とても良い / 口コミ件数 : 20件
価格 : 1,500 円
興味深い一冊だった。類書が少ないだけに、関心のある方には一読を勧める。ただ、そう難解な本ではないものの、理解のためには本書で述べられている戦いに関する基礎的な知識は多少は必要だ。 特に印象的だったのは、ナチスドイツの東部戦線での補給に関する分析と、砂漠の狐と呼ばれたロンメルの戦術に関する補給面からの考察である。一般的に、これらの戦いはヒトラーの介入が作戦遂行を困難にした大きな要因と指摘されていて私もそう信じていたのだけれど、著者の分析データからは少し異なる見解が浮かび上がってくるのがちょっと驚きだった。 我々はどうしても派手で独創的な戦略や作戦や戦いそのものに目が行きやすい。しかし、結局、優れた戦略を成功させるには、それを支えるための地道な調査や兵站や補給物資や補給線の確保維持という、一見面白くもなく基本的だが実は非常な困難さを伴う作業とそれを担う部隊抜きでは難しいというのが実感としてわかってくる。その一方で、完璧な準備をもって実施される作戦というのは実は少なく、そのような準備が可能で物量にも恵まれたノルマンディー上陸作戦ですら結局は予定通りには進まなかったと示してくれる。そして、だからこそ、それを乗り越えて作戦を成功に導くには卓越した能力と臨機応変さと決断力を持ったリーダシップの存在が必要であることも同時に明らかにされてゆく。このような点はビジネスの世界にも通じるものがある。 一方、本書はアフリカ戦線に関する部分を除くと、平坦地が中心のヨーロッパにおける陸軍の大軍同士の戦いだけを対象としている。最新のものでさえ気がつけば既に60年以上昔のものだ。同じようなことが同じ形で今後ヨーロッパで再度起きるとは考えにくい。ジャングル、山間部、諸島、ゲリラ戦、ハイテク兵器でカバーした機動戦、といった戦いでも結局全て補給の問題はつきまとうので、それらに関しても同様の視点から分析したものがあるのなら読んでみたいと思った。
古典的名著の復活もさることながら、この本が中央公論新社から発売された最大のポイントは巻末に付されている石津朋之氏の解説論文である。翻訳の内容そのものは原書房から出版されていたものとまったく変わっておらず、おそらく誤訳であろう文章も散見される。だが石津氏の解説論文はその誤訳を訂正したうえクレフェルトの主張を簡潔に整理、それに加えてクレフェルトのその他の著作を総合して「マーチン・ファン・クレフェルトとその戦争観」という非常に読み応えのある解説を行っている。新書にこの値段は少々高いと思うが、石津氏のこの解説論文だけでもこの値段を払う価値がある。絶対おすすめ、一押しの軍事関連本である。
兵站を本格的に考察した書籍で日本語で読めるものはほとんどありません。 防衛研究所の平間さんは本著のあとがきで、そういう本はこれとあと1冊くらいしかないとおっしゃっています。 そんな数少ない1冊であるこの著が、このたび復刻されました。 大変価値あることと言えます。 著者はイスラエルの大学教授で、兵站の専門家です。 プロは戦争を兵站から考えます。
30年近く前の名著がようやく、しかも文庫として刊行されてことを素直 に喜ぶべき。原書房版と内容に違いはなく(改訳されたわけでもないの で)、著者名がクレヴェルト→クレフェルトに変わったことと、最後に クレフェルトについての解説が付加されたことぐらいか。2004年に第二 版が出ているようなので、できればこちらのほうで翻訳出版してほしか ったというのは欲張りすぎだろうか。 この本についての価値は言うまでもない。通常の戦史からでは知りえな いことを知り、また見ることができる。とりわけ第一次・第二次世界大 戦について、アーヴィングやタックマンの本と併せて読んでみてほし い。
本書は、欧米の戦争・戦略関係の大学、陸軍士官学校などでは必ず文献リストのトップに挙げられる名著です。補給・兵站の観点から戦争の本質を鮮やかに描き出した本書ですが、出版から20年ほど経過した今でも、質の上で本書を超える研究書が現れていないのが現状です。 このような名著の翻訳がコンパクトな文庫として復刊になったのですが、今回、大きなボーナスとして専門家による有益な解説文が掲載されていることが何よりも喜ばしいと思います。 「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」という名言から始まる解説文では、本書の内容、特徴、研究の意義などがコンパクトにまとめられており、読者は解説文を読んでから、本書を読み進めることによって理解がより深まるでしょう。 いずれにせよ、「名著の復刊の文庫化+有益な解説文=お買い得」だと思います。他の名著もこのような形でどんどん出版されることを期待します。