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グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

とても良い / 口コミ件数 : 60


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クチコミReview一覧
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1.  とても良い P.シロッコさん 書き込み日: 2007年03月21日

内容よりも雰囲気を訳した作品

私は現在アメリカのロスアンゼルスの高校三年生ですが、此処では「グレート・ギャツビー」は必修科目です。高校三年の英文学のカリキュラムはアメリカ文学史。ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、スタインベックと進んでいきますが、その中でも一番重点を置かれるのがこの「グレート・ギャツビー」。私が村上訳を読もうと思ったきっかけは、私の英語の先生が「日本で有名な作家のムラカミという人がギャツビーを訳したが、それはとてもいい訳だとウォールストリート・ジャーナルで読んだ。是非読んでみないか?」と進めてきたからです。

三島由紀夫を英語で読んでもいまいちなように、フィッツジェラルドを日本語で読むなんて!と最初はあまり乗り気ではありませんでしたが、「ノルウェイの森」や「海辺のカフカ」など他の村上さんの作品は愛読していたので、「まったくイメージが違ったとしても、『村上の作品』として読めばいいかな」と思って注文し、読んで見ることにしました。

原文でかなりの衝撃を受けた私ですが、この訳にはさらなる衝撃を受けたといわざるを得ません。訳が見事なのはもちろんですが、あらゆるギャツビー関連のエッセイを授業で読んだ上で、なんともいえない解釈の深さに驚きました。言語が違ってしまうと醸し出す雰囲気も当たり前のように変わるものですが、村上さんの描くギャツビーは、まさしく僕のイメージのギャツビー、いや、アメリカで学ぶフィッツジェラルドの描こうとしたギャツビーそのものなのです。

ただ単に、筋が通るように語句を並べて訳しているのではなく、フィッツジェラルドの原文に等しい「雰囲気」を作り出すように丁寧に言葉を選んでいるのが伝わってきます。もちろん数箇所は「ここは(作り出す雰囲気が)原文の通りじゃないな?」とか「あれ、此処は意味が隠れているはずなのにな?」と思うところもありますが、それ以外は「もしかしてフィッツジェラルドって日本語も書けたのかい?」と思わず唸ってしまうほどの出来です。

ヘミングウェイやカフカの和訳でよく見られるように、訳された作品には「内容」を重んじたものが多いです。つまり、同じストーリーは伝わるのですが、そこから感じられるイメージ、雰囲気、感情の揺らぎなどはなかなか伝わりません。和訳を読んでから原文を読んだり、その逆をしたりすると「あれ?このキャラクターってこんな風に思っていたんだ」と驚いてしまうことが多いです。

しかしこのギャツビー、全てのキャラクターが、原文と同じように考え、行動し、会話や動きからは原文と同じ雰囲気を作り出してくれます。これはもう、神業です。かなりのギャツビーファンとして、映画版も何バージョンか観ましたが、それよりもこちらのほうがより正しく、よりフィッツジェラルドらしいムードを作り上げてくれます。

原文を読んだことある方も、「いい作品と聞いていたけど、結局は訳だからなぁ……」と悩んでいる方にも、是非是非お勧めです。

唯一気になる点は、「Gatsby」は「ギャツビー」ではなくずっと「ギャッツビー」だと思っていたところですかね。人によって発音は違うみたいです。アメリカでは後者が主流。(笑

以上、文学ヲタによるレビューでしたっ。



2.  とても良い bluejaguarさん 書き込み日: 2005年07月06日

傑作!

語り部である"私"が、はじめてギャツビーを見かけるところ。夏の夜、海の入り江の向こう岸に向かってギャツビーが手を広げて震えている場面。"私"は、彼が見ている方向を見ても、一つの小さな緑色の光が見えるだけで他には何もなかったという下り。素晴らしく印象的で、ギャツビーの性格、そしてフィッツジェラルドという作家の本質を良く表していると思います。失ったものを取り返そうとする焦燥感。上辺だけの嘘。空虚な人間関係。無気力さ。悪。そして激しい恋心。そういった要素が浮かんでは消え、気怠く展開していくこの話を何回読んだのかな。Matthew J. Bruccoliが序文を付けたこの版では、何バージョンかある原稿の中から、フィッツジェラルド自身が最終原稿としてまとめたもの。つまり、彼自身原稿を何度も何度も書き直しているということであり、この本こそ彼の最終原稿であるという訳です。フィッツジェラルドの著作の中では、構成力と登場人物の性格づけという意味においても最高傑作かと思います。大推薦!



3.  とても良い 彦一さん 書き込み日: 2007年08月14日

最高の曲を、天才がアレンジした音楽

言わずと知れた、村上春樹さんによる翻訳の話題作です。
村上さんは、これまでにも様々な海外小説(特にアメリカ小説)を翻訳なさって、紹介されていると言うことです。僕はハルキストといかないまでも、村上さんの小説は大好きで、沢山読んでいましたが、正直翻訳された小説は読まないできました。
というのは、村上春樹はオリジナルの小説家であって、人の小説を訳すサブの仕事(翻訳者の皆様すみませんm(__)m)には向かないのではないか、村上春樹が訳せばどんな作品も村上節(?)になってしまい、原作を楽しむといった意味では、プロの翻訳家の方のものを読んだほうがいいのではないか、と勝手な独り決めをしていたからです。
それでも今回「グレートギャツビー」を読むにあたって、村上訳を選んだのは、同じく村上訳で先行して話題となっていた「キャッチャーインザライ」の訳業より本作のほうが評価が高かったようだからです。(「キャッチャー…」は「これは原書とは違う、村上作品である」との評が目立ちました。)

