とても良い / 口コミ件数 : 45件
価格 : 770 円
尋常ならざる登場人物がぞろりぞろり出てくる。 小さな子供や赤ん坊さえも、その存在の中に醜悪さと悪意を見出せるような書き方である。 それが不快かといえば、そうではない。 その不気味さに魅せられて、魅せられてぐいぐい読まされる小説である。 ラストの、これまた通常の範囲外という終わり方は、これまたある意味衝撃的で、読後にはしばし放心し、その後「またこんな話が読みたい」という、飢えに襲われた。 しかしこういう小説は早々お目にかかれない。 傑作である。
匂い、香りだけが世界の全てだったら・・・。 読み始めてすぐに、ジャン=バティスト・グルヌイユのおかしな世界に夢中になるはずです。 悪臭の中生れ落ちたグルヌイユは、並々ならぬ生命力と忍耐で成長していきます。世界で唯一匂いのしない彼は他者に不安を呼び起こしながら、至高の香りを求めます。香りが全てであり、他者の生命すらも犠牲にします。そんな彼が手に入れた至高の香りは、何をもたらすのか。 読み進めるうち、匂いの奔流に圧倒されます。ぜひ体感してみてください。 映画化のためか、赤毛の女性が印象的な新しい表紙で店頭に並んでいました。
ある調香師の生い立ちから殺人者にいたる人生の軌跡。幼い頃は白痴だと思われていた主人公が物を認識するのに匂いで判別し、匂いによる世界を構築していく。究極の香水を突き詰めていって、美しい処女の人体から立ち上る匂いに至り、殺人を犯すまでになっていく。このように特異な世界を作り出し、最後まで飽きさせない作者の筆力に圧倒される。香りに敏感な方、価値観が変わります。一読をお勧め。
薦められるがままに買ってみた一冊。何の期待も知識もないまま、旅先への長いフライト対策として読んでみた。読み始めると、あまりに描写がリアルで細かくて、驚かされた。あんまりにも緻密なので、フィクションかノンフィクションかわからなくなり、混乱に陥ったほど。舞台は18世紀のフランスなのに、絶妙で粋な池内紀さんの訳だからか、たまに江戸時代の町人文化が浮かんでしまった。それにしても、へんてこで、奇妙で奇想天外なお話。途中、怖くなったり、あまりのグロテスクさに負けそうになる。けれども続きがどんどん気になって、一気に読んでしまった。結構長いお話だけれど、それを全く気にさせないほどのすごい作品。結末は衝撃的で、しばらく不思議な感じが続いた。読み終わったときには、嗅覚が鋭くなってまわりにあるもの全ての匂いが妙に気になったのは自分だけかな・・・。
この本の主役は嗅覚です。 本文中でも書かれていますが、目や耳は閉じればよく、口に入れなければ味もしませんが、臭いだけは呼吸とともにあるのでどんなときも鼻に入ってきます。同じ臭いでも、それに対する印象は人それぞれでしょうし、敏感さも違います。この本にあふれるにおいの描写に対し、頭に描くイメージも十人十色でしょう。こうした、読み手に主導権がある表現は活字ならではだと思います。主人公が作り出す究極の香水ははたしてどんな臭いなのでしょう? また、この物語の主人公には体臭がありません。シャミッソーの『影をなくした男』のように、誰でもが意識せずに当たり前のように持っているものを持たないということはそれだけで異形なこととして描かれており、この主人公の不気味さを高めているように思います。