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東大は天皇を通じて国体を理論づけた。だから「天皇と東大」 |
本書は、東大内外の天皇機関説と天皇主権説の対立を通じ、なぜ戦前の立憲主義体制が軍国主義に転換してしまったのかが描かれている二冊である。
天皇機関説は「明治憲法秩序における天皇の位置づけ」という形を通じて、立憲主義体制の理論的背景になっていた。言い換えれば、戦前の社会体制は、東大の学者が天皇の地位を理論づけることで成立していたことになる。そのため、右翼が国家体制を転換させるには、天皇機関説を破壊しておく必要があった。右翼は立憲主義者をアカ呼ばわりすることで、天皇機関説を破壊し、軍国主義への転換に成功したのである。
戦前の日本政治思想は、愛国主義(右翼)・立憲主義(保守)・共産主義(左翼)と分類できる。右翼と左翼は現行体制(保守)を革命により潰そうとしていたのである。1930年代の立憲主義から軍国主義への転換は、この右翼による革命を意味する。戦後社会では保守主義が愛国主義にかわって右翼と呼ばれるようになったが、21世紀に入った頃から愛国主義が蘇ったことにより、再び保守主義が愛国主義にのっとられそうな情勢である。日本共産党を批判し「左翼の敵」と呼ばれてきた立花隆氏を左翼扱いする風潮はその現れではなかろうか。
立花氏の著作といえば、莫大な資料にあたってそれをまとめあげることで、一定の視点を読者に提供してくれる点で評判が高い。近年、科学技術の分野で疑問の残る本を出してきたが(いくら興味があっても、資料をまとめあげる形では優れた文章にならない分野だからだろう)、本作は彼の執筆活動に適合しており、優れた文献である。
ただ「東大法学部が天皇論を通じて国体を形成してきた」という戦前の歴史を踏まえる上で、脱線した部分が目立ったように思う。その話自体は面白かったのだが、一冊の本として読むと散漫な感じがしてならない。特に経済学部の話については、法学部に影響を与えた部分に留め、別の本にすべきではなかっただろうか。 |
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