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価格 : 998 円
経済的局面において人々が実際に選択する行為と、標準的経済学が予期する、効用を最 大化し合理的選択をすると仮定されている「経済人」との間には乖離がある。それらに ついて深く掘り下げたのが本書である。 本書はなぜ人は「経済人」のように合理的な行動ができないのか、損してまで感情的行 動を起こしたり、将来の大きな利益を省みず、目先の小さな利益に飛びついたりするの か等の謎を解くヒントになるだろう。さらにこれらは人の生物としての合理性(だっ たの)ではないかということが次第に明らかにされる。 しかし、本書を読んで「経済学が根底から瓦解した」なんて誤読してはいけない。著者 自身も書いているように、「経済学で長年に渡り蓄積されてきた理論に認知心理学の成 果を取り入れて改良するというのが行動経済学の目指すべき方向であって、標準的な経 済学を全面的に放棄あるいは解体して、新しい経済学を一から建設するというものでは ない」からだ。 さらに(実はというべきか)、この種の適応的合理性という性質は、進化社会学や社会 心理学の最近の知見について既知の読者ならば、さほど真新しさを感じないのではと思 われる。逆に本書を読んで、はじめてその面白さに触れたなら、そちらの入門書等を読 まれることをお勧めする。本書の網羅的・教科書的記述は(学生や研究者には巻末の参 考文献リストが)辞書的に役に立つ種の本でもある。 著者の中立的記述は、ぶれがなく好意的。逆に面白味に少々欠けるという意見もあるだ ろうし、この行動経済学が政策的にどう生かされるべきなのかという方法論までは著者 自身認めるとおり、射程とはされていない(今後の課題)。だが、新書というスペース に行動経済学の議論を詰め込めるだけ詰め込み紹介したという姿勢は評価されるべきで あろう。
スタンダードな経済学における合理的な人間とは、たしかに利己的で一貫しており、言葉によるバイアスを受け入れないようなものです。しかし、本書を読めば、これは仮定であって、現実の人間の犯しがちな認知的な誤りやバイアス、その他の言葉による「ひっかけ」などは、実際の行動に大きな影響を与えていることが、わかります。この意味で、行動経済学や、その一部である行動ファイナンスなどは重要な学術分野です。カーネマンとツヴァースキーによる先駆的な研究も大きな流れとなったものだと感心することしきりです。 しかし、私は主流経済学の合理的経済人の仮定は、それでも有意味であり、今後も主流であり続けるだろうと思います。それは、仮定から行動を規定する定理へいたる道が比較的計算しやすいからです。風があれば投げたボールは変化しますが、だからといってニュートン力学が無意味なわけではないのです。この意味で、行動経済学は惑星の運行における周点円の説明にしかなりえていないと思います。それと、アドホックな説明が多く、統一的な理論がないのも弱点だといえるでしょう。 なお、記述があまりにも教科書的なので、一般のかたにはやや読みにくいかとも思います。著者はさすがに多くの研究をしているだけあって、新書を書くにはいまだに現役の学者すぎるのでしょう。
標準的な経済学の世界というのは、すべての情報を入手でき、それに基づいて合理的な判断・行動を取る人間を前提として組み立てられているいわばフィクションの世界であり、経済学者たちはそのような純粋状態をモデルとして経済の仕組みを分析することに意義を見出しているわけだが、一方で、「そのような前提はまったく現実的でない」といった批判も根強くある。行動経済学は、そのような批判に応え、むしろ個々の人間が合理的な判断・行動を取らないということを前提に、どうして合理的な判断・行動を取らないのかを分析し、経済の仕組みを理解しようとするアプローチである。本書は、その入門書と言ってよい存在で、人間の先入観、錯覚、リスク性向などに始まり、精神学的な脳の構造と働きに至るまで幅広い行動経済学上の理論をカバーし、分かりやすく解説してくれている。この本を単独で読んでもそれなりに面白いと思うが、標準的な経済理論を一通り勉強した人が読むと、対比が明確になり、経済に対する理解(困惑?)がより深まること間違いなしである。
いままでの方々のレビュでほとんど言い尽くされていると 思いますが、ちょっとだけ。 この本をひとことで言うと、「行動経済学」の内容を、海外の 大量の文献をもとに、うまくまとめたもの。 人間の合理的でない面を、「ヒューリスティクス」「バイアス」 「プロスペクト理論」「フレーミング効果」「双曲割引」「評判」 ・・・本当に多くのキーワードにより、説明している。 新書で、これだけの情報量、これほど得られるものが多い ものは、なかなかないと思う。 神経経済学についての説明もあり、至れり尽せり。 ただ、双曲割引に対する批判の部分をはじめ、読んでいて、 「本当にそうなのか??」と思う部分も、いくつかある。 類似の書籍、近接する分野の本も読んで、勉強してみたい。
従来の経済学における主体は、現実の経済を担う主体とは、経済的な行動の起こし方に大きな違いがある。 それは、合理性の部分が大きく異なる。現実の経済を担う主体、すなわち我々は、様々な前提に支配されて意思決定がなされる。 本書では、そういった様々な前提を、様々な実験ゲームを用いて一つ一つ明らかにしていく。 例えば、本書に登場する「プロスペクト理論」によれば、確率に対するバイアスについては、確率関数に価値関数を乗じることで、より人間にとって近い確率認識に近づくとしている。 この本をきっかけに更に行動経済学の本が読みたくなる、そういう入門書でありお勧めである。