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美しい国日本(ドナルドキーン)、国家の品格(藤原正彦)、日本はなぜここまで壊れたのか(マークス寿子)、等々、日本の問題点をついた本がようやく書店の目立つところに置かれるようになってきた。高坂先生は、こうした問題を、1981年に既に指摘されている。すなわち、美徳の喪失、政治の質の低下、文化的退廃、官僚制の肥大化と財政破綻、勤倹から消費偏重へ、想像力と競争力の低下、などのキーワードが、ローマ帝国、ベネチア、オランダ、アメリカという文明の衰亡に範をとって論ぜられており、一読することを薦める。20年以上前に記された著作は、冒頭に掲げた本よりも、より長期の視点を提供していると思う。またこうした本とあわせて読むと、より整理ができる。
文明衰退論の感傷に浸っているのではまるでない。むしろ、文明が或いは日本が世界の中で生き残るためにどうすればいいのかという積極論である。日本人にはアイデンティーがないと言われて久しいが、その根源は日本の通商国家たる国体に依存すると見事までに言い切っている。
アメリカ追従の対イラク政策を見るまでもなく、通商国家の生きる道はこれしかないのであろうか?
本書の刊行は昭和56年(日本の高度成長期)だが、冒頭でいきなり、「欧米文明は衰退期に入った」と断言し、その確かな観察眼・予見性で読む者を驚かせる。本書の構成は、まずローマ帝国、都市国家ヴェネツィアの盛衰記を検証し、その衰亡の原因を探求し、次いでアメリカの苦悩を浮き彫りにし、最後にそれを現在の日本に当て嵌める、と言うもの。 ローマ帝国の盛衰記の章で私が印象に残ったのは以下の言葉。「民主主義の下で政治権力が大きくなっている」状態では、「拡大する事と豊かになる事は望ましくない」。「専制下では大衆は愚民化」せざるを得ず、この「大衆社会化」が衰亡を招いた。まるで現代の、覇権主義・過度な消費社会・衆愚政治を論じているようである。そして、衰退の究極の原因は「経済」にあるとの論は、昨今の金融危機と合わせ、背筋がゾッとする。だが著者は本章を次の言葉で締め括る。「教訓を学んで、常に最善を尽す態度が大切」。 次いで、海洋通商都市国家と言う特殊な性格を持つヴェネツィアの盛衰記が紹介される。「富めるが故に賃金が高くなる(競争力低下)」と言うジレンマを解消できなかった事が衰亡の主因と言うから切実。「繁栄が衰亡を内包する」と言うテーゼである。 次いでアメリカだが、この頃から「住宅バブル」は始まっていたらしい。これに関連し、都市化とスラム化、経済・軍事力の相対的低下、ベトナム戦争の敗北(普辺主義の挫折)、「成長の限界」説、実践主義の衰退等が論じられる。精緻な論考である。 そして最後に、通商国家としての日本の「変化への対応力」が論じられる。 歴史に対する確かな考察力と現状に対する高度な分析力で、これからの日本のあり方を提言した秀逸な啓蒙書。