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人間が幸福になる経済とは何か

人間が幸福になる経済とは何か

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1.  とても良い さん 書き込み日: 2003年11月30日

門外漢ですが

本書の原タイトルはRoaring Nineties。普段は経済書など手に取らない私が思わず手に取ってしまったのは、Roaring Twenties(咆哮の20年代:ヘミングウェイやフィッツジェラルド、そしてモディリアニやピカソ、日本人なら藤田嗣冶などといった芸術家たちがパリに集った華やかなりし時代です)という言葉がぱっと頭に浮かんできたからです。

経済に無知な私でも、1929年に世界大恐慌が起こり、ケインズという経済学者の考え方を背景にして、フランクリン・ルーズベルト大統領がニューディール政策という公共事業による雇用促進を骨子とした政策を実施したことは知っています。そして、今の日本の長引く不況を1930年代の米国における状況と重ね合わせて論ずる人がいることも。

かなりトンチンカンな興味から読み始めた本でしたが、何というか、非常に論旨が明快で皮肉も効いていて、ときに笑いながら、ときに真剣になりながら読了しました。ちょうど就職したころバブル真っ只中だった身としては、懐かしさと共に、自分が必死にその日その日の仕事をこなしている間に世界ではこんなことが起こっていたのかと、新鮮な驚きを感じながら、世界というもの、経済というものについて考えさせられた貴重な時間でした。

20年代の浮かれ騒ぎが30年代の不況を招き、90年代の浮かれ騒ぎが00年代の不況を招いた、だからこそ今90年代の反省を踏まえて00年代を生きていかねばならない。なんだか自分らしくもない熱い言葉を吐きたくなってくる、『人間が幸福になる経済とは何か』はそんな本です。私と同じように経済なんて全然知らない人にも読んでもらいたい、いや、むしろそんな人にこそ読んでもらいたいと思っています。



2.  とても良い 子母原心さん 書き込み日: 2003年12月04日

90年代のアメリカ経済にまつわる神話を糾し、誤れる経済政策の弊害を説く

 90年代のアメリカは史上稀に見る経済成長を達成し、その要因を巡って様々な神話が存在する。赤字財政の削減の成功による成長率の高まり、グリーンスパンの神業的な金融政策の手腕、ストック・オプションの導入によるインセンティブの刺激。だがこれらは誤れる「神話」に基づいていると喝破。

 「赤字財政」の神話とは、クリントンが「財政赤字」の削減に腐心し、成功した。莫大な財政赤字を抱えた国が経済停滞から脱出するには赤字財政の政策が欠かせない、という訳である。だが実際には「削減の成功は1990年代固有の理由によるものだった」。

 次に金融政策である。アラン・グリーンスパンの「根拠なき熱狂」は当時の株バブルに冷水を与える効果を持ったーはずだったが、結局彼は何も手立てを打たなかった。彼ーそして周囲もーは自分の「影響力」を過大評価していた。言葉を発するだけで金融政策を司れるーという神話である。

 本文のなかで一番辛辣な調子で論じられているのは「カリフォルニアのエネルギーの規制緩和」「銀行規制の緩和によるバブル沸騰」「粉飾決算による会計操作」を扱ったくだりである。(第4章から第7章)

 本書は前著と比較するとときおり熱い調子が垣間見れるし、著者も認めるとおり「経済学の範囲を超えて」論じられているテーマもある。しかし一貫しているのは「経済学への誤った理解が生み出す弊害」である過度の規制緩和が進んだのは市場メカニズムへの過度の信頼である。会計の不正操作が起きたのはエンロンや銀行などの情報を持てる者が、情報を持たざる者を騙そうとすることから起きる。

 こうした不均衡を是正するために、「イデオロギーに基づく政策ではなく、市場と政府の役割をバランスを重視する政策が経済成長と効率を促進する」ので、「政府と市場とのバランスの取れた役割を基盤とする新たなビジョン」を実現するために戦わねばならないと強調する。



3.  とても良い mkさん 書き込み日: 2003年12月01日

グローバリズムの欺瞞を滅多切り

今年2003年9月11日(同時多発テロのちょうど2年後)、WTOの閣僚会議が開かれているメキシコで、ひとりの韓国人農民が抗議の自殺をした。現在、世界で進行中のグローバリゼーションはアメリカ型のシステムを世界標準として導入しようとする試みであり、WTOは、IMF、世界銀行と並んでその強力な推進者である。その歪みがさまざまな場所で噴出している。

前著「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」において、世界経済の安定と発展途上国の援助を使命とするWTO、IMF、世界銀行がいかに歪んだ信念に基づいて行動しているか、その援助プログラムを受け入れた各国がいかに悲惨な状況に追い込まれたのかを描いたスティグリッツは、本書ではアメリカ経済政策の欺瞞を徹底的に暴くことによって、経済政策のあるべき姿を提案している。

外に対しては徹底的な市場の自由化・資本の自由化を押し付けながら、内に対してはウォール街の意向に従った金融至上主義的政策をとってきたアメリカ。その傾向は現ブッシュ政権においてより顕著になり、対外政策、対内政策が密接に絡み合いながら、アメリカ一国主義が推し進められている。

「経済とは何か」、「真のグローバリズムとは何か」。本書には現代を生きるすべての人が耳を傾けるべき真摯な言葉がぎっしり詰まっている。



4.  とても良い シリウスのヘルダーリン hoelderlin on siriusさん 書き込み日: 2006年12月10日

狂騒の米90年代〜グローバリズムにモラルを吹き込むことができるか

 市場経済が前提としない「個人によって情報や知識に差がある」という当たり前のことを経済学的に証明したことで知られる本格派の経済学者による経済社会批判。
 複雑化した企業会計が普通の経営者に不正を働かせる「インセンティブ」となっていることを告発する。衝撃的な前著で明らかにされたアメリカ自身の問題をさらに追究し、不況時にリストラと財政再建を迫るような押し付けられたグローバリズムが悲惨なら、「企業に融資をして事業を拡大させ、雇用を創出させる」本来の役割を担わなくなった銀行、「企業重役は不用心な株主からお金を盗んでいる」(160頁)、「弁護士はつねに金持ちを探す」(177頁)、「誰もが自分の金を奪いにくる者から・・・自分を守ろうと努力して」(226頁)いる社会が如何に悲惨であったかを説く。問題は回復されるべきモラルが、経済の内部の市場そのものにより実現されるのか、市場の外、あるいは経済の外まで含まねば回復されないのか、見極め切れていないことにあるようだ。



5.  とても良い さん 書き込み日: 2003年11月24日

ノーベル賞経済学者の情熱がつまった本です

アメリカの経済政策の欺瞞という本丸に真っ向から挑んでいます。
そしてニュー・エコノミーに対応した市場のあるべきバランス、そのために必要とされるモラルについて熱く語ってくれています。

情報のインセンティブの歪みがいかにバブルの膨張と崩壊を招いなのか、カルフォルニアの電気通信バブルやエンロンの正会計問題の根源にある問題を経済学的視点から探りだし、一流のアイロニーを効かせた口調で語る姿は、まさに「痛快!」の一言。



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