。 「この国の支配下に置かれた場合どうなるか」を明示しているようで、戦慄を覚える。 「資料編」では、チベット医学やチベット人などに関する記述、詩が1つ掲載されてい る。なかでもこの詩は素晴らしく、他の詩への興味を抱かせるほど秀逸なものである。 ただ文化や宗教、歴史についてはこれでもかなり学ぶことができる反面、もう少しチベ ットの土地や自然についても言及して欲しかった気もする。
ヨーロッパの人の原著だけあって、第4章の「西洋人による探求」は、いかにアジアの文化がデタラメに伝えられたのかという意味で面白かった。特に巨大な蟻が金を採掘するというヘロドトスのくだりは笑ってしまった。このような人が書いた名著「歴史」ははたしてどこまで信じたらよいのやら。という感じで前半はぱらぱらと読んでいればよいのだが、この本で特にじっくり読んで欲しいのが第5章の「侵略と植民地化、チベットの現在」である。「ダライラマ自伝」をベースにして書かれているが、中国が、「解放」と称して侵略・植民地化を推し進めている様子がよく描かれている。しかもこれは現在進行形なのである。あのジャパン・バッシングをしている中国が、大日本帝国がやったことと同じことを今やっているのである。さらに危険なウラン採掘をチベット人にさせたあげく、発電したエネルギーはすべて漢民族がすいあげ、のこりカスの核廃棄物はチベットの神々しいまでに美しい大自然に投棄するという、信じられないようなことが堂々と行われている。この現実を訴えた2002年のダライラマ14世の演説が巻末の資料にのっており、これには涙させられる。さらに巻末の資料には、ミラレパなどの大仏教学者の残した意味深くも美しい詩が掲載されていて非常に興味深い。