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天皇と東大 大日本帝国の生と死 上

天皇と東大 大日本帝国の生と死 上

とても良い / 口コミ件数 : 15


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1.  とても良い gg2さん 書き込み日: 2006年01月22日

右翼を軸に近現代史を読み直す

明治・大正・昭和前期までの日本の近現代史を主に「東大」を舞台に解読した歴史ノンフィクションである。著者の問題意識は、「はしがき」の次の文章によく表わされている。

《私は一九四〇年生まれで、終戦時五歳。北京在留の日本人一家として、終戦とともに引き揚げのための苦難の大旅行を敢行させられた世代である。(略)そういう世代であったればこそ、私は子供のときから、日本はどうしてこんな国になってしまったのか、なぜこんな大失敗をしてしまったのかを、最大の疑問として生きてきた。(略)本書は、私以上に歴史を知らなすぎる世代に対して、もう少し、現代日本の成り立ちを知っておけよというメッセージをこめて書いた本である》

ひとつ一つの事件に関しては他の成書をあたったほうが、わかりやすいような気もするが、一次資料からの引用を縦横に駆使して、これだけのボリュームで一書に纏め上げられるとやはり大変な迫力である。

読みどころは二つある。一つは当時の日本の右翼運動の盛衰を詳細に記述していることだ。戦前の右翼運動を精査するうち、著者は《あの時代は、後世の我々が考えている以上に右翼的、国粋主義的であった》(下巻638ページ)と感じている。《一般国民のほとんどが、いまでは極端な右翼的見解としか思えないことを、みんな本当に信じきっていたらしいのである。》もう一つは、断続と継続というテーマである。歴史においては今日の勝者が明日の敗者となり、また逆も起こる。具体的な人物の具体的な事例とともにこの真実が語られると、感慨を催さずにはいられない。

上下巻注も含めると1500ページにおよぶ大著であるが、「文藝春秋」連載をまとめたものなので章ごとの区切りをうまく使えば、どんどん読める。大学生ぐらいの若い読者に読んでほしいが、本書を面白く読めるのはある程度予備知識を持った中高年の読者のような気がする。



2.  とても良い biasさん 書き込み日: 2006年01月10日

オモシロ過ぎるのが問題なくらいオモシロい

表面上は、いわば多士済々の東大三国志。
上巻では、東大の中の東大ともいうべき法学部を中心に、天皇主権説の上杉慎吉VS.天皇機関説の美濃部達吉の一騎打ち。
下巻では(その美濃部が時代のうねりの中で国粋主義者に攻撃され退場し)、経済学部を主舞台に、マルキスト大内兵衛、国策賛美の土方成美、社会民主主義の河合栄治郎の三派が繰り広げた文字通り合従連衡の攻防が綴られる。
章ごとに登場する脇役も多彩、逸話も豊富で、あんまりオモシロ過ぎて、提起された問題の重要性を忘れるほどだ。
だが本書の本質は、天皇という存在を国の中心に据えた近代日本の宿命を、なぜその宿命をよびよせてしまったかという回答のヒントを日本最初の帝国大学に求めた意欲作である。表面上のオモシロさを超えて、残る読後感は、重い。



3.  とても良い ludwig ?Vさん 書き込み日: 2005年12月20日

迫真の近現代史

連載当時は、時折文春を買って「やけに長い連載だな」程度にしか思っていなかったが、こうしてまとまった物になってみると、これは実に面白い本で、面白すぎるとさえ言っていい。間違いなく立花隆の代表作の一つになるだろう。

この本の特色は、歴史に対する距離感にあると思う。著者自身、「政治学の、あるいは歴史学の論文のようにではなく、ノン・フィクション・レポートとして、あの歴史的大転換期のドラマを描いてみたいと思った」と言っているが、その狙いどおり、これは迫真のドラマ、臨場感に満ちている。通常の歴史書が、薄曇りの窓を通して外を見ているようなものとすれば、この本は少なくとも窓を開け放ち、その空気までそれとなく感じる、そんなところまでいっているような気がする。一歩も二歩も歴史に近づいた感があり、頭ではなく、もっと奥まで届いてくる何かがある。確かに、こうして歴史を学ぶなら、今は今、昔は昔、と安閑に済ます気にはならないし、歴史自体に対する興味も、いやがうえにも増してくる。長い間積ん読にしてきた「天皇機関説事件」(宮沢俊義)に今一度手をつけようかと、本気で考えているくらいで、インパクトの強さは、ほとんど無類と言ってもいい。



4.  とても良い 地球のイロハ出張所さん 書き込み日: 2007年09月10日

東大は天皇を通じて国体を理論づけた。だから「天皇と東大」

本書は、東大内外の天皇機関説と天皇主権説の対立を通じ、なぜ戦前の立憲主義体制が軍国主義に転換してしまったのかが描かれている二冊である。

天皇機関説は「明治憲法秩序における天皇の位置づけ」という形を通じて、立憲主義体制の理論的背景になっていた。言い換えれば、戦前の社会体制は、東大の学者が天皇の地位を理論づけることで成立していたことになる。そのため、右翼が国家体制を転換させるには、天皇機関説を破壊しておく必要があった。右翼は立憲主義者をアカ呼ばわりすることで、天皇機関説を破壊し、軍国主義への転換に成功したのである。

戦前の日本政治思想は、愛国主義(右翼)・立憲主義(保守)・共産主義(左翼)と分類できる。右翼と左翼は現行体制(保守)を革命により潰そうとしていたのである。1930年代の立憲主義から軍国主義への転換は、この右翼による革命を意味する。戦後社会では保守主義が愛国主義にかわって右翼と呼ばれるようになったが、21世紀に入った頃から愛国主義が蘇ったことにより、再び保守主義が愛国主義にのっとられそうな情勢である。日本共産党を批判し「左翼の敵」と呼ばれてきた立花隆氏を左翼扱いする風潮はその現れではなかろうか。

立花氏の著作といえば、莫大な資料にあたってそれをまとめあげることで、一定の視点を読者に提供してくれる点で評判が高い。近年、科学技術の分野で疑問の残る本を出してきたが(いくら興味があっても、資料をまとめあげる形では優れた文章にならない分野だからだろう)、本作は彼の執筆活動に適合しており、優れた文献である。

ただ「東大法学部が天皇論を通じて国体を形成してきた」という戦前の歴史を踏まえる上で、脱線した部分が目立ったように思う。その話自体は面白かったのだが、一冊の本として読むと散漫な感じがしてならない。特に経済学部の話については、法学部に影響を与えた部分に留め、別の本にすべきではなかっただろうか。



5.  とても良い 星の降る夜さん 書き込み日: 2006年09月09日

教えられなかった日本の歴史

中学高校の日本史では教えてもらえなかった、明治から昭和にかけての日本の歴史のいったんを見ることができました。
正直、本の内容はむずかしく、原文をカタカナでかかれてもちょっとしんどかったです。
どうして、日本の官僚は東大出身者でかたまっているのかや
前の戦争がどうしておこったのか、5・15から2・26事件など、学校の歴史の時間では「へー、そうなんだ」で聞き流していたことが、「そうだったんだ」と、少しだけですが納得できました。
この本を読むこつは、興味があるところだけ読むということだとおもいます。
上下巻をよみ終えた感想は、しんどかったけど、素直に「おもしろかった」です。
お勧めします。ぜひ、読んでみてください



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