本書最後の付記には次のように書かれている。 「各項目の(中略)文献に(中略)興味のある読者は大きな図書館などで調べていただければ(中略)新しい歴史を自分の目で見るようになるのは確実である」(176頁) また、信頼のできる史料を普通に読んで合理的に書いたとも記されている。 確かに、内容自体に大きな間違いはない。 だが、参考文献があまりにも少なすぎる。 加えて、明白な意図に基づいて選択されている。 すなわち、日本は悪くない、と。 メンバーも明記されない三代史研究会とは一体何なのか? 彼らは、数々の常識を野心的に覆している。 しかし、いずれも重箱の隅をつつくような些細な事象で 歴史の流れを変えるものではない。 そして、批判は決まって法律や制度や高官の発言に依拠して行なわれる。 例えば、満州国皇帝溥儀を扱った箇所では、 溥儀が関東軍の言いなりではなかったと結論付けている。 が、その根拠は溥儀の発言にしか求めていない。 また、議会が軍部から独立していたという話題も、 憲法や一部の勇敢な議員を持ち出して論じているに過ぎない。 この文面からは、当時テロが頻発していた事実は微塵も感じられぬ。 新書という性格上、極めて読みやすく工夫されていることは評価できる。 ただ、その入手のし易さが、国民に誤った歴史観を植え付けはしないかと 懸念される。 有識で判断力のある方なら読まれるのもよかろうが、 まったく専門外という方は読まないでほしい。 もっと、知らなければならない歴史はたくさんある。 文春新書でも、『昭和の論点』,『二十世紀日本の戦争』は優れていたが、 本書を出版したことで、同社の良識が問われる。 あまりにも多くのトピックを詰め過ぎて、 根拠は希薄になり、結論だけが一人歩きする悪書である。 岩波新書あたりあから、批判書が出版されることを切望する。 読まれる方は、どうか気軽に読むのではなく、 責任や信念を持って、真剣に読んで下さい。 そして、決して本書に影響されないだけの良識を持ち続けてください。 |