良い / 口コミ件数 : 4件
価格 : 750 円
山岳小説の名手として著名な新田次郎氏の書く武田信玄。 1988年NHK大河ドラマ原作となり、つとに有名となった。 川中島の合戦の場面が、新田氏の特長のもっとも現われた場面と言えるか。 霧を勝負のアヤとして位置づけており、40年に及ぶ気象庁勤務の知識が存分に活かされている。 また、山岳に深い知識を持つ新田氏のことだから、 山深い甲斐・信濃の地形描写に優れている。 それは峠を挟んだ攻防戦の様子や、深山幽谷の青崩峠を越えゆく 西上作戦の描写などに活かされている。 そして、この作品で最も有名なのは、信玄を取り囲む美女たちの姿だろう。 とりわけ諏訪頼重の息女であり、信玄の側室となる「湖衣姫」の名は広く知られているが、 これは新田氏がこの小説の中で名づけたもので、史実の名ではない。 諏訪出身の新田氏にとって、運命の子勝頼を生んだ諏訪の方に対する思いいれは格別のものがあったろう。 その思い入れをこめて「湖衣姫」と名づけたに違いなく、 諏訪の湖水で洗われたような美女の姿をなまめかしく描いている。 作中では批判的に描かれる湖衣姫の父、諏訪頼重だが、 諏訪は上原城の麓、今も彼の眠る頼重院には、新田氏の碑が寄せられている。 「陽炎や 頼重の無念 ゆらゆらと」 ここに諏訪人としての新田氏の心境があるのではないだろうか。 (全巻通読のレビューです)
この風の巻きには若いころの信玄が描かれています。諏訪との対立や、信濃を治める難しさなどをまるで新田次郎さんが信玄を見てきたかのように書かれています。 しかし三条の方をあんなに醜く書くのは、どうかとはおもいます。
タイトル通り、武田家というより、武田信玄個人に スポットが当てられており、信玄の知略、展望、策略、思想等が 京上洛や戦に絡めて、一つ一つ細かく書かれています。 父・信虎との策謀、上杉謙信との川中島の決戦、 徳川家康との三方ケ原の合戦、桶狭間等々の戦は しっかり書かれています。 織田、豊臣、徳川とは違う側面で、読めると思います。 信玄死後の武田家に関しては、ほとんど書かれていません。 (信玄死後に関しては、別書武田勝頼に書かれてます。)
うーん、大作で面白いけど通俗小説。 武田信玄を善意の名将と描いている分、ライバルの武将(謙信、義元、氏康、信長)が 不当に貶められて扱われている感じがします。 あと三条夫人は完全な悪者として描かれています。 新田氏の作風は武田信玄、勝頼は絶対な正義として描かれていて 負の部分(佐久の圧制)を言い訳(病など)して描いています。 あと山本勘助の描き方も小物にしてしまって面白くありません。 どうも新田氏は従来の軍記は信用置けないと個人の合理的な想像で 書いてしまっているのですが その軍記自体、実は信頼性が出てきたのは近年の研究が実証しています。 完全に美化された武将像が好まれなくなった近年 この作品も昔ほど読まれなくなった感じがします。 (山岡荘八の徳川家康も同様) しかし読めば一気に読める面白さは持っています。 史実と切り離して、物語として読む小説だと思います。 追記 この作品を原作とした大河ドラマ(1988年の「武田信玄」)がありますが こちらの方は今見ても傑作です。