読み終えて、僕の考えが、全くの杞憂に過ぎなかったということが分かりました。
「あとがき」を読まずとも、訳全体から村上さんの原作に対する並々ならぬ思いが伝わってきます。「自分をゆすぶったものを読者に正確に伝えられるだろうか」という、怯えにもにた細心さと天才的な感性で、一語一語訳されている本作は、結果として村上色に染まっているものの、それは原作のもつ輝きに対する完全な奉仕の結果、自ずとにじみ出てきたようなもので、とても好ましく感じられました。
読み始めると、「翻訳・村上春樹」の名前がぼかされてゆき、徐々に1920年代のアメリカが浮かび上がってきます。
内容は読んで頂くとして、僕が驚くとともに感心したのは、全てのシーンが、ビジュアルとして立ち上がってくることです(付け加えれば、音楽も響いてきます)。それはさながら映画の名シーン(ハイライトという意味ではなく、深みのある洗練されたという意味で)をよどみなくつなぎ合わせたもののようでした。
いや、それ以上です。映像として現そうとすると零れ落ちてしまう、捨てざるを得ないものを全て含んでいるからです(抽象的な言い方ですいません)。あまりにも完成されていて、これでは読書の楽しみの大きな部分を占める(と僕は思う)、「読み手の自由(想像力)」をほとんど奪い去ってしまうのではないかと、要らぬ心配をしてしまう程でした。(原作の持つ力なのか、翻訳の手腕なのかは、原文を読めない僕には判断できません。)
「芸術作品としての、映画に対する小説というジャンルの優位」ということを、改めて思い知らされました。
数え上げればキリがありませんが、個人的に1番好きな場面は、ギャツビーが初めて登場するシーンです。僕はかつてこれほどしびれる登場シーンを見たこと(読んだこと)がありません。

小説家としてだけでなく、翻訳者としても村上さんがとてつもない才能を持っていることを感じさせられる作品です。




4.  とても良い パンタロンさん 書き込み日: 2006年11月20日

素晴らしいかもしれない

 野崎訳の同書を読んで、なんとなくその素晴らしさをわずかに感じていました。でも、それがどういうことなのか分からない。フィッツジェラルドの来し方に触れるものであるということは間違いない。でも、そこに何があったのだろう?そう思って野崎訳を数回読んだものです。
 そして、今回村上春樹訳の本書が出るということで期待して読みました。前々から、村上さんは「グレート・ギャツビー」を翻訳したいと色々な場で言ってましたし、「ノルウェイの森」にも出てきました。それを知っていたので、「いよいよ来たか」という感じでした。
 読んだ感想としては野崎訳とは違うものでした。とにかく読みやすい。意外に古い作品なんだってことを再認識させてくれました。今まで、そう思わせなかったのは野崎孝という翻訳家の才能によるものでしょう。
 ニック・キャラウェイの立ち位置、ジェイ・ギャツビーの悲哀、すべてが解けるように僕には感じられました。そういうことだったのか・・・と。
 同時に野崎訳とのズレもあります。それは致し方ないことです。英語で書かれた文章を完璧に移し変えることなんて不可能なんです。しかも、時代も違う。それに耐えうる作品が名作として残るんですよ。
 「グレート・ギャツビー」は劇的な感想は抱けないものだと思います。しかし、じわじわとくる印象があります。読者が経験することによって、「こういうことだったのか」という不思議なシンパシーめいたものを感じることの出来る作品だと思います。想像以上に深い作品だなと改めて思い知りました。
 でも、この作品の本質というか、全体的な「これはこういうことだ!」という感想が抱けないんですよね。これは決して悪いことではありません。逆に可能性を感じるくらいです。それは作者、訳者の責任ではなく、読者の責任でしょう。
 この作品をちゃんと理解できるようになりたいです。



5.  とても良い ib_pataさん 書き込み日: 2007年03月05日

フィッツジェラルドの世界を破たんなく日本語で再構築してくれました、という印象

デイジーの従兄弟でありギャツビーとの仲を取り持つことになるニックというのは、村上春樹さんの小説の主人公のようでしたね。というか、もちろんニックのような男性を日本にもってきて書いたのが村上作品なのかもしれませんが。こんなところに、その感じが出ていると思います。

《人は誰しも自分のことを何かひとつくらいは美徳を備えた存在であると考えるものだ。そして僕の場合はこうだー世間には正直な人間はほとんど見当たらないが、僕はその数少ないうちの一人だ》(p.113)。《人間の同情心には限界がある。都市の明かりが背後に遠ざかるにつれ、彼らのあいだで交わされた壮絶なやりとりもだだん遠いものになっていったし、そのことで僕らは正直なところほっとしていた。三十歳ーそれが約束するのはこれからの孤独な十年間だ。交際する独身の友人のリストは短いものになっていくだろう。情熱を詰めた書類鞄は次第に薄くなり、髪だって乏しくなっていくだろう》(p.247)。

 ぼくの読み方が悪いのかもしれませんが、ほのめかしに終わっているウルフシャイムとギャツビーが手がけるううさんくさい仕事について、もう少し、ハッキリとわかるようだったらいいな、と思ったのが多少、不満に残りました。



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