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ニッポンの小説―百年の孤独

ニッポンの小説―百年の孤独

とても良い / 口コミ件数 : 8


価格 : 2,350 円





クチコミReview一覧
評価の高い順 評価の低い順 書き込み日の新しい順
口コミ件数:8 1 2 次ページ
1.  とても良い ののこさん 書き込み日: 2007年01月15日

久々の著作です!評論だけど……。

高橋源一郎氏の久々の著作です。
もっとも、小説ではなく評論なので彼のアヴァンギャルドな小説を期待している人には
オススメできないかもしれませんが……。

高橋源一郎の評論のすばらしいトコロは、
<言葉>を使う時に彼独特の言語感覚で細心の注意を払って用いること、
誰かの借り物の考え方のときは正直にその出自を記すところ、
権威づけられた近代文学も流行の小説も同じように取り扱うこと、
そして、評論でありながらどこかリリック(詩的、抒情的)で、
「まるで小説のよう」であることです。

それから、文学評論の中には読み終わると滅入ってしまうものも多い中、
彼の評論は最終的には「希望のある」終わり方になっていることです。
もちろん、それは単なるリップサービスかもしれない、
でも、読み終えたとき快感を感じるかどうかは、評論であれ小説であれ、
けっこう大事なことだと思うのです。

ある程度知識がないと読むのに苦労する本かもしれませんが、
私は★5つけさせていただきました。



2.  とても良い キャラメルマキアートさん 書き込み日: 2007年05月14日

泣けます(40代女性)

 ちょうど「ゴーストバスターズ」刊行の前に、高橋源一郎がしばらく小説を発表しなかった時期があって(すみません、ずいぶん昔の話だね)、源ちゃんはこのまま小説を書かなくなってしまうのか……ということが当時の自分には深刻な問題だったんだけど、つまり何が言いたいかというと、源ちゃんは、本書に書かれた若き日の、恋人を前にしての失語症以来、恐らく失語症を繰り返し、つまり、いつでも「文学」あるいは「ニッポンの小説」に対して真摯な態度を取り続けている。
 源ちゃんの書評や文学論もずっと読んできたし、読んできた、というよりはもう、それが文学観のスタンダードに自分的にはなってるんだけど、この本はその集大成というか、もうこれでもか、みたいにわかってほしいという気持ちが漲っている。そう、源ちゃんが「文学」や「ニッポンの小説」について書いたものを読むと、いつも泣きたくなるんだよね。もうそれはどんな難病ものより「文学」や「ニッポンの小説」が難病に罹っていて、どんな純愛ものより困難な純愛を源ちゃんが「文学」に捧げているからだ。
 「JJ」に連載される吉田修一の小説を探す章も、「死」を描いた小説は無数にあるのに、そのどれも実は「死」を描いていないのだ、という章も、「それは文学ではない」と言われる小説について書いた章も、何度も読み返したくなる。とりわけ詩人・荒川洋治の厳しい文芸時評をともに読む章は……小説を読む誰もが、小説を書く誰もが、胸を痛める……筈。痛いです。
 “それでも、わたしは、小説を書き続け、小説について考えつづけるにちがいありません”という結びに、思わず涙。小説を書く、ということは、小説とは何か、ということを問い続けることなのだ、という事実を、源ちゃんはいつでも思い出させてくれる。
 



3.  とても良い ゆびあん水さん 書き込み日: 2007年06月09日

あああ、ああ、そうなんだ!

はじめに高橋源一郎さんの他の作品の熱心な読者ではないことをお許しください。

プロローグ、エピローグにはさまれ、4つの講義にわかれています。

 その小説はどこにあるのですか?

 死んだ人はお経やお祈りを聞くことができますか?

 それは、文学ではありません

 ちからが足りなくて


他の3つは、難しかったということもあったのですが
「その小説はどこにあるのですか?」はとっても感銘を受けた。

ヨシダシュウイチという小説家が、
ファッション誌JJで「キャラメルポップコーン」という小説を連載しているが
情報が氾濫しすぎていて、小説が埋もれてしまっていて、小説がどこにあるのかわからない、
というタカハシゲンイチロウ氏の戸惑いを綴ったものだ。


