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おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1)

おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1)

とても良い / 口コミ件数 : 12


価格 : 610 円





クチコミReview一覧
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1.  とても良い ほしのやさん 書き込み日: 2002年10月01日

 これが作家の真骨頂

光太夫自身が書き綴った『北槎聞略』と読み比べてみてください。
この小説が,光太夫の記録そのものから,人物について,風景について,
イメージを膨らませていったものであることがよく分かります。
そして,それこそが作家の仕事なんだなあ,としみじみ感心しました。

『北槎聞略』は,光太夫が過酷な状況に臨んで発揮した特異な判断力と記憶力とで成り立った記録ですが,
それが刺激となって,作家は豊かにイメージを膨らませ,一つの物語にまでまとめてくれました。

そっけないぶんリアリティのある『北槎聞略』と,
物語として洗練された『おろしや国酔夢譚』と,
両方を読み比べることのできるこの贅沢。

光太夫も井上靖もありがとう。



2.  とても良い とし坊さん 書き込み日: 2006年03月31日

鎖国時代の命がけの交際交流と国家を問いかける書

 大黒屋光太夫という、歴史的には形作られていない人物を、井上靖さんは自らの創造で、ひとつの歴史を作ってしまったと言う感じの本です。
 僕は、大学時代にこの本を読みましたが、緒方拳主演の映画を見たことが、読むきっかけとなりました。
 
 時代は、江戸時代末期。鎖国時代の日本に、北からロシアの脅威が襲ってくるというモチーフでした。
 井上靖さんが執筆された当時は、東西冷戦の中で、北方領土をめぐる問題もあり、当時のソビエト連邦が脅威であり、日本にとっての仮想敵国。この本が歴史を現実に引き戻した感じでした。
 
 大黒屋光太夫が、乗組員とともにロシアに連行され、帝都ペテロブルグへ。苦労の末、帰国したものの日本では罪人扱いされるが、ロシア艦隊が来日すると、彼は両国の橋渡しとなっていく。
 そこには、国家とは何かを問いかけながら、国際交流の魁を痛感しました。



3.  とても良い greececatさん 書き込み日: 2004年11月29日

一人の人間の偉大さ

もし私があのような状況に置かれたら一体何ほどのことができるだろう。
光太夫という人の生き抜く力。
一商人でありながら世界というものに、その中の日本というものに気づく洞察力。
新しく出会うものに対して卑屈にならず、むしろそれを吸収する柔軟性と自信。
人や国に対する優しさ、尊敬を持って接する態度。
上等な人間の資質を持った人だったのでしょう。
歴史の中ではある一人の人物を借りて物事が大きく変わっていくことがあるというけれど、彼もまたその一人なのだと気づかされる。

映画も面白いですよ。



4.  とても良い @poor workさん 書き込み日: 2007年04月27日

人間の絶対的な孤独

大黒屋光太夫を主役に据えた時代小説。
彼と部下16名の漂流は無論史実であるものの、本書は記録小説ではなく、
井上靖作品らしいテーマをもって描かれた、人間ドラマと言っていい。

井上作品には、強烈な「生きるよすが」を持っている人物が数多く登場するが、
本作における光太夫もまさにそういった人物として描かれている。
その「よすが」は言うまでもなく「生きて故国の土を踏む」という一点。
酷寒の大地の上で、彼は決然とその日を信じて、前を向いて生きてゆく。
しかし本作における主人公は光太夫だけでなく、おそらく漂流民16人全員だろう。
帰国する者、ロシアに残る者、そして死んでいった仲間たち。
はじめ想いを一つにしていたはずの彼らも、いずれ運命はそれぞれの方向を向き、
別々の道へ向かって行かざるを得ない。
”人間はそれぞれ独立した存在であり、心も体も、絶対的に孤独なものなのだ”
交錯する彼らの運命から、井上氏はそれを伝えたかったに違いない。

そして10数年の流浪の末に光太夫がたどり着いた場所で見たもの。
人の心の置き場とは一体どこにあるのか?
すべてが一酔の夢であったかのような彼の人生が、読者の胸に余韻を広げる。



5.  とても良い ageeeさん 書き込み日: 2002年08月04日

さすがは大御所の執筆

最近、こういう漂流民ものをよく読んでいますが、この本は、たいへん
読みやすいと思いました。さすがは井上靖氏なのかな。

光太夫の漂流記です。非常に詳細に書かれているところはいいんですけど、
和暦が、いつのまにか西暦になっていて、ここのところが、ちょっと曖昧で
す。ただ、そういうことが、気になる人は少ないと思いますが。

シベリアの放浪ものでもあるので、暑い夏には特にオススメ(?)



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