とても良い / 口コミ件数 : 14件
価格 : 2,205 円
この本の著者は暗殺されました。 まずこの事を知ってからこの本を読むべきでしょう。 ロシアの近代史ー 何がありましたか? ベルリンの壁、チェチェン、国境間の国々を力で押さえつけるロシア政府。 そして資本主義を一部取り入れることにはなったものの根強い政府の情報統制。 この本を読むと北方領土やロシア近辺で拿捕される日本の漁船などの問題は ロシアの恐ろしさの片鱗でしかないと知ることになるでしょう。 まずこの本が描いているのは「こうなるだろう」ではなく「こうなった」であることに注意が必要です。 全て実際に起こった惨事を描いているだけに、読んでいて背筋が凍る思いがします。
汚職の蔓延、軍隊の規律の乱れ、戦場での人権無視・・・プーチン時代の暗部を、丹念な取材とインタビューで描き出す。 だが、本当にやるせなくなるのは、これはプーチンのせいでありながら、プーチンのせいではないということ。 つまり、このような時代背景を作ってしまったのがプーチンだとしても、実際に汚職をしたり、民族差別をしたりするのは「普通のロシア人」であり、プーチンはそれを黙認しているだけ、だということだ。 これについては著者も指摘しているのだが、なんとも暗澹たる思いがしてしまう。 著者ポリトコフスカヤ女史の暗殺は、なんとも痛ましい。 このような著書を多くの人が読むことで、彼女のジャーナリズム魂が、今後も引き継がれていって欲しい。 英語からの訳とはいえ、ロシア語の語彙についての訳は相当にしっかりしている。 英語からの重訳にはあきらかな翻訳ミスが多いため、非常に評価できる。
昨年,著者が殺害される少し前に読み終えましたが,今でもロシアに対する憤りを感じています. BRIC'Sの一つとして成長著しいロシアでおこっている社会問題を切実にまとめてあります. チェチェン武装勢力による北オセチア学校占拠事件で何が行われたか, 秩序も正義もないロシア軍の現状,金で動くろくでもない司法など, 一般の私達が映画などで知る不確かな世の中の裏の話が本当におこっている. 読んでいて感じるのは著者が母国ロシアを非常に好いているのだろうなという点. 母国をよくするために書き上げたという気持ちが伝わってくるので 読者も真剣に読み進められるのではないでしょうか. ただ問題だけ紹介してあげあしをとることに終始している日本のジャーナリストには見習って欲しいですね. ロシアに問題があることはもちろんですが,西欧諸国にもその責任があると言及している点は 控えめながら主張してあります.確かにそうです. 著者にはロシアにとどまらず,世界の諸問題についてもまとめて欲しいと感じました. あくまで憶測ですが,出版に際しては強い圧力があったと思いますので, ロシアでこのような本を出版した著者と編集部に最大限の賛辞を送りたいです.
この本を手にした時,最初感じた事は,重い内容にもかかわらず一旦読み始めたら読み終える迄やめられない程読者を引きつける本であるという事。私は随分昔ソ連に留学すべくロシア語を独学した事がある。当時のロシアの文化、風習に至るまでかなり調べた。心配しなければならないことが沢山あったけれども、留学したい一心でそれらの事には目をつむったものだった。ところがこの本を読んでみて、今のロシアがその当時のロシアとほとんど変わっていないと感じた。 著者ポリトコフスカヤが暗殺されたニュースが世界に流れた一時間以内にそのことを知ったとき、“ああやっぱり……”とまず感じた。そのニュースが必然と思わせる程ポリトコフスカヤは プーチンという偶像(実在ではあるが)を通して今のロシアの現実を勇敢にこの本をもってあばこうとした。読んでいて、本の中の世界に入って行ったのはいうまでもないが、時々現実に引き戻されてこんな事を書いて大丈夫かなと思ったものだった。この本を読んだのは彼女が暗殺される一年前だったがその予感が的中したのが不思議に思えないくらいこの本は今のロシアの現実、プーチンが世界に知って欲しくない事、が赤裸裸に書かれている。世界情勢に興味のある人は誰もが一度は読みたい本の一つ。 ポリトコフスカヤの兆一流なジャーナリズムがこの本を忘れられないものにしている事はもちろんだが、その一流なオリジナルの本の質を損ねる事なしに翻訳した鍛原多惠子氏の非常に注意深くしっかりとした翻訳無くしてはこの本の輝きは失われていた事だろう。それが英語版からの翻訳といえばなおさらのことである。私はロシヤ語からの翻訳本をたくさん読んだが、その多くは直訳の索漠としたものであった。しかしこの本は読んでいて至極スムーズに進めた。翻訳者が ロシアの事情と日本語の両方の宿題を余程しっかりしたのだろう。こんな翻訳書ならまた次の本を読んでみたい気がする。
原油高騰もあり空前の好景気に湧くロシア。”新ロシア人”と呼ばれる新興上流階級が出現し、見かけ上はソ連から生まれ変わった新しいロシアとして再生しつつあるように思える。しかし内情は惨憺たるものだ。地域格差は烈しく、国民の三分の一以上に当たる五千万人以上が平均賃金以下の極貧生活を強いられている。それでも国民は声を上げることが出来ない。立法も司法もマスコミも完全に政府の支配下にあり、賄賂と暴力が社会を支配している。経済は合法化したマフィアが牛耳り、それらは全てロシア政府と繋がっている。国民は常にKGBの後身FGBに監視されており、体制に批判する者は容赦なく迫害される。チェチェンでは今も犯罪が繰り返されている。この本はプーチン個人についての本ではない。虐げられ絶望の淵にある多くの名も無きロシア人たち一人一人への丹念なインタビューを通じて、プーチンの帝国の内情を暴き出している。日本ではなぜか人気のあるプーチンだが、無慈悲な独裁者としての素顔を日本人はもっと知るべきだと思う。