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ローマ人の物語 (12) -迷走する帝国

ローマ人の物語 (12) -迷走する帝国

とても良い / 口コミ件数 : 17


価格 : 2,940 円





クチコミReview一覧
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口コミ件数:17 1 2 3 4 次ページ
1.  とても良い てすとてすとさん 書き込み日: 2006年01月08日

カラカラ帝

今回はカラカラ帝が一番印象的でした。
カラカラ帝によるアントニヌス勅令。
これによるローマ市民権の取得権から既得権への方向転換。
どうやら、著者はこの権がローマが衰退に向かった最大の
原因であると考えている様子が伺えます。

一見、問題がないように見える権利の平等、既得権化が
ローマを弱くして行く。

ローマを支えていたのは富裕層による道路などのインフラの提供、
一般市民による軍団への参加、血の税金による公共心ということを
えてみればこれ以降はローマ市民権は名誉の印とはなりませんから、
公共心を喚起する力はなくなります。
人間は自分自身は公共体にとって相対的に特別な存在であるという
認識が公共心をもつことになるのは当然ですから、
人間の心理からみても納得できる論です。
そのことは逆に公共体から別に特別な扱いをされていないことを
考えてみればわかります。そのような人たちがその共同体を
強く大切にしたいとは考えないでしょう。

現代では民主主義というものは私は疑いなく良いものだ
という認識がありましたが、ニートとかフリータとか、
どうみても公共心が薄い人たちが現在に発生していることを考えると、
この本は平等な既得権というものは本当に無邪気に良いものだと考えて
いいものか?という疑問を私の心に浮かばせたとても印象的な
一冊となりました.



2.  とても良い yuishiさん 書き込み日: 2005年11月22日

皇帝もツライよ・・・

3世紀70数年間のローマ帝国を描く。この間に擁立された皇帝は22人(!)。その大部分が謀殺という形で任期を終わった、という。残りも戦死、疫病死、虜囚の末の獄死と、一人を除いてまともな死に方をした皇帝がいない(“まともな死にかたをした”という一人は75歳という超高齢で就任し、遠征途中に老衰で死んでいる)。皇帝が終身制であったため皇帝に対する不信任は謀殺という形をとって行われたというのだ。中国の皇帝たちや後代の欧州の王政と比較した場合のローマ帝国の特異な点といえよう。しかもこの皇帝たち、就任したからといって首都ローマで贅沢におぼれる余裕もなく、各地の蛮族の侵入や、隣国との争いに明け暮れ、まさに東西奔走している。その挙句に失敗は死をもって購われたというのだ。皇帝もツライよ・・・。また必ずしも世襲でなかった点も特徴としてあげられるだろう。
著者はこの皇帝が次々と代わることによる政策の非継続性が、その後の国力減退の要因のひとつだと、論じる。またローマがローマであった特色を失わせるような施策、たとえばローマ市民と非市民の区別をなくす(カラカラ帝)、元老院と軍事の分離もあげている。
いよいよ帝国が変容・斜陽化していく姿(とはいえこの後、帝国は百年超保っているが)を読み取っていきたい。



3.  とても良い ともぱぱさん 書き込み日: 2006年05月19日

実力主義について

既に多くのレビュアーの方が本書について論評されているので、私がさらに付け加えることはもうほとんどないのだが、あえて書かせてもらうと、本書においても優れたリーダー論が展開されていることに注目してほしい。リーダーに求められる資質とは何ぞや、が本シリーズを通してのテーマの一つと考えるのであるが、本書で最も私の注目を引いたのは「実力主義とは、昨日まで自分と同格であった者が、今日からは自分に命令する立場に立つ、ということでもある。」の一文である。実力主義の定義としてこれほど私に納得のゆくものはない。実力主義を標榜するわが社・部門で起こっていることはまさにその通りです。そうはわかっていても、現実を理性だけで受けとめるのは難しいもの。作者は皇帝アウレリアヌス、プロブスの悲劇の原因を部下との距離が近づきすぎたからだと喝破します。かといって、距離をとりすぎると、親近感を欠きすぎることになり、本書からは離れますが、皇帝ティベリウスのような不人気を招く。とかく、組織・リーダーの健全なあり方は難しいものです。組織のあり方としては、カラカラ帝のアントニヌス勅令が、悪平等を生み出し、それまでの階層はあるけれども実力で上昇可能なピラミッド型の組織から、階層が固定された社会に変貌し、ひいてはローマ人らしさをなくす原因になったとする指摘は、私がこれまで考えもしなかったものだけに、その指摘の鋭さに感服します。