ようやっと見つかっても、ファッション礼賛のJJ界では、小説は色あせて見える。

やっぱり小説は、そのようなハタケ違いの場所で書くものではなく、
ある程度おなじ世界観のところで書かれるべきではないか。

だけど、
この作者は、おそらく無意識のなかに、外部との接触を望んだのではないでしょうか。
とタカハシ氏は話す。

つまり作者は、ブランド情報の混乱する渦中で、
弱い立場ながら小説を書くことをあえて選んだ、と。


また
タカハシ氏は、明治40年の朝日新聞をめくり、
やはり同じように
「その小説はどこにあるのですか?」と、そこに載ってるはずの小説を探す。


 彼の友人たちは、その作者に、そんな場所で小説を書くなんて馬鹿げていると忠告しました。
 きみの小説は、文学ならざるものの中に埋没することになるのだ、と。

 だが、結局、その作者は、その場所で書きはじめることを選びました。
 小説というものは、とりたてて小説に興味を持たない、単なる通行人にすぎない読者に向かってこそ書かれるべきだと
 彼は考えたのです。


この彼が誰なのか、ここでは言及されておらず
鈍い私は読了後も分からずにいました。

そして、平成の朝日新聞のある連載を読んで
ふっと気付いたとき
 
 あああ、ああ、そうかー!!

と叫びたくなった。

これは、明治時代に
日本語で文学を行なう価値をその自らの筆致で証明した
夏目漱石先生だったのですから。

活字で表現すること、紙に文字を書きつける、ということの
ちから強さを感じる本。



4.  とても良い yoshioki6さん 書き込み日: 2007年02月27日

買いです。

「文学界」に連載中の長編評論の、待望の単行本化です。「文学界」(本体を買う人の数より新人賞に応募する人の数の方が多いという噂はホントでしょうか)自体は久しく手に取っていないので、連載されていたことは知っていましたが、目を通すのは初めてでした。保坂和志氏も最近二冊目(「小説の誕生」)を刊行した、「小説」というフォームの在り方や、その読み方に関する迂遠(そう感じるのは自分の鈍感さゆえかもしれませんが、「迂遠」は良い意味です)な評論です。一回ずつには限定された量はあるのでしょうが、回数には「続けられるだけ」といった余裕があるのでしょうか、思うだけ言葉を尽くしている感じが心地よいです。内容的には、「言語を<意味>でなくて<価値>で表現しようとする詩の本質」という吉本隆明の言葉を最後に引用しているところに、「現実を<意味>でなくて<価値>で表現しようとする小説の本質」と考えていると思われる作者の姿勢が、我々に「小説を<意味>でなくて<価値>で表現しようとする本書の本質」と読み取るように促しているようで、作者の意が尽くされているのではないかと思いました。



5.  とても良い モワノンプリュさん 書き込み日: 2007年01月19日

これはもちろん小説です(小説は楽しむもので、信じるものではありません)

 実はプロローグの、「大きな事件があって、人々が放心状態に陥ると、まず必要になるのは薬や食品や水ではありません。毛布や、救助犬や、軍隊でもありません。なにより、言葉なのです」(p11)という一節で躓いてしまった。そうだろうか…

 人は「物語」なくして生きられない、と著者は言う(p70)。そして同時代の雑多な言葉の只中に身を置いて「物語」を立ち上げよ、と呼びかける。しかし続いて、「死者の代弁」という旧来の武器に無効宣言が下される。「死者」という言葉の鮮烈さに惑わされてはいけない。要するに、「代弁=表象は不可能」と言っているのだ。

 だが表象を禁じられ、絶句しつつ語ることが、いかに可能か? 「<意味>では(中略)解消しえぬ『意識の奥底にあるもの』を救出する」(p393)のは<価値=無意味>だ、と著者は言う。「小説」という自己言及的<意味>のみを残す小説…

 著者はプロローグで、無から生じて無に還るブエンディーア家の歴史を描いたマルケス『百年の孤独』を、「ニッポン文学」の運命の喩としている。そして自分を、消え去ろうとしている一族の歴史を記述する最後の子に擬す(p22)。他方、文学を人と人がコミュニケートする一手法であり、「器(=言語)」を作り、また壊す一連の行いそのものと定義した上で(p39)、瓦礫のみが残った今こそ、一からはじめる条件が揃っている、とも(p42)。

 しかし小説を<無意味>にまで追い詰めておいて、本当にその次があるのだろうか? このような強迫的な「物語」は、最初に掲げた「はじめに言葉ありき」という前提の下でしか成立しない、幻のようなものではないだろうか? まるで自分の周囲の地面に円を描いた子どもが、その円に呪縛されて立ち尽くしているような…



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