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心臓を貫かれて〈上〉 (文春文庫)

心臓を貫かれて〈上〉 (文春文庫)

とても良い / 口コミ件数 : 11


価格 : 700 円





クチコミReview一覧
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口コミ件数:11 1 2 3 次ページ
1.  とても良い 鈴木さん 書き込み日: 2001年10月14日

心臓を貫かれて〈上〉

 よく翻訳書で「失敗した」と思うのは、その翻訳が不自然な日本語であるため、物語に気持ちが入り込めない時です。
でも、この作品は、まるで始めから日本語で書かれていたような、とても自然な日本語で、じっくり読むことができました。
 「普通の人」が殺人者となった瞬間はいつだったのか、殺人者の種はどこで蒔かれたのか。

 その謎を解くべく、ある殺人者の実弟が、兄の、そして家族の闇に包まれた歴史を解明していく様に、つい引きこまれてしまいます。



2.  とても良い bluepastaさん 書き込み日: 2004年02月29日

安易な回答や感傷を拒絶する

1976年夏、僕の兄ゲイリー・ギルモアは何の罪もない人を二人殺した。判決は死刑。ゲイリーは銃殺刑を希望し、執行された。何が兄を殺人に駆り立てたのか?長男フランクの失踪、次男ゲイリーの殺人、三男ゲイレンの変死を引き起こした、暴力と恐怖と失意に満ちたギルモア家のトラウマの歴史を、4人兄弟の末弟が、過去に遡って丹念に紐解いて行く……。

事実の持つ圧倒的な重みの前に、ただただひれ伏し沈黙してしまいます。読むあいだ、それほどの暴力と怒りがどこから生じるのか、という問いが私に付いてまわりました。自分ではどうしようもない心の傷というものが実在するのだ、と読後、私は人間を見る目が変わってしまいました。また読んでいるときに感じた深い悲しみはいつまでもリアルに残っています。しかし、本書には安易に回答を出すことを拒絶し、感傷も受けつけない、超越した何かがあります。何かを言いたいのだけれど、言葉が見つからない、そんな思いにとらわれる本です。



3.  とても良い まさみさん 書き込み日: 2008年06月21日

暗く深い井戸の底

少し前に売れた本に「Itと呼ばれた子」という本がある。
実母から壮絶な虐待を受けた被害者の一人称で綴った本だが、あれと同じこれでもかというえぐい暴力や虐待の露悪を期待して読んだ読者は裏切られると思う。
この本で著者の兄弟たちが受けた虐待は、いってしまえばありふれている。
単純な殴打や打擲やベルトでの鞭打ち(勿論それ以外の陰湿なものもあるが)……確かに酷いが、それほど異質かつ異常なわけでもない。

だが、怖い。
恐ろしい。

たとえば井戸を連想してほしい。
残虐を極める虐待の細部をリアルにグロテスクに詳述した本が無数の虫がうぞうぞ蠢き回る井戸を覗き込む行為だとしたら、この本は深く暗く底知れない井戸を覗きこむのに似ている。
闇を這う虫は肉眼では捉えきれず、底で蠢く気配だけが伝わってくる。
ただ、深く得体の知れない闇だけが広がっている。

その闇は底知れず、どこまで続いてるかわからない。
どこまで遡れば終わるのか、憎悪が取り結ぶ血の連鎖の終着点はどこか、まるっきりわからない。

だからこそ、怖い。
子供、両親、祖父母。
一体この井戸はどこまで続いてるのだろうか。
そう考えさせてやまないノンフィクションだ。



4.  とても良い gekkoさん 書き込み日: 2004年08月06日

この世でない世界からの言葉たち

この本に出会って以来僕はこの本を人生のバイブルにしてきました。
この本で繰り返し描かれる暴力と悲劇は、何故だか自分がどん底に
落ち込んでいるときに、心地よく感じられます。もちろん自分がこれほど
の悲惨な境遇にあるとは思えません。しかし、自分が色々なことに負けて
しまいそうになるときは、この本に出てくる様々な登場人物を見習って、

それらと戦っています。
 特に後半は家族のフランクを除く全ての人間が死んでしまいたった二人の
家族に焦点が当てられます。たった二人だけどかけがえのない家族。
よりそって非情な社会を寄り添って生きる著者のマイケルとフランクの姿が

どれほど美しいことか。そしてラストは衝撃です。“もう何も良くなんかならない。もう何も良くなんかならない”著者のマイケルが最後悪夢の中でつぶやいた言葉が耳から離れません。他にもモルモン教のエピソードとのリンクがこの物語に大きな深みを与えています。これ以上私は何も言いません。とにかくこの本を読んでください。そうすれば、この世ではない世界から発せられる言葉が聞こえてくるはずです。



5.  とても良い さらぴんさん 書き込み日: 2006年01月26日

おびえた

 村上春樹調がばりばりなので、苦手な人はこの分量がダルくなるかもしれない。
 読んでも別に、勉強になるとか生き方が見つかるとか、そういう類の本ではないと思う。ただ悲劇として楽しむだけになってしまうのかもしれない。
 そしてこれは、一大悲劇。
 どうしても何かから、それは家族であったかもしれないし、遺伝子であったかもしれないが、それから脱出できなかった者たちが送る痛々しい人生が描かれている。村上春樹調で言うと、とびっきり痛々しい人生だ。人並みはずれた才能や魅力を持つ者たちが、どうしてここまで自己破壊を行ってしまうのか、それを著者は明らかにしようとして、これを書いた。
 ミステリアスに、そしてときにはオカルティックに語られているので、飽きない。著者が本当に正直に書いているのも分かるし、意味の無い誇張や隠蔽も感じられない。内容とうらはらに、平和そうな写真の中の家族の姿も最悪だ。



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