本書は軍人皇帝の時代を中心に、混乱に満ちた、古代ローマ史ファンにとっては苦痛の時代、おそらく誰にとっても登場人物が多すぎて読むのが大変な時代を扱っていますが、作者は上記のように、リーダー・組織のあり方についての意識をベースにこの時代を簡潔にまとめており(簡潔すぎる感じもちょっとしますが)、その努力に対して星5つを献呈したいと思います。



4.  とても良い j-boy_fbeatさん 書き込み日: 2004年06月20日

本当に調査不足かな…?

あいかわらずの塩野節に感心しながら一気に読んでしまいました。五賢帝の絶頂期から100年でここまで落ちてしまうのを早いと見るか、遅いと見るか。翻って現在のPax Americanaが何年続いているのか。いろいろ考えさせられます。

 また、最後のキリスト教考察は、僕には合点の行く点が多々あって刺激的でした。調査不足ではないかという指摘が別のレビュアーの方からありましたが、必ずしもそうともいえないのではないでしょうか。たとえば聖パウロと『使徒行伝』に関する指摘について、問題の個所は326ページだと思うのですが、文章は「聖パウロが『使徒行伝』中で説いたように」です。確かに聖パウロが書いたといっているようにも読めますが、塩野さんの意図は「『使徒行伝』の中に登場した聖パウロが述べたように」かと思います。



5.  とても良い giraffe11さん 書き込み日: 2003年12月16日

何を読み取るかは…あなた次第

毎年、一冊づつ刊行される塩野さんのローマ人の物語もいよいよ12冊目、次第に(著者は15冊で終わりとおっしゃっています)終わりに近付いてきました。
ローマ帝国の衰退していく様子を、現在までのさまざまな研究成果をもとに、著者独自の視点からメスを入れていく筆の冴えは変わらず、考えさせられることの多い本です。

今回の12巻では俗に云う「軍人皇帝時代」が取り上げられています。これまでこの時代のことを知ろうと思うとギボンの「ローマ帝国衰亡史」か、あとはいきなりモンタネッリの「ローマの歴史」くらいしかなかったから、この本はありがたいですね。何より、現在の日本の読者向けに書かれていますから。第一、モンタネッリの「ローマの歴史」だと、「迷走する帝国」で取り上げられている箇所って、9ページ分しかないし(笑)

今回の12巻では、紀元3世紀のほぼ100年間が取り上げられていますが、その間に即位した皇帝の多いこと、多いこと(爆笑)読み通すときに、人名が頭の中を出たり入ったりする感じです。それだけ、この時代のローマ帝国が危機に直面していたことがわかりますが…。これまでの巻に比べて、この人名の把握だけでも大変でした(笑)

でも、読み通してみて、(いつもながら)このローマの歴史から自分達日本人と、現在に生きている全ての人たちが学ぶことが多いことも実感できます。

政治とは?国際関係におけるバランスの取り方とは?人間社会における多様性の重要性とは?人間の本質とは?…等々、読む人の関心の持ち方次第で、さまざまなことが読み取れるでしょう。そして、今現在、指針を失ってしまって右往左往しているこの日本という国が、学び取れることも多いのでは??とも思いました。

ギボンの「ローマ帝国衰亡史」との併読は絶対におすすめ。また初期キリスト教についての各種の本と併せ読んでも面白いでしょう。



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